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海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

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新宿迷子

17/01/21 コンテスト(テーマ):第127回 時空モノガタリ文学賞 【 新宿 】 コメント:2件 海見みみみ 閲覧数:813

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「新宿はこわい街だからね。手をはなしちゃだめよ」
 そうお母さんは確かに言いました。しかしそれを知っていながら、ジュンはスキを見てわざとお母さんから手をはなします。
「お母さんなんて、大きらいだ」
 聞こえないようにつぶやくと、ジュンは新宿の街中に消えていきました。

 ジュンは一人新宿の街を歩きます。
 自分の暮らす街とは比べ物にならないくらい、たくさんの大人が街中を歩いている。小学生であるジュンにとって、人混みの中歩くのはまるでゲームの世界を旅しているかのようでした。
 しかしよそ見はいけません。
「痛っ」
「わっ!」
 ジュンは前から歩いてきた人とぶつかってしまいました。とっさに謝ろうと立ち上がります。
 ところがぶつかってしまった相手の姿を見た時、ジュンの中で時が止まりました。
 派手な金髪(きんぱつ)に白いスーツ。色黒のその男性は、とてもこわそうな顔をしています。
『新宿はこわい街だからね。手をはなしちゃだめよ』
 いまさらお母さんの言っていた言葉が頭にうかびます。しかしもう手おくれでした。
「なんだこいつ。ぶつかっておいて、謝罪もなしか」
 金髪の男が座りこみ、ジュンをにらむように視線を合わせます。
「親はどうした? お前まさか一人か」
 金髪の男は次々と質問してきます。しかしあまりにこわくて、ジュンは質問に答えることすらできませんでした。
 そんな時です。

 ぐぅ〜。

 ジュンのお腹の虫がこんな時に限って鳴き出しました。そういえばお母さんと新宿でランチを食べる予定だったので、ジュンは朝ごはんを少ししか食べてなかったのです。
「なんだ、お前腹減ってるのか?」
 金髪の男の質問に、ようやくうなずいて答えます。すると金髪の男はいきなり笑い始めました。
「仕方ない。飯を食わせてやるからついてこい」
 そう言って金髪の男は歩き始めます。ジュンはそのまま流れで金髪の男のあとをついていきました。

 金髪の男が連れてきてくれたお店、それはいかにも高級そうな鉄板焼きのお店でした。
「ここって、もしかして相当高いんじゃ……」
「夜はな。でも昼ならハンバーグランチ一人千円だ」
 その言葉を聞き、ジュンは少しだけ安心します。
 それからカウンターの向こうにいる料理人さんが、目の前の鉄板でハンバーグを焼いてくれました。目の前でハンバーグが調理されていく光景は、まるでなにかのショーを観ているようです。
「お前、なんで一人っきりだったの?」
 そこに金髪の男が声をかけてきます。すっかり安心したジュンは、いつも通りの口調で話し始めました。
「……お母さんを困らせるため」
「なんだ。なにかおこられたのか?」
「お母さんはいつも弟たちにはあまいくせに、ボクにだけ厳しいんだ。『お兄ちゃんだからがまんしなさい』って」
「そいつはくだらない理由だな」
「くだらなくない!」
「いや、くだらないよ。オレも同じ理由で田舎を飛び出したからな」
 目の前の料理人さんがハンバーグを盛り付け、ジュンたちの前にお皿を並べてくれました。
 ハンバーグを食べながら、金髪の男は話し始めます。
「長男だからしっかりしろ。そう言われるのがイヤになって、十八で田舎を飛び出した。それから新宿で働くようになったけど、一人になるとすごい後悔(こうかい)する。おふくろたち元気かなって考えると、なみだが止まらなくなるんだ」
「それは、今も?」
「もちろんさ。お前のおふくろさんも、今ごろあわててるだろうよ。その姿を想像してみろ」
 言われた通り、ジュンはお母さんのことを思いうかべました。今ごろお母さんはあの人混みの中、必死にジュンを探しているのでしょうか。
 そう考えるとどうでしょう。あんなにニクく思っていたお母さんに、今すぐ会いたくなりました。気づくとジュンの目からはなみだがポロポロこぼれてきます。
「よしよし。とりあえず今は泣いて、それから食え」
 金髪の男がジュンの頭をなでてくれます。
 ジュンが泣きながら食べたハンバーグは、いつもとちがう大人の味がしました。

 ハンバーグを食べ終え、ジュンは金髪の男に連れられ交番に向かいました。交番で待つこと十分。そこに別の交番からジュンのお母さんがかけつけました。
 ジュンは最初、お母さんにおこられるかもしれないと思いました。しかし、現実はちがいます。お母さんは何度も謝りながら、ジュンのことをだきしめました。それにジュンは心をゆさぶられ、再び泣き出します。
 それから少しして、お母さんはだれがジュンを交番に届けてくれたのかたずねました。しかしそこには、もうあの金髪の男はいませんでした。

 新宿は確かにこわい街なのかもしれません。しかしそれ以上に、優しい街なのだと思いながら、ジュンはお母さんと手をつないで帰り道を歩きました。

おわり


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このストーリーに関するコメント

17/01/24 文月めぐ

初めまして。文月めぐと申します。小説、読ませてもらいました。
田舎者の私も「新宿はこわい街」という認識があります。しかし、どの街にも心の優しい人はいるんですね。「新宿」の違った顔が見られる心温まる小説だと思いました。

17/01/24 海見みみみ

文月めぐさま

はじめまして!
海見みみみです(´∀`)
この度は当作品をご覧いただき誠にありがとうございます♪

新宿って怖い街のイメージがありますよね。
でもそのイメージが必ず正しいとは限らないわけです。
こういう街だからこそ、優しい人の存在が嬉しいですよね♪

それではコメントありがとうございました!

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