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麦食くまさん

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優しさって

17/01/07 コンテスト(テーマ):第125回時空モノガタリ文学賞【優しさ】 コメント:0件 麦食くま 閲覧数:492

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新しい年を迎え、世間が平常モードに戻りつつあった日の夜。とある警察署のの留置場にいた山本優真は、一人自責の念に駆られていた。「俺の名は優真(ゆうま)その名のとおり、『真に優しい人間にと名づけてくれた』と両親に言い聞かされた。だから、そうあろうと人に優しくしたつもりだったのに、それが災いになって、こんなところに放り込まれるとは・・・」
そういいながら優真は事件のことを思い出す。

優真はこの日、ある小さな行きつけの居酒屋のカウンターで一人飲んでいた。すると隣で酔っ払い同士の口論が始まっていた。それがエキサイトしてしまい、ついに取っ組み合いの喧嘩に発展。物が壊れたり、ほかのお客さんに迷惑がかかろうとしたのを見かねた優真は間に入って仲裁する。しかし、一方の男がどこからか包丁を取り出す。「警察を!」というほかのお客さんの声が上がるものの、警察沙汰になったら話が大きくなることは、後々よくないと思った優真は、優しく諭せば収まると思い、周りへの警察への電話を思いとどまらせながら、怒り狂っている相手に向かい冷静になるように、諭そうとした。しかし、相手の怒りがそれを上回ったのか、今度は優真に対して包丁で襲いかかろうとした。優真はあわてて男からその包丁を取り上げようとするが、そこでの揉み合いで誤って相手を刺してしまった。血が飛び散り救急車が呼ばれる。手当てが早かった事もあり、命には別状なかったが、男に全治一週間の怪我を負わせたということで、警察に連行され、取調べを受けた後、留置所に入れられてしまったのだ。

「あそこは好きな店だったから、大事になってしまうと、お客さんの入りとかに影響が出たらまずいからと思ってやったことが・・・どうせ相手は酔った勢いだから冷静に優しく相手を諭すことができると思い込んでいた俺が馬鹿だった。相手に怪我を負わせるなんて最低だ!」優真はその事件を何度も思い出しながら一人涙を流した。

やがて、被害者側との話し合いの末、結果不起訴となり無事に釈放された優真。とはいえ、怪我を負わせた費用を自らが払うべきだと思い、刺した相手が入院していた病院に入った。
病院の受付に向かおうとしたその時、「あ、あのうこの前の」という声がしたので優真が声のほうを振り向くと、あの時、優真が刺した相手の男が立っていた。「ああ!あの時は申し訳ございません。無事に退院されるのですね」そういいながらあわてて頭を下げる優真に、男が意外にも優しく声をかけてきた。「いえ、私のほうこそあのときにちょっとしたことで飲んだ相手と口論となってしまったことが恥ずかしくて・・・。貴方が間に入って優しく諭してくださったのに、あの時は血が上ってしまい、わけがわからなくなって、後で申し訳ないと思っています。おかげさまで怪我も、もう完全に治りました」

「そうですか、それは本当に良かったですね。では治療費をお支払いしますね」「いえ、もういいんです」怪我が治った男は優真に意外なことを言い出す。「え?でも私が貴方を刺したから・・・」と、あわてる優真に「まあまあ」と軽く優真の肩をたたく男。「実は、たしかに貴方に刺されたのは事実です。でも実はそれがあったことが今となって私にとっては非常に良かったのです」「へえ?」意味不明のことを言われているようで驚くばかりの優真。「実を言いますと、今回のことがなければあの日の3日後に私は海外旅行に出かける予定だったのです。ですからあのことがあって入院することになったときには本当に悲しかった。でも、そのときテレビで見たんですよ。私が乗るべき飛行機が墜落したという事実を!」「そ・それは・・・何といったら」「いえ、そうなんです。なんと言うか運命の面白さですよ。あの時口論になって貴方様と関わって私が刺されなければ、私この世にいなかったかもしれないのですから」「・・・・・」ですから貴方様は非常に優しい人ではないかなんて思ってしまいまして、
ということで治療費はお礼ということで要りません。またお会いできることがありますように。
本当にありがとうございました」そういって男は病院を出た。
「・・・・。『狐につままれる』という言葉はこういうときに使うのだろうなあ。
何だろうたぶんあの人にとっては良かったことだけはわかるけど。微妙だなあ」
優真はそういいいながら病院を出る。「でも、あの人が言っていたなあ『優しい人では』って。
そのことを聞いただけでも嬉しいなあ」そんなことを優真は嬉しそうにつぶやくのだった。


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