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トムさん

性別 男性
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304号室の成長

17/01/28 コンテスト(テーマ):第126回 時空モノガタリ文学賞 【 304号室 】 コメント:1件 トム 閲覧数:705

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 いつものようにエレベーターに乗り込み、4階のボタンを押した。
その時、リュックを背負った小さな男の子が小走りで乗り込んできた。タイミングはギリギリだったが、何事もなかったかのように扉は静かに閉まった。男の子は2階のボタンを押していた。
 2階に到着し扉が開くと、男の子は右側の通路に消えていった。それを見届けると扉が閉まり、4階へと上昇していった。
そこで何かおかしいことに気が付いた。このマンションはエレベーターを降りると、全て左側の通路に各部屋があるはずで、右側の通路は非常階段へと続いているではないか。

 4階で扉が開き、左側の通路を歩いて404号室の自分の部屋へと向かった。扉の前に立ち、鞄の中から鍵を探していると、下の階から足音が聞こえた。その後、扉の閉まる音も聞こえた。
 そういえばさっきの男の子は、最近越してきたばかりの真下の304号室の部屋の息子さんではないかと思い出した。
しかしなぜ2階で降りて、わざわざ3階までは階段を使ったのだろうか。

 それからというもの、1週間に1回は男の子とエレベーターで出会い、2階で降りては、階段で3階まで行くという不思議な行動を目撃していた。
 そんなある日、再びエレベーターで乗り合わせた男の子の足元に目線がいった。
そこで私は、不思議な行動の意味がようやく分かった。それと同時に、無意識に男の子に話しかけていた。
「3階のボタン押してあげようか」
男の子は急に話しかけられたことにも臆することなく、元気な声でこう答えた。
「もう少ししたら、3階のボタン押せるまで大きくなるよってお母さんが言ってたんだ。だから自分で押せるようになるまでは階段を使うんだ」
 その言葉を聞いて余計なことを言ってしまったなと、自分の優しさを後悔した。
 男の子が2階で降りる際、バイバイと手を振ってくれた。私は笑顔で「バイバイ」と返事をした。
 
 やがて背が伸び、3階のボタンまで手が届く男の子の姿を思い描いた。私はこれから、304号室の男の子の成長を見届けることが出来るんだと思うと、温かい気持ちになった。


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このストーリーに関するコメント

17/01/28 霜月秋旻

トムさま、拝読しました。

成長?部屋が?どういうことだ?と思い、読み進めてました。エレベーターのボタンと少年の背という発想に感服いたしました。
いつか自分の力でボタンを押してやるという少年のこだわりに強さを感じました。

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