- トップページ
- さよなら、〔星の王子さま〕
泡沫恋歌さん

泡沫恋歌(うたかた れんか)と申します。
性別 | 女性 |
---|---|
将来の夢 | いろいろ有りますが、声優ソムリエになりたいかも。 |
座右の銘 | 楽しんで創作をすること。 |
投稿済みの作品
コメント・評価を投稿する
コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。
このストーリーに関するコメント
12/10/31 泡沫恋歌
フランス人の飛行士・小説家であるサン=テグジュペリの「星の王子さま」は1943年にアメリカで出版されました。
童話の風に書かれていますが、内容はシュールで、哲学的、社会風刺などもあり難解です。
子供の心を忘れてしまった大人に向けに書かれたものだと言われています。
私はこの「星の王子さま」の世界感が好きで30年くらい、ずっと傍らに置いています。
別に読んでもいないのですが、お守りみたいなもの(笑)
今回、書店がテーマだったので大好きな本のことで書こうと思いました。
最後に、作者のサン=テグジュペリは、「星の王子さま」が出版された4日後に、敵軍の偵察に向かうため飛行機で基地を飛び立ったまま消息を絶ち、二度と戻って来ませんでした。
この作品は世界に向けたサン=テグジュペリの「遺書」だと言われています。
12/10/31 そらの珊瑚
恋歌さん、拝読しました。
タイトルだけで切なさが押し寄せてくるようでした。
星の王子様はいっけん童話のようですが、珠玉の言葉の宝庫で、人生を導いてくれるような大好きなお話です。
予期せぬ理不尽で悲しい出来事にあってしまった時、人はどのように乗り越えていけばよいのでしょうか。それは決して他人事でなく、誰にも起こり得ることです。そのひとつの答えが、この短い小説の中に示されていたように思いました。
このさよならは悲しいだけのお別れではきっとないはず。
12/10/31 草愛やし美
泡沫恋歌さん、拝読しました。
とても切ないお話ですね。
子供って見えないものが見えるそうですから、きっとその方の霊を見つめていたのかもしれませんね。ママにとって何が一番大事なのかがわかっているのでしょう。
星の王子さまの題材がとても活きていますね。この主人公はきっと心の星の王子さまに導かれ、強く生きていかれることでしょう。私もそれを願います。
12/11/01 こぐまじゅんこ
泡沫恋歌さま。
拝読しました。
子どもに教えられることって本当にたくさんありますよね。
この物語は、とっても切ないけれど、素敵な物語だなぁと思いました。
うまく感想が書けなくてすみません。
素敵でしたよ。
12/11/02 泡沫恋歌
珊瑚さん、コメントありがとうございます。
「星の王子さま」はパソコンで調べるとたくさんの検索が引っ掛かります。
マニアも多いようですね。一応、私もその仲間です(笑)
「星の王子さま」は親友であるユダヤ人の男性に捧げられた作品ですが、かなり政治色の強いものだと今回知りました。
バオバブの木は「日・独・伊」の同盟のことを比喩しているらしいのです。
この作品を書くに当たって、いろいろ調べて勉強になりました。
12/11/02 泡沫恋歌
草藍さん、コメントありがとうございます。
書店がテーマだと聞いて、この「星の王子さま」で一本書けたらいいなとチャレンジしました。
「星の王子さま」は深く読むと、とても悲しいお話です。
亡くなった婚約者を星の王子さまに投影している主人公は、とても悲しい女性です。
その辺の心理を読みとって頂ければ嬉しい限り。
12/11/02 泡沫恋歌
こぐまじゅんこ 様。
コメントありがとうございます。
読みに来て頂き、コメントまで下さいまして感謝します。
コメントは「読んだよ」のひと言だって嬉しいのです。
誰かに読んで貰えてこそ、作品は輝きます。
作品は読み手がいてこそ、成長しますから。
ありがとうどざいました。
12/11/02 泡沫恋歌
ありがとうどざいました。 ⇒ ありがとうございました。
スミマセン誤字ですO┓ペコリ
12/11/04 くまちゃん
胸にじ〜〜んとくるものがあります。
過去も大切ですが未来はもっと大切なのですね。幸 不幸は 心を何処に置くかだ!ですね。一家の主婦として強く生きて欲しいです。
12/11/05 泡沫恋歌
くまちゃん、コメントありがとうございます。
ちょっと切ない物語です。
愛する人をいきなり奪われたら、どうやっても心の収拾がつかないと思います。
死んだ人は永遠なので強い、生きてる人は死者には到底敵わない。
だけど、それを乗り越えないと先には進めないと思うし、生きてる人を悲しませてしまいますよね。
12/11/07 ドーナツ
拝読しました。
ぐっと胸に迫るものがあります。
過去は振り向かずに前に進む。強いお母さんだなと思います。でも、星の王子様のことは綺麗な思い出として ずっと心に残して欲しいなと思います。
いつか、息子さんも お母さんの心わかってくれる日が来ると思います。
お守りにして 傍らにおいてる すごく良くわかります。
人生の宝物ね。
12/11/07 泡沫恋歌
ドーナツさん、コメントありがとうございます。
「星の王子さま」好きなんです。
星の王子さまグッズでハンカチも2枚持ってます( 〃´艸`)
正直、「星の王子さま」は難し過ぎて読んでてもよく分かりません。
だけど、その世界感が好きだからいいんです。
星の王子さまの本は創作者として純粋な探究心を失わないように・・・。
お守りみたいなもの。
12/11/09 鮎風 遊
いいですね。
短い語りの中に本質が入っているようで。
過去より今、そして明日。
栞が善かったです。
私の場合は栞ばっかりですわ。
12/11/10 泡沫恋歌
鮎風さん、コメントありがとうございます。
短い中に出来るだけ主人公の想いと「星の王子さま」のイメージを嵌めこんでいくのに
ちょっと苦労しました。
更に加筆した作品をこちらのサイトに載せています。
泡沫恋歌 Metamorphose ― 瑠璃色の翅 ―
「さよなら、星の王子さま」http://rennka55.exblog.jp/16769632/
よろしければ、どうぞ。
12/11/17 ドーナツ
点数は一回しか入れられないんだ。だけど、もう数点追加したことにします。
大人のプラトニックラブとして読ませていただきました。
なくなった彼の魂が、星の王子様になって、大事なメッセージを伝えに来たのかな。そして、いつまでも邪魔にならないところで見守ってくれているんじゃないかなって感じます。こういう思い出はすごく綺麗で、いつかお母さんの思いが息子さんにも分かる日が来ると思います。
先に進まなきゃ生きていけないけど、でも、良い思い出として完全に消してしまわずにとっておいてほしいなとも思います。
12/11/18 泡沫恋歌
ドーナツさん、コメントありがとうございます。
心の中でポイントいっぱい入れてくれて嬉しいです。
「人は思い出だけでは生きていけない」
という、言葉があります。
生身の人間は思い出に縋っていても、思い出だけを支えには生きていけないのです。
亡くなった人は永遠です。
だけど、何もしてはくれません。
触ってもくれないし、言葉もかけてくれない、止まった時間の中から出ては来れないのです。
生きてる限り、前に進まなくればならない。
息子の言葉で主人公はそのことに初めて気がついたのです。
亡くなった人の記憶が生きてる人たちをいつまでも悲しませてはいけません。
彼の魂は美しい栞となって、本の中で永遠に息づいていることでしょう。
読んで頂きありがとうございます。
あれから、ずいぶん時が過ぎていった。。
街も人も変わっていくのに、封印された想い出は色褪せず、今も私の心の中に棲んでいる。星になってしまった、私の王子さま――。
駅の構内にある書店。
私たちは本が好きだったのでデートの待ち合わせ場所はここと決めていた。当時、OLだった私は先にきて婚約者の彼を待っていた。急な仕事で待ち合わせに遅れることもよくあったが、書店の中だと好きな本を見て回れるので遅れても気にならなかった。
あの日、一時間以上待っても彼は来なかった。まだ携帯電話が普及してなかった時代だったので連絡がつかない。駅の公衆電話から彼の会社に電話したら「帰宅しました」と告げられた。おかしいなあと思いつつ、さらに三十分ほど書店で待っていた。
自宅に帰ってから、彼の家に電話したら「事故にあった」と聞かされた。急いで病院に駆け付けたが病室に彼がいない。そこに居た看護師に教えられた場所は「霊安室」だった。白い布を顔に被されて冷たい身体が横たわっていた。
信じられない状況に気が転倒して、彼の遺体に縋りついて大声で泣き叫んだ。
会社を出て、駅に向かう途中の横断歩道を青信号で渡っていた彼を右折してきたノーヘル二人乗りのバイクが撥ね飛ばした。死因は頭部打撲による外傷性くも膜下出血だった。救急車に中で彼は息を引きとった。
半年後に結婚する予定だった私たち――婚約者のお通夜、葬儀を終えてから、彼との思い出の詰まったこの街を私は出て行った。形見に貰った、彼の愛読書サン=テグジュペリの〔星の王子さま〕だけを手に持って……。
この本〔星の王子さま〕は読む度に発見があるんだ。そこには感動とひらめきがある。そう嬉しそうに喋る彼の笑顔を一生忘れられないだろう。
「ママ、この本買って!」
六歳になる息子が書店の棚から本を持ってきた。
「あら? その本はうちにあるでしょう」
「僕は新しい〔星の王子さま〕が欲しいんだ!」
息子は怒ったように口をヘの字に曲げた。
私は街を出て行った、三年後に結婚した。一生結婚しないで亡くなった婚約者との思い出でに生きるつもりだったが、孤独感に圧し潰されそうで限界だった。そんな時、今の主人と出会った。
お腹に子どもができて、主人にプロポーズされたが、結婚式の前日まで私は結婚に躊躇していた。本当は愛していないのに結婚するのは主人を騙すようで後ろめたかった。若くして非業の死を遂げた婚約者を思うと、自分だけ幸せになってはいけないのだという罪悪感もあった。
だけど結局、結婚して息子が生まれた。主人の転勤でアメリカにずっと住んでいたが、息子の就学前に日本へ帰ってきた。息子を連れて実家に里帰りする途中の乗り換え駅、つい懐かしさで、昔、婚約者と待ち合わせた駅の書店に立ち寄った。
あれから十年が経っていたが、店内はほとんど変わっていない、本を買う人はわずかで立ち読みや雑誌ばかりが売れている。
「ママの〔星の王子さま〕は、もうボロボロだから捨てよう」
「あれはママの大事な〔星の王子さま〕なのよ」
「だって、あの本を見ている時のママは悲しそうだから、僕はイヤだ!」
今でも婚約者の形見の〔星の王子さま〕を時々読んでいるが、彼を思い出して涙ぐむこともある。そんな自分を息子は見ていたのだ。
「ママはいっつも見えない誰かと喋ってるんだもん。僕つまんない」
「えっ?」
息子の言葉が胸に突き刺さった。この子は私の過去を知らないはずなのに……私が引きずっている《誰か》をちゃんと知っていた。――そのことに驚いた。
主人は本を読まない。スポーツとカラオケが好きで仕事ができる、人望もある。子煩悩で家族思い、バイタリティー溢れる男だ。ロマンはないが生活者としては申し分ない。それなのに、この夫に満たされなかったのは死者への幻想が捨て切れない私のせいなのだ。
「その〔星の王子さま〕はお前に買ってあげるから、ママの〔星の王子さま〕も捨てなくていいでしょう」
「うん。けど……」
「大丈夫、もう見えない《誰か》とお話しない。ママはパパとお前とお話するからね」
「わかった」
「お勉強して字がいっぱい読めるようになったら、お前も〔星の王子さま〕とお友だちになれるよ」
「わーい!」
嬉しそうに〔星の王子さま〕を胸に持ってレジへ向かう息子。
この子のためにもいつまでも思い出に縋って生きていてはいけないんだ。《かんじんなことは、目には見えない》星の王子さまにキツネが告げた秘密。
目には見えないあなたの影を追いかけて、大事なものに気づかずにいた。かんじんなことは、目の前にあった。この書店で、そのことを息子に教えられた。
《誰か》の思い出を栞にして、この本の中に挟んで置くよ。私には進まなくてはいけない未来があるから。
さよなら、〔星の王子さま〕