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ゆきどけのはるさん

こちらのサイトでは短編を主に執筆予定です ホラー、アクション、グロをよく書きますが、気ままに書いていきたいと思ってます。 Twitter @HrhrKoharu

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蹴落とし引き摺り上に立つ

16/12/21 コンテスト(テーマ):第125回時空モノガタリ文学賞【優しさ】 コメント:0件 ゆきどけのはる 閲覧数:1108

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「ごめん、この書類なんだけど…」
「いいですよ。いつまでにやっておけばいいですか?」
 先輩から渡された書類は山積みで、私はそれを嫌な顔一つ見せず受取りデスクに向かう。ひたすら与えられた仕事と頼まれたものを捌く。誰かはそれを押しつけられるとか、面倒だとか言ったりもするが私はそうは思わない。
 もらえるものは借金以外ならもらう。頼まれたら断らずにやる。それは学生時代からそうしてきた。
 例えば宿題をやってこなかった子がいたとしよう。私は言われればそれを見せた。
 例えば授業中に寝たいからノートをとっておいて、と言った子がいたとしよう。私はそれを引き受けた。
 例えば遊びに行きたいからと言って掃除をやっておいて、と頼んだ子がいたとしよう。私は綺麗に掃除をした。
 それを見ていた周りの人間は私を使える、とさぞ笑ったろう。仲間外れにならないよう必死なんじゃないかと嘲笑っているだろう。気にもならなかった。上っ面ばっかりの友達なんていらなかったし、互いに互いを蹴落とす友達なんていらない。
「いつもごめんね! でも本当にありがとう、優しいよね」
 私はにこやかに笑う。優しさを勘違いしている彼女たちは、これが優しさではないことにいつ気付くのだろう。いや、一生気付かないだろう。彼らも彼女たちもこれが優しさだと言えるのはきっと、人間を分かっていないからだ。
 私が思うに、あくまで自論にはなるが。私は優しくなんかない。どちらかというと酷い人間だ。こうして怠けて堕落していく彼ら彼女たちを見て内心ほくそ笑んでいる。馬鹿だなあ、と嘲笑う。
「自分でやらなきゃダメだよ!」
 クラスに一人はこういう人間がいる。これが優しい人間だ。それを知らずに口煩いだとか、いい子ぶっているだとか言っている皆は、きっと私が何でもかんでも引き受ける理由を1つも知らないのだろう。
――宿題を見せて?
 ああ、勿論。これで君の頭は悪くなっていく。
――ノート写しておいて?
 ええ、いいよ。そうすれば授業分からなくなるのでしょう。
――掃除やっておいて?
 引き受けますよ。貴方は掃除が下手糞になってゴミ屋敷に住むのだから。
 私は見下しているのだ。人を頼る人間を。自分の為に頼る人間を。もっともっと出来なくなればいいと、引き摺り落としているのだ。テストの点数が下がった彼らを見て、先生がやって来て掃除の仕方が分からないと慌てる彼女たちを見て、仕事が遅いと怒られる上司を見て、私は優越感に浸っているどうしようもないクズなんだよ。
「これとこれもいいかなあ?」
「ええ、いいですよ」
 嫌がらせで仕事を持ってくる同僚。自分は定時で帰れて幸せだと勘違いしているようだが、本当に頭が悪い。誰が何の仕事をやっているのか分からないほど上司も無能じゃない。結局私のところに全てまわって来るのだから、と仕事があいつは減らされているのに気付いていない。給料も私が上回っているのも、気付いていない。
 それでいい。そのままでいてほしい。上司に媚売って女のくせに出世狙いやがって――そうずっと思ってていい。嫌がらせはやめないでいい。最終的に私が上になって、ボロ雑巾になるまで使ってやるのだから。
「優しさを履き違えて身を滅ぼせばいいんだよ」
 そうすれば上に立つのは私だから。
 誰もいない社内で一人笑う。


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