1. トップページ
  2. 珈琲が来るまでの時間

石蕗亮さん

占師。および魔術師。 WEB幽にて怪談投稿してました。 弟子育成の経験や実体験を基にした不思議な話を中心に書いていきたいです。 沢山の方に読んで頂き、反論含めコメント頂けると幸いです。

性別 男性
将来の夢 作家、起業
座右の銘 人は言葉に置き換えれるものしか理解できない。置き換えた言葉でしか理解できない。

投稿済みの作品

8

珈琲が来るまでの時間

12/11/02 コンテスト(テーマ):第十八回 時空モノガタリ文学賞【 コーヒー 】 コメント:3件 石蕗亮 閲覧数:2116

この作品を評価する

 長く車を走らせていた。
酷い土砂降りの中で喫茶店の看板を見つけ車を降りた。
店に入ると窓側の席に着いて外を眺めた。
店員が、ご注文は?と訊ねたので窓の外を眺めたままエスプレッソを頼んだ。
 煙草に火を点けて深く吸い込んだ。
暫く体内に煙を留めてからゆっくりと吐き出した。
同時に溜めていた感情も意識の表層に出てきた。

 別かれましょう、私たち。
唐突に彼女から突きつけられた宣告だった。
思い出して堪らずもう一度煙草を吸い込んだ。
煙が肺を満たし軽い眩みを起こした。
自虐行為だと自覚はあったが、今はこの嫌な気持ちを紛らわしたかった。

 沢山のものを共有しあった。
お互いの好きなものを話し合って相手の好きなものを自分も好きになった。
同じ本を読み、同じ歌や曲を聴き、一緒に出掛け、多くの時間と出来事を共有しあった。
いつしか同じ感想を持ち、同じ反応をするようになり、二人は同じで分かり合えていると思っていた。
しかし、そう思っていたのは自分だけであったと告げられた。

何をするのも一緒なのは良いことかもしれない。
でも、貴方と私は違う人間なんだから同じに成る必要はないでしょ?
もし同じになってしまったら、同じ存在が一緒にいて何の価値があるの?
私は私が欲しいわけじゃなくて、同じものを見ても私と違う価値観で見て、お互いの見識を拡げられるようになりたいの。

進展と成長を求めた彼女に対して、俺は安寧に胡坐をかいて停滞を求めた。
それに気付けなかったのは俺が独りよがりな付き合い方をしていたからだろうと、今更ながらに痛切に感じた。

 おまちどうさま。
頼んだ珈琲が運ばれてきた。
初めて飲んだエスプレッソは想像以上に苦かった。
苦味を噛殺すように奥歯を喰いしばって一気に飲み込んだ。
まだまだ知らない自分が沢山いる。
そう思いながら一気に熱くて苦い珈琲を飲み干すと店を出て、来た道を戻りに車を走らせた。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

12/11/17 石蕗亮

○○までの時間、というテーマで私はよくショートショートのストーリーを考えます。煙草を1本吸い終わるまでの時間や、湯船で温まるまでの時間などです。
今回もそんな作品で仕上げてみました。
乱文気味で読みにくいかもしれませんが、忌憚無いご意見お待ちしております。

13/02/13 白虎

はじめまして。
村上春樹のダンスダンスダンスに似た大人の事情を読んだ気持ちになりました。

13/02/13 石蕗亮

白虎さん
初めまして。読んでいただきありがとうございます。
村上春樹は風の歌を聞けしか読んだことありません。
今度読んでみます。

ログイン