とむなおさん

とむなお――です。 ちょっと奇妙な小説を書きます。どうぞ宜しく!

性別 男性
将来の夢 作家
座右の銘 ふしぎ大好き

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17/01/08 コンテスト(テーマ):第126回 時空モノガタリ文学賞 【 304号室 】 コメント:0件 とむなお 閲覧数:847

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 僕が暮らすマンションでの、夕方のこと――
『ただいまー』
『おかえりー』
 今日も聞こえてきた上の階――3階の304号室からの楽しそうな会話……。
「新婚なのかな……?」 
 2週間ほど前、僕が引っ越してきた時からだった。独身で恋人もいない僕としては、少々、耳ざわりな会話ではあった。とは言え、こっちでグチっても仕方ないが……。その後は、お決まりの夕食などの雑談になっていった。僕の方は、段々とムカムカしてくるので、テレビをつけて独りの食事となり……
やはり、独りで就寝となる訳だ。

 数日後の夕方――
 僕は、いつものように仕事から帰宅すると、いつものように缶ビールを飲みながら、ソファーでくつろぎ、早めの夕食とした。
 やがて、また上の部屋から、かすかなドアの音がして……
『ただいまー。あれ? ……どうしたの?』
『あなた今日……どこかの女性と一緒だったでしょう。それもホテルで……』
『あっ……いや、それは……』
「ん? いつもと調子が違う……。おいおい、浮気かよ……」
 僕はソファーから立ち上がった。
『あたし以前、言ったわよね。もし貴方が浮気したら、殺すって』
『あ、いや。それは誤解だよ』
『言い訳は無用よ』
『おい、バカな真似はよせー!』 
『裏切り者』
『うわー!!』
 僕は思わず――超ヤバイー!――と廊下に飛び出し管理人室に急いだ。
 マンションの玄関近くにある管理人室に駆け付けた僕は、管理人の中年男に事情を話した。すると彼は、怪訝そうな顔つきで、
「それって本当ですか?」
 キーを持つと、その部屋に向かった。
 その部屋に管理人と一緒に入った僕は呆然とした。何も無い完全な空き部屋だったのだ。
「夢でも見たんでしょう……。しっかりして下さいよ……」
 僕が謝ると、管理人は笑いながら戻って行った。
 僕は、自室に帰っても呆然としていた。ただただ気分が悪かった。そしてベッドに倒れこむと、眠ってしまった。

 翌日――
 僕は、いつもどおりに出社し、なんとか仕事をこなした。
 そして定時退社したが、どうしても真っ直ぐに帰宅する気にはなれなかった。ふとした気まぐれから、あるBARに入った。ミステリアスな店内だった。開店直後のせいか、客は1人――女性だった。それも僕のタイプで、どことなく影のある女性だった。
 いつまでも彼女の隣席が空いているので、僕は思い切って声をかけた。すると、
「1人です……」
「僕も1人なんですよ。となり、いいですか?」
「えー……」
 彼女は僕より年上だったが、実にチャーミングだった。
 その後、僕と彼女は仲良くなり、僕の部屋で同棲するようになった。

「ただいまー」
「おかえりー」
「きょうは、オムライスよー」
「やったー! 大好物だよ!」
 こういった会話のある毎日――僕は、こういう暮らしを待ってたんだ。
 ――すると、その時、何やら音楽が聞こえてきた。
「あれ? テレビの音楽みたいだ……。下から?」
「そうね……。意外と聞こえるものね……」
「――って、ここ2階だけど、下は倉庫で誰もいないはず……」
「多分、誰か借りたんじゃない?」
「そうか……誰か借りたのか……」
 僕は、テレビの音楽が聞こえてくる方向を見下ろしながら、奇妙な感覚を覚えていた。

 翌朝――
 出社した僕は、新しく入った女の子を紹介された。
(やっぱり女は年下の方がいい……かも……)
 僕は、その子に仕事を教えている内に、ますます好きになっていった。
 社の手続きの不備から、彼女の入寮日が明後日になってしまい、ホテルを利用することになった。すると彼女は、困った表情で、
「1人でチェック・インするのって、あたし怖いです……」
 仕方なく僕は、一緒にチェック・インしてやった。そして室内に一緒に入った時、思わず彼女を抱いてしまった。
 まもなく僕は帰宅した――が……
「ただいまー。あれ? ……どうしたの?」
「あなた今日……どこかの女性と一緒だったでしょう。それもホテルで……」
「あっ……いや、それは……」
「あたし以前、言ったわよね。もし、あなたが浮気したら――殺すって」
「あ、いや、それは誤解だよ……」
 彼女は、不気味な笑みを浮かべながらキッチンに向かった。
「言い訳は無用よ」
 そしてナイフを手にした。
「おい、バカな真似はよせー!」
 僕は逃げようとしたが、足がからまって倒れてしまった。彼女は笑顔のままで僕の上に乗ると、そのナイフを僕の胸に突き刺した。
「うわー!!」
 僕は呆然としたままで、彼女を見詰めた。彼女は笑顔のままで、
「さようなら」
 部屋を出ていった。僕は意識が薄れる中、つぶやいた。
「なーんだ……あのとき聞いた声は、僕自身の声だったんだ……」
 


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