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むねすけさん

ブログで創作をやっていましたが、誰にも相手にしてもらえないため、こちらに辿り着きました。 面白い物語、少しほっとしてもらえるようなお話を書きたいと思っています。

性別 男性
将来の夢 作家になりたいですが、 それが無理でも、何かの原案家とか、 自分の考えた物語が世に出ること。
座右の銘 我思う、故に我在り。

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局所フリーマンション304号室に夢はあるか

17/01/30 コンテスト(テーマ):第126回 時空モノガタリ文学賞 【 304号室 】 コメント:0件 むねすけ 閲覧数:1091

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 時代を残した薄暗いアパートは、埋められていく青すぎる空を、整列するマンションにのさばられて日照権の主張も倦怠な日常に呑まれていく。こんな時代に残った粘り腰のアパートメント、世情の寒風にもうっちゃりの一手で居残り。
 そんなアパートには少々奇妙な人間が流されて来るようで、一室に三人の男が望まない同棲生活を送っている。「階段上るの面倒だろ」の言葉と、「いや不用心だろそれは、二階があるならそっちの方が」、の言葉で数分時間間延びの怠い会議が行われたものの、一階の方が二千円安かったのを理由に一階に決まってしまった。体裁上代表者が単身で借りている部屋だが、そもそも三人で年がら雑魚寝するのは計画の上。部屋番号は104。当然そこは中の一人が番号案内のお姉さんを口説こうとした夏の日のエピソードを披露したりしたのだが、そんなことはどうでもいい。

 社会や時代の流れに付き合うことをしない人とアパートは都会の中の脱臭キムコのようで、他所のかぐわしいは身をていして脱臭するが、自浄の作用は薄くのんびりしたもの。平日の夕方、廊下で小学生がビー玉で遊ぶ。夏なら勿論水風船で物干しは重たさに負けて落下するし、夕焼けはカラスの黒点をソバカスにして背景にいるし、年に一回夫婦喧嘩でパトカーは来るし、国営放送の集金人は苦笑いと愛想笑いをフル活用で結果、お金では無くみかんをもらって帰ったりする。
 そんなアパートの104号室で、汗とほこりの匂いにクラクラすることもできない三人のむくつけき爽やかな男たち。一人は太宰治のろまん灯篭を下敷きにして賞も獲れない小説を書きまくり、一人はバイト先できっと正社員になれるはずと五年言い続けている。三人目は何をしているのか、他の二人にもよくわからないがなにせ、光熱費も部屋代もそいつが出し続けるので二人は何も言えない。
 ベランダの底が抜けるとホームセンターに駆け込み友情タッグの日曜大工が、ディーアイワイのカタカナを袈裟斬りにし。
 嵐の日に迷い込んだ鳩をかくまえば、ありがとう、に、五個の卵を残して去っていく。名前も告げずに。
「茹でてくおーぜ」「お前食中毒の怖さ知らないだろ」「でも恩は汲んでやらないと、冥利に悪い」「わかんねぇよ根暗純文学かぶれが」「違うよ、沸かしてからジャスト九分がベスト」「それは、大丈夫なニワトリの卵の場合だろ」「ここを固茹でに逃げたらハードボイルドじゃねーだろ、大沢在昌が泣いて、北方健三にしばかれるぞ」「大衆文学も読んでるアピールはわかったけど、食中毒はマジで怖いんだって」
 光熱費、部屋代だけは一人の男が黙って払い続けるが、日常の貧窮は青春だからと、食費の欠乏までは補ってくれなかったので、アルバイトの男が必殺技を生み出す。その名も古新聞泥棒。ゆるゆる住宅街をのたくる、古紙回収のトラックの荷台からひっつかんで、盗んだ車の運転手に渡して二百円得るというもの。二百円で食うのはいつも鍋の中のチキンラーメン。そうだ、チキンラーメンはこの世で一番美味い。

 さて、アパートの104号室に一枚のチラシが舞い込んだ。
「局所フリーマンション?」「また大卒が頭で稼いでんだろ?」「馬鹿が喰われて数千円の人生修行か」「まぁまぁ読もうぜ」
 局所フリーマンションでは、一室ずつ一個のフリーがルールです。
 101号室ではフリー暴力、102号室ではフリー変態性
「あ、風俗のチラシ?」「風営法にひっかかるべ?」「フリー暴力ってなんだよ」
 103号室ではフリーハグ、104号室ではフリーキス
「突然普通なの来たな」「フリーキスは普通か?」「行きたい」「知らねーよ」
 201号室では・・・202号室では・・・203号室では・・・204号室では・・・
 301号室では・・・303号室では・・・304号室では・・・
 「なんでとんでんだ?302ってなんか縁起悪い?」「いやそれより」「あぁ」
 304号室はフリー視力。
「視力からフリーになれるってことかな、逆に」「スモークフリー的なやつ?」「はい?」
 三人は顔を見合わせた。暗闇のコンパってねーかなーがいつもの就寝前ごたく眠気薬として定番だったから。SNSならみんな仲良くやれるんだからさ、恋愛にもぼちぼち顔とか肩書とか無用でいい時代じゃねぇか?
 三人は304号室に夢を見始める。
 いつまでも会話が止まらない。
「あぁ、ダメだ」
 ようやく止まる。
「なに?」「304号室に限り、男五千円、女無料」「あぁ、こりゃダメだ」「夢はそんな安くないね」「うん、おとなしく小説書くわ」「俺もおとなしく正社員目指してバイトするわ」「俺も」「俺もなんだよ?」

 
 
 


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