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海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

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304号室の在り処(ありか)

17/01/14 コンテスト(テーマ):第126回 時空モノガタリ文学賞 【 304号室 】 コメント:0件 海見みみみ 閲覧数:861

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「みんな死んじゃえばいいのに」
 小学校からの帰り道。ショータくんはそうつぶやくと、一人暗い帰り道を歩きます。
 そんなショータくんの背後に、とつぜん同じクラスの男子たちが現れました。そして気づかれないように、ショータくんの背中を強くおします。それはきっと単なるイタズラのつもりだったのでしょう。
 しかしタイミングと場所が最悪でした。
 ショータくんがおされた先にあったのは一台のトラック。トラックにはねられると、ショータくんは地面に頭を強く打ち、血を流し、たおれました。

 その光景をテレビ画面ごしに見ている少年の姿があります。顔を見ると、その少年はショータくん本人でした。

 ここはショータくんの脳内世界。ショータくんは交通事故にあい、植物人間になり、意識だけがこの世界に閉じこめられているのでした。

 脳内世界には無数のトビラがあります。その中から304号室を見つけ出せば、現実世界に帰れる。そうショータくんはこの世界のナビゲーターから教わりました。
 しかしショータくんは304号室を探そうとせず、テレビばかり見ています。

「またテレビを見ているのですか」
 気づいたら現れていた来客に対し、ショータくんは無言で返します。
 この急に現れた人物、名前をラプラスの悪魔(あくま)と言います。なんでもこの世界のナビゲーターで、どんなことでも知っているのだとか。
「まだ304号室を探す気にはならないんですか?」
「……ラプラスは304号室がどこにあるか知っているんだろう? だったらどこにあるか教えてよ」
「それはできません。304号室は自分で探さなくては意味がないのです」
 ラプラスの悪魔がさとすように言うと、ショータくんはふてくされました。
「いいんだ。ボクはここにずっといる」
「現実がこわいからですか」
「うるさい」
 ショータくんは冷たい声でそうつぶやきました。対してラプラスの悪魔の表情はよゆうに満ちています。
「それでは、ちょいとテレビの映像を変えましょうか」
 そうラプラスの悪魔が言うと、テレビの画面が切りかわります。
 そこに映ったのは、小学校で乱暴な男子たちからひどい暴力を受けているショータくんの姿でした。
「……やめろ」
 次に映ったのは、そんなショータくんを無視するクラスメイトたちです。クラスメイトたちは自分がいじめられないよう、ショータくんをイケニエにしているのです。
「やめろよ」
 最後に流れたのは、家で一人コンビニ弁当を食べるショータくんの姿でした。そこにいじめを相談できる家族はいません。
「やめろー! やめろよ、なんでこんな光景ばかり見せるんだよ」
 泣き出したショータくんに、ラプラスの悪魔は平然とした表情で話しかけます。
「自分の居場所がないから、現実にもどりたくない。そうですね?」
「そうだよ。現実に帰ったって、ボクの居場所はどこにもないんだ!」
 ショータくんのさけび。それを聞くと、ラプラスの悪魔はなにかひらめいたように一度手をたたきました。
「私は現在過去未来、全てを知ることができます。特別にぼうやの未来を見せてあげましょう」
 ラプラスの悪魔が再び手をたたきます。するとテレビの画面が変わりました。
 そこに映し出されていたもの。それは雪山をチームで登って行く、大人になったショータくんの姿でした。
「これが未来のボク?」
 大人のショータくんは今とはちがい、とても活き活きした表情で山に登っていました。
 雪山を登りきり、大人のショータくんが山頂に立ちます。

 広がる広大な景色。きらめく朝日がのぼる光景は、神々しいの一言ではまとめられない美しさでした。

「ここが、この世界がオレの居場所だー!」

 大人のショータくんはさけびます。その表情は満足気でした。
「今のぼうやはこの世界に居場所がないと言う。しかし大人のぼうやはこの世界が居場所だと言います。果たして、正しいのはどっち?」
「それは」
 ショータくんにもわかっていました。大人になった自分のあの笑顔を見れば、答えなんてだれにでもわかります。
「ボクは、ボクは……」

 ボクも、あんな風になりたい!

 それなら後は決まっています。
 ショータくんは立ち上がると、目の前にあるトビラの一つに手をやりました。
「いよいよ旅立たれますか」
「うん、どれだけ時間がかかるかわからないけど、304号室を探してみるよ」
 トビラのノブを回そうとすると、ラプラスの悪魔は優しく声をかけてきました。
「言い忘れていましたが、304号室の在り処(ありか)はぼうやが探そうとしている居場所と同じ。自分の進むべき道だと思ったら、そこが304号室なのです」
 トビラ、304号室が開かれます。その時、世界に光が満ちあふれました。

おわり


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