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優しさの裏返し

17/01/09 コンテスト(テーマ):第125回時空モノガタリ文学賞【優しさ】 コメント:0件 窓際 閲覧数:850

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正月に引いたおみくじが大吉だった。
僕の人生が下向きに伸びていくきっかけとなったのはそんな些細なことだったのかもしれない。

自分で言うのもなんだが僕の人生は順風満帆であった。
高収入・高身長・高学歴
一昔前に言われていた3高全て揃っていたし、運動はすべて並み以上には出来るくらい運動神経もよかった。

才能にあふれ誰からもあこがれるような人生が狂いだしたのは26歳の夏のことだった。
仕事の合間にカフェでコーヒーを飲んでいるとある男が声をかけてきた。
「君かっこいいね!モデルとか興味ない?」
そういう俗物にあまり興味はなく困っていると男は息つく暇もなく
「まあやりたくなったらここに連絡ちょうだい!」
と言って名詞だけ置いて行った。
社名のところには≪N.Bコーポレーション≫と書いてあり驚いた。
超大企業だ。ここに入れば間違いないと言われるほど信頼されており、オーディションに受かるのは宝くじが当たるより難しいとされる高い壁。
そんなところからのスカウトに興味はないと言いつつも心躍った。

連絡はせずに1か月がたったある日。
事態は急変した。勤めている会社が海外の会社に吸収合併されることになった。
僕の能力を考えれば会社に残ることもできるし、もし残らないことを選択しても引く手数多だろうと思ってそこまで慌てることはしなかった。

それから2週間後、人員削減のために僕は首を切られた。
信じられなかった。能力で劣っている奴らだけが会社に残り、入ってから4年間最前線で会社を引っ張ってきた僕の首を切るなんてどうかしていると思った。
不幸はそれだけにとどまらず僕のことをどこの会社も必要とはしてくれなかった。
技術で周りをねじ伏せてきた僕には周りとのつながりなんて築くことができていなかった。

とにかく焦った。
貯蓄はあるし、このまま生活していくことは難しくはないとは思う。
だが、今まで上級の人生を生きてきた僕にとって自分が無職という周りから見下される対象に入ることがどうしても許せなった。
僕は名刺入れからスカウトの人の名刺を取り出し迷わず電話してしまった。
ここで一考できていれば踏みとどまることもできたのかもしれない。

「もしもし?」

 「もしもしそちらN.Bコーポレーション様でしょうか?」

「はい。ご用件は何でしょうか?」

 「以前スカウトしてもらって・・・○○さんは居られますか?」

「・・はい少々お待ちください」




「はい代わりました○○です。」

 「お久しぶりです。以前カフェでスカウトしてもらった者です」

「ああ君か覚えてるよ!興味持ってくれたんだね。嬉しいよ。」
 
 「モデルの職業やってみたいと思ってるんですけど・・・・」

「大歓迎だよ!じゃあ説明とかいろいろするから明日9時にN.Bコーポレーションに来てくれるかな?」

 「わかりました。明日の9時ですね。」

「じゃあ明日待ってるよ!」

電話を切って感じたのは自分のことを覚えてくれていてくれたことへの驚きではなく、自分の地位が確立される手掛かりがつかめたことへの安堵だった。

翌日、会社に行くとまずは案内と言われ会社の中をくまなく案内され、ある会議室の一室で説明が始まった。
・モデルという職業について
・お金の話
・会社との雇用形態について
約1時間ほどの説明を受けて
「今日のところはこのぐらいかな。わからいとこあったら言ってね。」
「やってみたかったらまた連絡ちょうだい。今度はハンコ持ってね!」
と言われたがもう腹はくくっていたので
「ハンコ持ってきているので契約させてください!」と即答した。

そこから僕のモデル生活が始まったのだが。
驚くほどにモデルという職業は僕に順応しなかった。
いや、僕が順応しなかった。
会社時代に周りとのつながりが確保できていないだけでなく、反論するものを力で押しつぶしてきた僕にとって周りに合わせるということが苦手になってしまっていた。
モデルの仲間内ではどんどん孤立していき、最初事務所の名前で来ていた仕事も来なくなっていった。
大きな会社は見切りをつけるのも早いものだ。
僕は半年でまた職を失った。

半年で職を失った僕に世間は冷たかった。
履歴書の欄を見て苦い顔をされる。
少し表舞台に出ていたため、周りから色眼鏡で見られる。
僕はついに社会からも孤立した。

この世界に神様がいるとしたらどれだけ残酷なのだろう。
地獄を見ることになるなら、最初から天国なんてちらつかせなければここまで傷が深くなることはないのに。
地獄を見る運命だからせめてもの優しさとして天国を見せたというならそれは優しさなんかじゃない。
優しいことをしている優越感に浸りたいだけだ。
この世界に本当の優しさなんて存在しないのだから。


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