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華満零さん

発表は初めてです…。

性別 女性
将来の夢
座右の銘 自分に限界をつくるな

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誕生日は3月4日

17/01/19 コンテスト(テーマ):第126回 時空モノガタリ文学賞 【 304号室 】 コメント:0件 華満零 閲覧数:932

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きっと、運命ってこういうことを言うのだ。

私達の出会いは、サークルの先輩と後輩という何の変哲もないものだった。
「え!?平井先輩の誕生日って3月4日なんですか!?私もなんです!」
と、叫んだのは私が選んだ文芸サークルでの新歓コンパ。
「うん、そうだよ。沢野さんも3月4日生まれなの?」
穏やかな笑顔と声音。不覚にも心臓が跳ねた。心の揺らぎを悟られないように元気よくしゃべった。
「はい!だから家も304号室なんです!」
「そうなんだ、良いご両親なんだね、きっと」
両親が誉められたことがなんだかくすぐったくて、照れ隠しにへへっと笑う。先輩も、笑顔を返してくれた。

決して大きなサークルではなく、集まりやら飲み会やらしてるうちに先輩とは親しくなった。
好きな作家も同じで、小説が映画化された時には必ず映画館へ足を運んでいたが、それが段々他の場所へと移っていく。
動物園、水族館、博物館…好きな小説に出てくる土地に足を運んだりもした。
先輩と後輩、という枠を超えるには少々時間はかかったけれど、きっと気持ちは同じだった。
「実は一目惚れだったの」
「奇遇だな、俺もだよ」

そこそこ危機もあったが、昨年のクリスマス、給料3か月分と言われる指輪をもらった。

年明けて、約2週間。成人式の3連休は私の両親の仕事が休みということで、挨拶することになった。
「ねえ勇馬、緊張してるの?」
「そりゃ美雪を育ててくれたご両親に会うんだからね」
笑顔は初めて会ったあの日と変わらず、でも声音は緊張していることを物語っていた。
そのスーツ、一番似合ってるから大丈夫。そっと囁くと、うるさい、と照れ隠し感満載の答えが返ってきた。

「どうぞ、勇馬君。美雪から話は聞いているから、さあ上がって」
「お邪魔します」
朗らかに母が出迎え、緊張した面持ちで勇馬が答える。
案内されるがまま、ダイニングテーブルを囲んで座る。
お茶と、私達が持ってきた煎餅の詰め合わせがお茶菓子として出された。
自己紹介等々、決まった流れを終え、雑談へと話が移った。
「それで?美雪との馴れ初めは?美雪ったら恥ずかしがって話してくれないのよ」
「だーっ!余計なこと言わなくていいから!!」
「そうなの?」
とからかい口調で聞いてくる勇馬。私をからかえる程度には、緊張がほぐれたようで安心した。
「誕生日が、一緒だったんです」
ふとあの新歓コンパの日を思い出し、私は更に恥ずかしくなった。

話を聞いた両親が考え込む顔になった。え、何か下手を踏んだかな、と勇馬が目で尋ねてくるが私にもさっぱり分からない。
「ねえ、もしかして平井さんって…」
と母が父に視線を向ける。
「勇馬君、今日ご両親とは連絡取れます?」
と父が勇馬に。
「ええ、少々お待ちください」
顔に疑問符を貼りつけたままスマートフォンを取り出し、電話をかけ始める勇馬。数コールの後、勇馬のお母さまらしき声がした。
「母さん?今美雪のお家にお邪魔してるんだけど、話をしていたら連絡を取れるかと聞かれて…え、ああうん、代わるよ」
母が勇馬から電話を受け取る。
「もしもし、突然すみません。平井さんってもしかしてパークサイドマンションのときの…」
ん?なんでうちのマンションの名前を?ついていけないのは当事者2人だけだった。

事の顛末はこうだ。私が3歳の頃今のマンションに住むことになったのだが、一騒動があった。
実は私の両親が部屋を見学していた時、もう契約が決まりそうだったのだ。
ところが、304号室にこだわる理由を聞いて相手方が譲ってくれたのだ、と。それが当時4歳の勇馬を連れて来ていた平井夫妻。
お礼を言いたかったのに、きちんと名前も聞けずにいたのだという。
分かったのは、同じくらいの歳の息子がいるということ、マンションに案内した担当者が言った、「平井さん」という名字だけ。

20年という時を経て私と勇馬は同じ大学に入学し、同じサークルに入った。でもその出会いが初めてではなかったなんて。

私たちは20年も前に出会っていた。
きっと、運命ってこういうことを言うのだ。


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