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笹岡 拓也さん

文章で笹岡 拓也の世界を伝えられたらいいなと考えてます。 キャラクターたちがイキイキとした物語を書いて、読んだあと何か残れるような作品にしていきます。

性別 男性
将来の夢 自分の作品を多くの人に読んでもらうこと
座右の銘 生きているだけで幸せ

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5分間タイムリープ

16/12/31 コンテスト(テーマ):第124回 時空モノガタリ文学賞 【 五分間 】 コメント:0件 笹岡 拓也 閲覧数:647

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目の前で見ず知らずの女性が亡くなった。縁も所縁もないが、目の前で人が亡くなるのは辛い。
女性の死因は交通事故だ。こんな車通りの多いところに飛び出した女性が悪い。しかし女性は飛び出した理由があった。それは女性の子供が急に道路に駆け出し、車に跳ねられそうになるのを防ぐために、女性は車の前へ飛び出した。
私の目の前で女性は無残な姿をしている。その女性に駆け寄る子供。ひたすら泣きじゃくり「ごめんなさい」と繰り返している。女性を轢いてしまった車の運転手も慌てて病院に連絡している。しかしもう手遅れだ。女性は亡くなっているだろう。
見て見ぬ振りをするのは辛い。でもこれは運命だとその場を立ち去ろうとする。
その時、子供が大きな声で「ママー!ママー!僕が助けるから!」と必死に心臓マッサージをしていた。まだ3歳になっていないだろう子供が一生懸命女性の心臓マッサージをしている。周りにいた若い女性が子供と代わり心臓マッサージをする。しかし女性はうんともすんともしない。
「誰かお医者さんはいませんか?」
若い男性が野次馬が集まるところで声が枯れるほど声を掛けている。でもその野次馬の中には医者などいない。
「どうして救急車が来ないんだ!」
女性を轢いてしまった運転手は、早急に病院へ電話をしたが、一向に救急車が来ない。病院が多くあるこの場所だから呼べばすぐに来るはずだ。しかしたった5分間では流石に来ることはできない。そして救急車は10分以上も到着しないことが分かっている。この日は近所のお祭りで道路が通行止めになっているから、救急車も来るのに時間が掛かってしまう。
「僕もママのとこへ行く!」
泣きじゃくりながら子供は車通りが多い道路の方へ歩き始める。誰も子供の急な行動に対応できず、子供も轢かれてしまう。

この光景を私は何度も見てきた。
私は見ず知らずの女性を助けるために何度も5分間タイムリープをした。しかし何度助けようとしても同じ結果になってしまう。
野次馬の中から医者を探すことも、心臓マッサージで蘇生することを願っても女性は助からない。辿り着いた救急隊の方は見ただけで亡くなっていることが分かる状態だった。だから私はもう過去に戻ることをしないと決めていた。
女性が亡くなって、後を追って子供も亡くなる。起きてしまったことはもう変えることはできないようだ。私の能力は無力だ。だから私は何もしなかった。ただ私が何もしなかったら何か変わるかもしれないと最後の最後に過去に戻って見ていた。しかし何も変わらなかった。女性が轢かれないようにする方法はもう何も...
そう思っていたその時、あることを思いつく。私はそんなことをするほどこの女性と子供を助ける意味はないかもしれない。でも何度も助けられなかった後悔を拭うにはこれしか方法はなかった。

私は目を瞑り5分間過去に戻る。ゆっくりと目を開けると、まだ私の目の前には女性と子供が立っていた。よかった。まだ間に合った。
「ちょっと!」
女性は急に車通りの多い道路に飛び出した子供を追いかけようとする。その女性の声で子供は振り向き立ち止まってしまうんだ。それを知っている私は女性が車の前に飛び込む前に子供を追いかけ、車の前に飛び出す。そして車に轢かれないようにと子供を突き飛ばす。
その時、急に出てきた私を車は避けきれず、車は勢いよく私にぶつかってくる。痛いってもんじゃない。息もできないほど苦しい。そして何処からか血が出ているのかドクドクして熱い。ただ私の目の前に飛び込んでくる光景には女性が生きていた。よかった。過去を変えることができたじゃないか。
私の能力は無力じゃなかった。たった5分間しか戻ることのできないタイムリープ。それでも私は役に立ったんだ。
私は目を閉じゆっくりと余生を楽しもうとした。あんなことやこんな事があったな。最後は子供を助けて死ぬってのも良いじゃないか。そんなことを考えていると、遠くで女性が泣き叫ぶ声が聞こえてくる。
私のために泣いてくれてるんだ。そう私は思っていた。しかし女性は私に声を掛けているには少し遠すぎる気がして、何とか残っている力を振り絞り女性の姿を見た。すると女性は私が助けた子供のもとにいた。私は子供が助かり喜んで泣いているのかと考えたがそれにしては声が震えている。
「救急車!救急車を呼んで!頭を強くぶつけて息してないんです!」
私の耳に飛び込んできた言葉に絶句する。私が子供を助ける時、突き飛ばした勢いで子供は頭を強くぶつけてしまったのだ。
こんなはずじゃなかった。私はこのままでは死んでも死に切れないともう一度5分間過去に戻ることにした。過去を変えることはできた確信がある。だから私は何度でも戻って女性も子供も助かる未来を創ることを自分に誓った。


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