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本宮晃樹さん

ふつうにサラリーマンをしております。 春夏秋冬、いつでも登山のナイスガイ。 よろしくお願いします。

性別 男性
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救われた星

17/01/06 コンテスト(テーマ):第96回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:612

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「あまりにもひどい」担当官はかぶりを振った。「いったいこのエリアはどうなってるんだ? これほど支離滅裂な連中は探したってそうそう見つかりっこないぞ」
「どうしました?」と面倒くさそうに部下。惑星がいかに尊重されるべきかのありがたいご高説が炸裂せねばよいが……。
「見たまえ」担当官はイメージを放射した。
 マルチ・プレーン・デバイスを介在せず、古式豊かなオーガニックウェーヴにこだわるところが彼らしいな、高確率で頭痛を引き起こすからやめてほしいな。彼女は態度には出さずに、「確かにひどいですねえ」
「こんなになるまで自分の住んでる星を放っておけるものだろうか、いやしくも自意識を持った生命体がだよ」
「まったく理解不能ですね」
「まじめに考えてないだろ。いままさに連中、恐るべき侵略に手を貸してるんだぞ」担当官が目を閉じた。またぞろフィルターなしのOW。強烈だ。「そら、度肝を抜かれないかね?」
 抜かれましたよ、文字通り頭痛の種をまき散らすあんたにね。部下は放射してしまわないよう慎重に毒づいた。「あちゃー、彼らはどうしたいんでしょう。苦労してこのなんと言うか――植物、ですか? とにかくそれを伐採したあと、その足で一生懸命植え直してるんですから、世話ないですよ」
「明らかにこの星はいま、悲鳴を上げてる。だいたいなんだこの、DNAとかいう気味の悪い核酸は? 地表をうろついてる連中に言ってやらにゃ。まずはそいつを駆逐しないと、いくら引っこ抜いても焼いてもきりがないぞって」
「MPDによると」彼女にもようやく興味が湧いてきたようだ。「この植物と呼ばれる生命体が当該惑星を汚染したようですね。見てください、酸素の値が異常に高い。電磁波を利用した炭化水素変換反応の残滓として、過去からこんにちまで大量に排出されたようです」
「身の毛もよだつ有毒の大気だな」
「あ、わかりましたよ!」部下は得意気に、「見てください。彼らの不可解な行動の根拠はたぶんこれです」
 部下は当てこすりのつもりで、MPDによる多次元チャンネル接続をする。担当官の割当次元チャンネルに一人の生命体がさかんに音波を発しているのが映った。「翻訳できるか?」
 彼女はそうした。
「――以上のことから、われわれが地球を破壊しつくしてきたのは自明のことであると結論できます。いまこそ失われた植生、失われた豊かな環境、そして自然に対する失われた礼儀! これらを取り戻すべく、われわれはいまこの瞬間より、地球に対して――そう、謙虚に! 謙虚な態度でもって接していかねばならないのであります」
 担当官は頭を抱えた。「なんでこんな素っ頓狂なこと言ってるんだ?」
「わたしにもわかりません」部下は彼ほど憂鬱ではない。この惑星の担当責任者はあくまで担当官であり、彼女は補佐なのだから。「この狂人も植物も結局は例の核酸がベースですから、落着点は同じなんでしょう。つまり『自分自身を複製せよ』」
「それにしたっておかしいだろ。ふつう気づきそうなものじゃないかね」担当官はしぶしぶMPD経由で――当世風のコミュニケーション手段になじめない老害なのだ――確率操作メニューを呼び出した。「さて、どれにするかな。このいまいましい核酸を一掃する方法を考えにゃ」
「無理なく起こせそうな蓋然性はありますかね」
「恒星黒点による氷河期。磁場の消失による放射線曝露。より後者のほうが徹底的に微生物まで掃討できるが、いきなり例の星が強磁性体でなくなるというシナリオは無茶かなあ」
「偶然にそうなる確率はどれくらいです?」
「小数点以下無限大にゼロが続いたあと、一がぽつんとある」
「それだけ起こりそうもないとなると」部下はあくまで楽観的に、「確率波の収束にはよそから相当のエネルギーをくすねてこなきゃだめですね」
「惑星の福祉には代えられんさ」
 担当官は蓋然性を操作した。その瞬間、銀河系辺境の惑星に何万シーベルトもの放射線が降り注いだ。この星の住人からすればまったく不可解なことに、ヴァンアレン帯が突如として消滅したのだ。
 地球は思った。ようやくうっとうしい連中がいなくなってくれたと。


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