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W・アーム・スープレックスさん

性別 男性
将来の夢
座右の銘 作者はつねにぶっきらぼう

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弱虫兄妹

12/11/05 コンテスト(テーマ):【 兄弟姉妹 】 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:1767

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 忠太はいつも、自分の名前を恨んだ。村の子供たちがこぞって、チュー、チューと、はやしたててからかうのだ。それはネズミの鳴き声をまねているのだが、米をくうネズミはだれからも嫌われもので、みなは忠太をネズミにみたてて蔑んだあげく、よってたかっていじめるのだった。
 臆病者の忠太は、なにをされてもされるがままで、みんなはいい気になって、頭をこづいたり、足払いをかけて倒したりして歓声をあげた。
 彼の家には、やっぱり臆病で小心な両親と、ミトという一人の妹がいた。兄が弱虫のぶん、気が強いかというと、じつはそうではなかった。内気で、引っ込み思案で、兄が泣かされて家にかえってくると、いっしょになって泣きべそをかくような女の子だった。
 その朝忠太は、着物の裾を端折り、甕をつるした天秤棒を担いでちかくの小川に水をくみにでかけた。畑にでかける母親のいいつけだった。体も小さく、力も弱い忠太だったが、だからといって家の仕事をしなくていいということにはならない。空の甕でさえ、ふらふらと、足取りもおぼつかない兄のことが心配で、ミトはじっとしていられなくなって、こちらも親からいいつけられた縄をなう仕事をほっぽりだすなり、あとをおいかけはじめた。
 小川に行くにはいやでもごつごつした岩場をこえなければならず、うっかりあてて甕が割れたら大変で、忠太にとっては、こんな仕事をいいつけた親もまた自分にいじわるしているように思えてならなかった。
 そんな兄の後ろからミトは、はらはらしながらついてきた。手伝えばいいとおもうが、年端もいかない彼女ではかえって兄の足をひっぱるのは目にみえていた。このままなにもおこらずに兄がぶじ、水をくめますようにと、ひたすら祈ること以外、なにもできなかった。
「おい、ねずみ」
 まわりの岩の影から、いくつもの頭がつきだした。それがいつもの悪ガキどもだということは、忠太がいちばん知っていた。
「あんちゃん」
 泣きだしそうな声でミトがいったときには、天秤棒のまんなかで忠太は、はやくも大声を上げて泣き出していた。

 ザイドは、顔のまわりの鰭をぴんと張りひろげた。
「対象物は、これに決めよう」
 まわりにいた侵略作戦実行隊員たちの視線はいっせいに、惑星上をとらえたモニター画面にそそがれた。画面には、なにやら棒状のものを担ぎ、顔面をくしゃくしゃにしている対象物がうつっていた。
 ドカトもまた興奮に鰭を硬直させた。
「さっそく対象物に、バヤンエナジーを照射しましょう」
 対象物はなんでもよかった。宇宙船から地上の生物にバヤンエナジーをあたえて、その生物を現状の数百万倍の力量に増大する。それによって対象物は地上最強の兵器と変わり、そうとはしらずに自分の周囲のものを殺戮しはじめる。こちらの手をいっさい汚すことなく、侵略は成功するというわけだ。ザイドが最初にこの地を選んだのはここが、せまい島国だからで、海をへだてた大陸は、ここでの成果をたしかめてからでもおそくはない。
 シリガがふと、画面上に目をとめて、
「対象物に、さらに小柄な人物がすがりついています。あれにもエナジーをあたえますか?」
 ザイドは即座に鰭をふって否定した。
「バヤンエナジーの底知れない威力を二人にあたえたりして、惑星そのものが滅びてしまってはなんにもならない」
「おっしゃるとおり」
 みんなは、隊長の言葉に、深々とうなずいていた。
「一分後に、照射します」
 ドカトが、エナジー発射ボタンのキャップをあけて、待機した。

 悪ガキたちの投げつけた石で、体勢をくずした忠太は、おもわず地面に手をついた。悪ガキたちはそれぞれ手に、大きな石を握りしめて、忠太に迫ってきた。熊次郎というガキ大将が、忠太の横にころがっている甕に石をぶつけた。甕はボカンとはじけてくだけとんだ。
「こんどはおまえの頭のばんだ」
 冗談とも本気ともとれる調子で熊次郎はすごんだ。
 それをきいた忠太は、バッタのように青ざめた。なにかをいおうとしても、声はあわれなまでにブルブルふるえた。
 すぐそばでは、ミトが、空をあおいで、一心に両手をすりあわせている。
「鎮守の森の神さま、どうか、あんちゃんを、おたすけください」
 そんな彼女のひたむきなふるまいもかえって、熊次郎の忠太をいたぶる気持ちをあおるばかりで、じつはためらっていた石の的も、いまはっきり忠太の頭に絞れたという次第だった。
「これでもくらえだ、ねずみ!」
 石は、おおきく腕をふりあげた熊次郎の手から、まっすぐ忠太の頭にむかって飛んで行った。
 石は忠太に当たったかとみると、ぼっと燃え上がって、地面に落ちたときには、どろどろに溶けていた。忠太がまたいっそう激しく泣きだした。それはまるで地軸が折れたかとおもえるまでに、大きな轟きとなってあたりに響きわたった。
 
 


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