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W・アーム・スープレックスさん

性別 男性
将来の夢
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時代錯誤の侵略

16/12/28 コンテスト(テーマ):第97回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:738

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「ちょっとまってくれよ」
と、月刊SF編集長は、憤るというよりなかばあきれた顔つきで、その写真をもってきた青田という社員をにらみつけた。
その写真には、読者からメールで送信されてきた未確認飛行物体が映し出されていた。
そこには、ソフト帽よろしく、丸みをおびた胴体のまわりを鍔状のリングがとりまいた形の円盤がうつしだされていた。
「これって、1950年代にさかんに撮影されたいわゆる空飛ぶ円盤じゃないか」
「鮮明にとらえられているでしょう」
「鮮明すぎる写真は信憑性がないって定説をきみも知ってるだろ。そんなことより、こんな旧式の円盤をもちだして、なんのつもりだ」
「なんのつもりって、これ、UFOの投稿写真ですよ。次回の雑誌に掲載してみては」
「ぷっ」
編集長はたまらずふき出した。
「きみ、この業界に勤めて何年だ。映画の世界でさえ、登場するUFOはみな飛躍的な進化をとげているというのに、こんな時代遅れの円盤なんかもち出したら、みんなから笑いものになるぞ」
青田もそれ以上反論できなかった。たしかに、この写真にうつっているUFOの型は、あまりにもふるかった。添付されていたコメントには、上空を飛行する姿を確かにみたと断言してあった。ちょくちょく写真を投稿してくるUFOファンの読者のもので、これまではそれこそあいまいで不鮮明なものや、ただの光の点だったりしたのが今回はじめて明確に撮影されていた。それで青田もこれはと思ったわけだが、編集長にいわれてみるとなるほど、いささかこの型は大時代すぎた。
「わかりました、編集長。掲載のほうはひとまず中止にします」
それからいくらもたたないあいだに、各地でUFOが目撃されるようになり、編集部に送られてくる写真や動画をみると、やはりあの、写真とおなじ型のUFOだった。
青田は、それらの動画を何度もみたが、その飛び方がいかにもワイヤに吊るされたような感じで見た目にもふらふらしていた。動画の最中にきこえた笑い声は、どうやら撮影者のものらしかった。
「模倣犯だな」
こんどは青田も、最初から編集長の言葉に賛同した。動画はテレビやスマホでも流れているので、多くの人々が目にしているはずだ。真似をする者もでてくるだろう。真面目にとりあつかう局はほとんどなく、たいていバラエティ番組か、その手の超常現象をあつかう非科学的な番組枠にくみこまれていた。いってみれば青木の社がだしている雑誌も、同じ穴のむじなといえないことはなかったが、そのむじなでさえとりあげられないほど、円盤はその型、その飛び方とも、あまりにも旧態依然のしろものといえた。
「もしかして、円盤のなかには、あのタコ型宇宙人が搭乗しているんじゃないだろうな」
それは当然、冗談のつもりで編集長はいったつもりだった。
だがそれからいくらもしないうちに、青木のもとに送られてきた読者からの動画にうつしだされていた映像は、まぎれもなくそのタコ型宇宙人だったのだ。
「いくら読者だからといって、ふざけるのもいい加減にしろ」
さすがの青木も、これには憤慨した。
どこかの家の裏山を背景にして、いまその何本もの触手をねちねち動かしながら、タコのような生き物が山道からおりてくる光景がうつしだされていた。
編集長もいまでは、怒るのをとおりこして笑いだしていた。
「一昔前、英米で発売されたハードカバー本の空想科学小説版だな」
「昔は本当に、こんな宇宙人がいると、人々はおもいこんでいたのでしょうか」
「諸外国ではタコは、悪魔の象徴だから、侵略者の姿にかさねあわせたのだろう」
いまでは宇宙人といえばあの、目の黒く大きな、手足の極端にちいさい、貧弱な体の生き物が通り相場になっている。こんなタコは論外だが、宇宙からの侵略者がモンスターまがいの姿をしていると思われていたのは、もう何十年も昔の話なのだ。
「このところ、この動画の視聴回数がすでに何万回となっているようです。案外身近でも目撃されているようで、都会のまんなかや、道路脇などを移動しているところなんかも、多くのドライバーたちがみているらしいですよ」
「それはきっと、着ぐるみをきた人間の仕業にちがいない。そのうち、ブームもしずまるだろう。なんならきみ、宇宙人を捕獲してみないか」
「よしてくださいよ、編集長」
青田と編集長は顔をみあわせ、声をあげて笑った。
そのかれらのいる部屋のドアが、ふいにあいて、赤味をおびた触手のようなものが、なみうちながらのびてきた。
まもなく、なめらかな光沢をおびた胴体が、床のうえを這うようにしてあらわれた。触手は十本以上あるだろうか、うねうねとくねりながら、こちらにむかってのびてくる。
編集長と青田は、それをみて、いっそう大きな声でわらいだした。半世紀以上まえに流行したタイプの宇宙人をみて、だれが驚いたりするだろう。
なおも笑い続ける2人の胴体に、ねちねちと触手がからまりだした。
かれらはそれでも、まだ笑っていた。
このような光景はいま、世界中のいたるところで展開していた。宇宙の彼方から飛来した侵略者たちは、こんなに侵略がスムーズにいくとは夢にもおもってもいなかった。地球人の誰ひとり、抵抗ひとつするどころかみな、笑みをうかべてむこうから抱きついてきたりするものさえいた。
そんな人類たちをまえにしていると、なんだか自分たちが、場違い、見当違いな存在にさえおもえてきたが、それでも、侵略はすすめてゆく。



                                    




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