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とむなおさん

とむなお――です。 ちょっと奇妙な小説を書きます。どうぞ宜しく!

性別 男性
将来の夢 作家
座右の銘 ふしぎ大好き

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過去を見た少年

17/01/30 コンテスト(テーマ):第128回 時空モノガタリ文学賞 【 自転車 】 コメント:1件 とむなお 閲覧数:525

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 その日、田舎の高校生の僕は、いつものように放課後、野球の部活が終わると自転車で帰路についた。
 これまた、いつものように練習が長引いて、陽は完全に隠れていた。
 僕が通っている学校は、大きな森の向こうに在り、その間の道には街灯は皆無だった。
 僕は校門を後にすると、森に添って続くガタガタ道を、ひたすら自宅に向ってペダルをこぎつづけた。
 ライトは壊れているが、通い慣れた道なので暗くても大丈夫だった。

 やがて、あまり感じたことのない風が吹き、森からザー! という音がした直後、前方の倉庫小屋の前にジーパン姿の男性が立っていて、
「あの、ちょっと」
 僕は条件反射のようにブレーキを利かせて止まった。
「その自転車、君のですか?」
「もちろん僕のですよ」
「そうですか……」
「急いでるんで――」
 僕は行きかけたが、ふと気になって振り返った。が、誰もいなかった。ブルッと身震いを覚えながら、僕は先を急いだ。

 森の中程にある橋に近付いた時、今度は割烹着かっぽうぎ姿の女性が立っていて、
「あの、すいませんが……」
 僕は仕方なく、また止まった。
「その自転車、あなたの?」
「もちろん僕の自転車ですよ」
「そうですか……」
「急いでるんで――」
 今度は振り返らずに自転車を走らせた。

 森を離れた頃、今度は高校生ぽい少年が立っていて、
「あの、ちょっと……」
 仕方なく、また僕は止まった。
「その自転車、君の?」
「もちろん、そうだよ」
「そう……」
「急いでるから――」
 そう言うと、彼は悲しそうな表情を見せた。
「君も早く帰った方がいいよ。じゃ」
 と言いながら僕は字電車を進めた。が、進めながら、あることを思い出していた。
 実は、この自転車は去年、近くの空き地に捨ててあったこと。真っ黒でボロボロだったので親父に修理してもらって乗っていることを。

 周りが更に暗くなる中、ようやく自宅に到着した僕は、自転車を押しながら玄関に近付いていった。暗くてよく分からなかったが、なぜか妙に小さく感じた。すでに窓には明かりがついていて、家族が食卓を囲んでいる。僕は「えっ?」と立ち止まった。その中に僕に似た男の子の姿もあったのだ。僕が呆然としていると、やがて明かりが消えて真っ暗になった。
「あれ? もう寝たのかな……?」
 さらに玄関に近付こうとした。すると突然キッチンのあたりが赤くなり、炎が噴出したのだ。
僕はあわてて自転車に乗ろうとしたが、いつの間にか無くなっていた。ふと見ると、玄関の横に自転車があったので急いで乗りながら、炎の明かりで見えた表札を見た。そこには――
『村田』
「あれ? 僕は川口なんだ。じゃ、人の家か……。とにかく急いで消防に知らせないと――」
 行こうとした時、急に周りが暗くなった。見ると燃える家など全くない空き地だった。僕は訳が分からないまま、仕方なくその自転車で通りに出た。そして気がついた。
 去年の今頃、このあたりで火事があった。消防が出動したが手遅れで全焼した。数人の焼死体が発見されたが、何という人家だったか、不明のままになっている事を。
 そして僕が入る道は、さっき少年がいたところだったのだ。

 翌朝、僕は通学の前に警察に寄って、去年全焼した家の名字を伝えた。
 そして通学途中の例の空き地の前で合掌がっしょうしながら、心で……
……この自転車、大事に乗ってるから、許してね……
 それ以来、あの時の3人に会うことはなかった。


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このストーリーに関するコメント

17/02/21 とむなお

どなたか分かりませんが、“初pt”――ありがとう御座います! 良かったら感想をお書きください。

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