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黒猫千鶴さん

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五分間だけの再会、その後の一生

16/12/25 コンテスト(テーマ):第124回 時空モノガタリ文学賞 【 五分間 】 コメント:0件 黒猫千鶴 閲覧数:1035

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「誰か――助けて!」
 女性の悲鳴が訊こえた。僕が駆けつけると、サル顔の男が、可憐な女性の腕を掴んでいる。
「彼女から手を離せ!」
 片手を前に出して、大きく胸を張り、ポーズを取る。
「僕はあなたの正義のヒーロー、あなたの悲鳴を訊いて駆けつけた!」
 いつだったか、こうして人を助けた気がする。あの時、助けたかった人は彼女にどこか似ている?
 あれは、いつのことだっけ……?
「助けて!」
 目の前の女性は、僕に手を伸ばした。奥歯を噛み締めて、地面を強く蹴り上げる。拳を作り、大きく振りかぶった。
「うおぉっ!」
 僕の右ストレートはサルの顔面に直撃する。彼は驚きで目を見開いて、そのまま地面に倒れ込んだ。
 見たか、僕のスペシャルダイレクトパンチ!
 反応出来ずにいた男に、続けて下から跳び上がるように頭突きをした。男の顎に直撃。ついでに僕の頭も痛い。
「……ひぃっ!」
 男は情けない声を上げて、慌てて逃げ去って行く。
 僕と彼女は呆気ない幕引きに、目をぱちくりとさせた。お互いの顔を見合わせると、クスリと笑う。
「まあ、こんなもんさ!」
 仕事を終えた次の瞬間――銃声が響いた。
「へっ?」
 目を丸くしていると、いきなり男が現れた。
 拳銃と黒い革のカバンを持っていて、黒の覆面をしている。息を荒くして、二つの穴から見える瞳は、血走っていた。一目で強盗犯だとわかる。その人は僕の目の前で止まり、その後ろには彼女が立っていた。
「何だよ、文句あんのか!?」
 突然現れて文句あるのかはないだろう。
「まずは落ち着こう、お兄さん!」
「落ち着いてください!」
「うるせえっ! 俺に指図するなっ!」
 この言葉がいけなかったのか。男は僕に銃口を向けて、引き金に指をかけている。
「退けっ!」
 邪魔をしている訳じゃないし、退けろも何もない。それなのに覆面男は、僕らが悪いみたいに言う。
 再び、銃声が響いた。
「……っ、うぅ……」
「……え?」
 覆面男の銃は、僕に向けられてた。眉間に押し付けられていた。それなのに苦痛の呻き声を上げているのは、僕じゃない――彼女だ。
「なんで……」
 振り返ると、彼女は蹲っている。その下には血溜まりが出来ていた。
(この光景……いつか見たことが……)
 覆面男は僕を通り抜けて、彼女に向かって行く。
「ま、待て……」
 手を伸ばすと、激しい頭痛が起きた。
「う……ぐっ!」
『助けて――』
(あの時、助けることが出来なかった……)
『お願い、やめて――』
(今度は……助けたいんだ!)
 覆面男が拳銃を彼女に向けて、引き金に指をかける。
 彼女の下には赤い水溜まりが広がり、小さな声を上げた。
「助け、て……」
 あの時と同じ言葉を耳にした。
 僕は奥歯を噛み締めて、拳を作る。勢いよく立ち上がり、地面を蹴った。
(今度こそ、助けるんだ! 僕の力で――)
 僕の雄たけびを訊いて彼女と覆面男が、こっちを見る。二人は同じ顔をしていた。いつ現れたのか、そう言いたそうな表情をしていた。
 目の前にノイズが走り、昔の光景が広がる――彼女は数人の男に囲まれている。お腹を蹴られたり、髪を引っ張られたりしていた。
「やめろぉっ!」
 あの時イジメから助けられなかった。だから次は、助けるんだ!
 僕の拳は覆面男の顔面に入り、鼻の骨が砕けた音がした。そのまま腕を振り切ると、覆面男は地面を転がる。
「はぁはぁ……」
 肩を上下に動かすと、彼女が僕の足を掴んだ。あまりにも弱々しい力で。今にもなくなってしまいそうだ。
「やっと……助けることが出来た」
「そんなこと、ないよ……」
 彼女は首を横に振る。
「あの時も、いっ君に助けてもらった……だから、私はこうして生きてこれた」
 声が震えている彼女を僕は、抱きしめた。
 彼女の血が止まらない。どうしたらいい? 僕は何をすれば――
「これで、いっ君と同じところに行けるかな?」
 彼女の言葉があまりにもか細い。
(ダメだ、君が死んじゃいけない……)
 僕は君を守りたいんだ! 誰よりも大切で、大好きな君を――
「私も大好きだよ――ありがとう」
 僕に触れていた彼女の手が、通り抜ける。それでも僕は抱きしめた。
 たった五分間だけど、久々に彼女と会話も、守ることも出来た。
 生きている時は話すことが出来なかった。遠くから見守っているしか出来なかった。あの時、出した勇気はムダじゃなかった。
 どうか……誰か、彼女を助けてください。
「いっ君」
 懐かしい声がして、振り返る。僕は涙を流した。
 守りきることが出来なくて、ごめん。
 そう伝えると、彼女は優しく微笑んだ。
 そんなことないよ。
 彼女は答えてくれた。僕の手を掴んで、一緒に歩き始める。改めて決意をした。
 僕はこの先、何があっても守ってみせるから――


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