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タキさん

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性別 男性
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座右の銘 風船じゃなく、自分の翼で飛べ

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火の国の宝剣

16/12/26 コンテスト(テーマ):第124回 時空モノガタリ文学賞 【 五分間 】 コメント:1件 タキ 閲覧数:1138

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「火の国の宝剣、敵を討て」と叫ぶのだそうだ。そんな恥ずかしい事出来るわけない。ただ神社に参拝していただけなのに。夢でも見てんのか俺、と考えているうちに事態は切迫した。轟音と共に目の前で神社の本殿が倒壊したのだ。

「千載一遇のチャンスを。ばか!」

【弐】と名乗った女が恨めし気に言った。ツリ目の美人だが、片目に大きな傷がある。巫女の装束だ。

「やつがこちらに気づいた」

頭上から声がしたと思うと、羽根をまきちらしながら女が降ってきた。【参】と名乗った細身細面の女でこちらも巫女の恰好だ。

「どうしよどうしよ」

大きな目におかっぱ髪の小柄な女の子が慌てる。【四】と名乗りやはり巫女装束。

「ご主人」糸目で柔和な顔の【壱】がおっとりと言った。「一度離れましょう。危険です」

危険てなにが、と訊ねる間もなく、体当たりしてきた【四】に突き飛ばされた。小柄な少女なのにすごい勢いだった。自分が立っていた場所にスッとつむじ風が走ったと思った瞬間、轟音が響き地面がえぐれた。ぱつん、と簡単な音がして【四】の体が爆ぜた。
凍り付いたように固まっていると、【弐】が両手で俺の顔を挟み込み、真剣な顔で言った。

「逃げるよ」

【参】に体を掴まれたと思った瞬間、宙に浮いた。自分の居た神社があっという間に眼下で小さくなる。高所の恐怖で体が固まるが、それ以上に飛んでいる事に驚いた。

…参拝していたら突然頭に神様の声が響いたのがほんのついさっきの事だ。

「あなたは選ばれました。災いなす悪しきものを討つ戦士に」

なんでおれ?

「ちょうど1000万人目の参拝者だったので」

そして俺の前に現れたのが、【壱】【弐】【参】【四】の巫女たちだ。災厄と戦う手助けをする為に志願した、と言った。
戦いといっても、たまたま1000万人目に当たった素人に頼むような仕事だけに、簡単な内容だった。祀られている【火の国の宝剣】を手にして叫ぶだけらしい。
神社の本殿が倒壊してさえいなければ。
突然目の前に現れた巫女たちに驚き、宝剣を手に取って叫べと言われてもなー、と苦笑しているうちに【弐】の言う千載一遇のチャンスを逃した。
まさか宝剣ごと神社が崩れ落ちるとは。
危険な任務だったのだ。【四】が居なければ、タチの悪い夢と思ったままあっさり死んでいた。

俺を抱えて飛ぶ【参】が、無表情な顔でじっと見つめている事に気づいた。小学生の頃は空を飛ぶのが夢だったっけ、となぜだかふと思い出した。
荘厳な山脈と田に囲まれた広大な神社の境内を見下ろす。足元で巨大な黒い蛇がうごめいていた。あれが災厄らしい。神社を、【四】を吹っ飛ばしたのもヤツだろう。
蛇が鎌首を上下に振った刹那、カマイタチのような衝撃波が【参】の体を引き裂いた。【参】が俺の体から手を離したのはギリギリのタイミングだった。
ぱつん、と頭上で【参】が霧散する音が聞こえ、俺の体は落下していった。地表に激突寸前で柔らかなものに受け止められた。にやりと笑った【弐】だった。

「まだか?」

倒壊した本殿跡で懸命にガレキを掘り起こす【壱】に、【弐】が訊ねた。

「もうちょっとです」

バキバキと音をたてて木や建物をなぎ倒しながら、巨大な蛇が目の前に現れた。
【弐】は唐突に俺の顔に自分の顔をこすりつけるような仕草をした。イタズラっぽく笑うと、雄叫びをあげながら蛇に飛び掛かっていく。

「ありました」という声と、蛇の巨大な口が【弐】の体を引き裂くのは同時だった。
半分になった【弐】を咥えた蛇の虚ろな瞳が俺を捉える。恐怖で全身が硬直した。
ふと暖かい手が俺の手に重なった。寄り添うように【壱】が立っていた。

「ありがとうございます。ご主人様」その優しい声で金縛りは解けた。

「弐はあなたのツナ缶のおかげで、冬を越せたそうです。ずっと昔の、あの公園で」

蛇を見据えながら【壱】はつぶやいた。

「参はあなたが小学生の頃に飼っていた文鳥です。大事にしてもらったと言ってました」

「四は、もう覚えていないかもしれませんが、子供の頃あなたが助けた雨蛙ですよ」

「そして私は…」

【壱】は軽く握った手を俺の肩にポンと載せた。涙のにじんだ糸目が笑みを作る。

「また一緒に散歩したかった」

言い残した瞬間、【壱】は疾風のような勢いで蛇に向かっていった。巨大な体に飛び掛かり、噛みつく。
俺は倒壊した本殿に走る。ガレキの隙間から美しい意匠の日本刀が見えている。それを掴んだ瞬間、悲鳴が聞こえた。そして何かが弾ける悲しげな音。
振り返り、蛇をにらむ。
もう何の迷いもためらいも無かった。どんな事でも信じられる。
ありがとうだって? 礼を言うのはこっちのほうだ。
たった五分間の冒険と再会。
巨大な蛇に、俺は万感の思いを込めて叫んだ。

「火の国の宝剣、敵を討て!」


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このストーリーに関するコメント

17/01/20 タキ

落選後の反省と分析。「突飛な始まりと強引な展開。【5分間】である意味も薄く評価が低いのも納得。でも、2000字の枠内で、【自分が一番好きなのはこういうの】と思って書いた。自分の感性はズレてるのかも。もし一人でも『こういうのも悪く無いよ』という方が居たら救われます」

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