チャイナさん

性別 男性
将来の夢
座右の銘

投稿済みの作品

0

17/01/17 コンテスト(テーマ):第126回 時空モノガタリ文学賞 【 304号室 】 コメント:0件 チャイナ 閲覧数:707

この作品を評価する

 絶え間ない破壊衝動。何かに負けた時はいつもそれを感じる。テニスでもチェスでもポーカーでも。周りも自分も傷つけて、終わらせたくなる。そんな気持ちを、今も感じている。
 本当は、この気持ちが少し好きなのだ。自分を傷つける事は快感だ、みんな認めたがらないけど。リストカットもカラオケも、二郎系ラーメンも筋トレも、すべて自分を傷つけてその代わりに快感を得る行為なのだ。僕はその自分の気持ちを認める。傷ついた時は目一杯傷つく。そのために選んだのが、この304号室なのだ。
 京王線沿い、6畳1R、3階角部屋、共益費含め月6万8000円。貧乏学生にとっては中々痛い出費だ。でも僕はこの狭くて、隣の大通りがうるさい304号室を選んだ。207でも1104でもなく、304の文字列を自分の中に取り入れた。

 304。

 部屋の中心であぐらをかき、目を閉じて頭の中に304の文字列を思い浮かべる。僕の中ではまだ怒りがぐるぐる暴れまわっていて、イメージは頻繁に乱れ、砂嵐が舞う。しっかり頭の中の304を掴み、右周りに90度回す。
 304は縦の文字列へと変わる。これは僕の復活へと至る旅路だ。3文字を巡る行程は僕からすべてを取り除き、再度すべてを分け与える。

 一番上には、3を右向きに回して出来るW。Wを見て初めに浮かぶのはWorld(世界)だ。僕の前に立ちはだかったWall(壁)。World(世界)の中に僕が存在し、僕の中には煮えたぎるWrath憤怒が存在する。僕の両手にはWeapon(兵器)、それを遠慮なくぶっ放す。目に見えるすべてを破壊する。何も残さない。大げさに、丁寧に一つ残らず粉砕し、World(世界)はω(終焉)に至る。

 その先にあるのは、O。空白。チリすら存在しない純白。すべてをOblivion(忘却)。そして⚪︎(丸)、僕はこの空白を肯定する。僕を退けたWall(壁)も、破壊にしか用途のないWeapon(兵器)も何もない。すべてが僕にObey(従う)し、僕は心の中に完璧で静かな平穏を手にいれる。

 文字列の最後に待ち受けるのは、四方。東西南北のマークだ。すべてを破壊し尽くし、純白の中で安らぐ僕は再度周囲に目を向ける。ここは一人で生きるには広すぎる。人生は空白を過ごすには長すぎる。僕の意識は近くのパズルに、ゲーム機に、本に、ラケットへと向けられ、それらを肯定し、再び世界と向き合っていくことを僕は認める。
 ゼロを超えて僕の怒りは慈しみへと変わり、僕は初めて今日の敗北を受け入れる。僕には周りの世界が必要だ。今日の敗北はまた一つ僕を丈夫にした。

 この部屋は僕の繭だ。僕はサナギだ。傷ついた心を癒し、羽を広げて外を舞う為のこの部屋で、僕は今日も一つ大きくなる。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン