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あずみの白馬さん

成人済 アイコンは天乃ゆうりさん作成(無断転載を禁じます) 自分なりの優しい世界観を出せるように頑張ります。 好きな作家は飯田雪子先生です。若輩者ですが、よろしくお願いします。 Twitter:@Hakuba_Azumino

性別 男性
将来の夢 旅立つときには、ひとりでも多くの人に見送られたい。
座右の銘 「これでいいのだ」

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あくまで相談員

17/01/14 コンテスト(テーマ):第125回時空モノガタリ文学賞【優しさ】 コメント:3件 あずみの白馬 閲覧数:982

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 日曜日の昼下がり、今日は僕の彼女、未菜とデートの予定だった。
 しかし彼女にドタキャンされてしまい、やることも無く秋葉原をぶらぶらとしていた。

 未菜とは婚活パーティーで知り合い、つきあって半年になる。僕のオタク趣味も受け入れてくれて、とても綺麗で優しい。一人暮らしでコンビニ弁当ばかりの僕に、美味しい手料理も作ってくれた。このまま結婚まで行きたいと思っている。

 けれどドタキャンは初めて。未菜を信じているが、胸騒ぎがするのはなぜだろう。

 もやもやを抱えながら歩いていると、メイド服を着た高校生ぐらいの可愛い少女が声をかけてきた。
「おにいちゃん、困ってるみたいですね。相談に乗りますよ!」
 流行りも去ったメイド喫茶の呼び込みかと思ったら、意外な言葉に驚いた。が、
「いえ、間に合ってます」
 適当に流して立ち去ろうとすると、なおもくらいついてきた。
「そうですか? 悩んでるオーラ出てますけど」
 この時、少女の目が紫色に光った。するとどうしてか、この娘になら悩みを話せるって思った。
「悩み、聞いてもらえるかな」
「いいですよ。契約成立ってことで! 私、沙希と言います。そこの喫茶店でお話しましょ。報酬としてお金はいただきませんよ。あくまで相談員なので」
 沙希に誘われるまま、小さな喫茶店に入り、ふたりともコーヒーを注文すると、早速話を始めた。

 ***

 3日前、未菜に自分のデザインしたアクセサリーがあると言われて、宝石店にやってきた。
 僕の目の前にいる、未菜と厚化粧のオバサン店員さんがギラギラと目を輝かせている。店員さんがペンダントを手に、ニコニコしながらセールストークを展開する。
「これね、彼女がデザインしたの。とてもよくお似合いですよ」
「私があなたのためにデザインしたの! お願い、買って!」
 悩んだが、未菜のデザインなら買うしかないと思った。
「こちらはもう絶対お勧めです! 今なら特別に100万円で!」
 それを聞いて我に返った。
「あの、でもお金が無くて」
 100万円なんて高過ぎる。ところがこれを聞いた未菜の顔が一瞬曇り、え!? と思った。別れたくない、どうしよう。
「それでしたらローンを組めば大丈夫ですよ。100万円でしたら10年ローンで月1万6千円です!」
 オバサン店員の言葉は助け船だと思った。それならなんとかなると思い、僕は契約書にサインした。

 店を出ると、未菜はこれ以上無い満面の笑みを浮かべている。
「ありがとう。これは二人だけの秘密よ」
 その言葉を聞きながら、極上の口づけをかわしたのだった。

 ***

「話はわかったわ。おにいちゃん、残念だけどだまされてるよ!」
 沙希の言葉は衝撃だった。確かに怪しいと思った、けれど、優しい未菜がそんなことをする訳はないと思ったからだ。
「だまされてるって、そんなことは……!」
 信じられない、信じたくない。しかし沙希はダメ押しをしてきた。
「デート商法の常套手段よ。彼女はアクセを売ったら終わりね」
 何がなんだかわからなくなって来たがともかく否定する。
「そ、そんなの、嘘に決まってる!」
「嘘だと思うなら、今、彼女に電話してみなよ。これ見せてあげるから」
 沙希に見せられたスマホに映されたのはあの宝石店!? そこには彼女とあの店員、そして見知らぬ男の人がいる。
 合成映像だと祈りながら電話をかけた。
『ごめんねー、今日急に具合悪くなっちゃって』
 彼女の声が聞こえると同時に画面内の彼女も動く。つまり……
「な……、なんでもない」
 そう言って電話を切るのが精一杯。目の前が一瞬にして真っ暗になってしまった。
「そんな……、そんな……」
 あの優しかった未菜は、アクセサリーを売るための仮の姿に過ぎなかったのだ。

「おにいちゃん、辛いだろうけど泣く前にやることがあるでしょ」
 僕は泣く暇も無く郵便局に連れていかれ、宝石店と信販会社にクーリングオフの通知を出すように言われた。書き方は沙希が教えてくれたので、それに従った。
「これで大丈夫だと思うけど、こじれたらすぐに私に連絡ちょうだい」
 未菜との関係もこれで終わり。ショックを引きずっているが、沙希の優しさが身にしみた。ところが!

「それじゃあ、報酬をいただきます」
 え!? タダじゃないの!? と思う間も無く沙希は俺にキス。すると身体中の力が一気に抜けていき、キスが終わるとものすごい疲労感が襲って来た。

「ふふ、私は【悪魔で】相談員。おにいちゃんの精力をいただきました」
 なんのことやらと思っていると、きれいな名刺を渡され、
「また何かあったら相談に乗るね、おにいちゃん!」
 そう言って沙希は去っていった。

 未菜よりも、自称悪魔の沙希の方がずっと優しいと思ったのは、疲れのせいなのだろうか……。


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このストーリーに関するコメント

17/01/15 野々小花

あずみの白馬さま

拝読いたしました。
あくまで相談員。悪魔で相談員。タイトルにやられました。沙希が小悪魔的で、とても魅力的でした。
人間と悪魔。悪いのはどちらなのか。たいへん興味深く読ませていただきました。

17/01/15 あずみの白馬

>野々小花 さま
コメントありがとうございます!
タイトルは狙ってつけました。沙希を小悪魔的で魅力があると言っていただいて嬉しいです。こういうキャラは作者も好きなので。
悪魔=悪とは限らないと考えました。悪魔は人間から対価をもらって願いを叶えますが、もし人間が善なる願いをしたら、悪魔も悪ではなくなると個人的に考えています。

17/01/23 そらの珊瑚

あずみの白馬さん、拝読しました。
オチの言葉遊び(?)が楽しかったです。
まあ、少しくらいは寿命が縮まったかもしれませんが
やさしい悪魔でもあったのですね! と思ったほうがよさそうです。

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