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ichiさん

「時空モノガタリ」とても楽しい…!

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クリスマスプレゼント

16/12/19 コンテスト(テーマ):第123回 時空モノガタリ文学賞 【 クリスマス 】 コメント:0件 ichi 閲覧数:752

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   電車内。並んで座っている千佳と貴夫。手を繋いでいる。
千佳「クリスマスだねー!」
貴夫「(興味がなさそうに)あーそうですねぇ」
千佳「そうですねって、クリスマスだよ? 街はきっと煌めいているよ! どこか行こうよ」
貴夫「え、何でですか?」
千佳「何でって…クリスマスは恋人と過ごすのが普通じゃない?」
貴夫「あーそういう考えは1ミリもなかったです」
千佳「1ミリもなかったの!? 1ミリも!? 私たち付き合ってるよね?」
貴夫「はい。ですが、恋人だからクリスマスを一緒に過ごすのが普通というのは、千佳さんの偏った考え方ですよね。世の習わしのように言いましたが、僕はそんな風習は知りません。僕が無知であるなら、申し訳ないとは思いますが…。でも、千佳さんも分かっていると思いますが、中卒元ヤンでフリーターの千佳さんと国立大経済学部卒で起業家兼歯科医の僕のことを考えると、僕の言っていることが正しい可能性の方が高いかと」(※笑いどころ)
千佳「そこまで言う?! 確かに、それが普通ってのは言い過ぎたけどさ…でもデートしたいじゃん! なのに、何で仕事──」
貴夫「この列車で」
   千佳、え? と貴夫を見る。
貴夫「デートではないですけど、一緒にどこかへと向かっているじゃないですか」
千佳「貴夫くん…(トクン)」
男の声「公共の場でいちゃついてんじゃねぇよ!」
貴夫「あ、あなたは…(目の前に立つ男を見上げて)車掌さん!」
千佳「邪魔すんなよ、やんのか(立ち上がる)」
車掌「上等だコラ!(懐から拳銃を出し)」
   バンッバンッバンッと立て続けに発砲音が響き渡り、その場に血を流して倒れ込む千佳。
貴夫「(駆け寄り)千佳さん!? 千佳さん!?(半開きの口を見て)あ、銀歯取れてる…」


「待て待て待てぃ!! 何なの、この破綻した脚本は!?」
 稽古場の控室で亜紀は叫んだ。
「どうしたの?」
 目を上げると、呼んでいた台本を亮が横から覗き込んでいる。
「今度のオーディションの台本、ちょっと読んでよこれ、酷いから!」
 亮は亜紀の横に座り、パラパラと台本を捲った。
「…うわホントだ。これなに、コメディ? サスペンス?」
「それが切ないラブストーリーって言われてマネージャーから渡されたの」
「えー!? タイトルがクリスマスの悲劇って、悲劇というより喜劇だし、いや──」
 亮は何と表現したらいいのかと顔を顰めた。
「特にラストが意味わかんないの。まず、脚本に自分で(※笑いどころ)て! 書いちゃうってどういうことよ!」
「確かに、痛いね…そもそもこの主役二人の人物設定が意味分からないんだけど、国立大経済学部卒で起業家兼歯科医とか…実はなんか意味あるの?」
「いや、違和感しかないよ。あえて言えば、最後の銀歯取れてるのを見つけちゃうくだりぐらいかな…」
「それ絶対、後から無理やり歯科医って設定つけたパターンだよね」
「うん、おまえ闇医者かよってなる」
「あと、千佳の(トクン)って何だよって感じだね。表現は置いといても、なぜそこでときめく?」
「そうなの! 今までの流れからも伏線もないし、仕事って言ってるし、全くときめく要素ないの!」
 と激しく同意し台本にチョップをおみまいする。
「これまた意味不明なラストの千佳が銃で撃たれる急展開なんだけどさ…もしかしてだけど、車掌さんってこのシーンが初登場?」
「いや…」
「あ、じゃぁそこはなんか今までに千佳たちと因縁があったりしたんだ?」
「いや…1回当たり障りないシーンで普通の車掌として出てきたけど」
「そういうあれはないんだ…」
「うん…」
 なんとなく残念な空気が流れて二人は押し黙る。
「亜紀ちゃんこのオーディションいつなの?」
 亮がそれを断ち切るように、努めて明るい声を出した。
「25日。クリスマス。千佳役で受けるんだけど、全然入って来ない…唯一共感できたの、クリスマスは恋人とデートしたいってとこだけ」
「うわーまさにクリスマスの悲劇だ」
「ほんとだよ、クリスマスに何でこんなオーディション…受けるの止めようかな…演技でも貴夫にときめける気がしないし」
 と亜紀は苦笑した。
 亮は亜紀の手をさっと握り、
「じゃ、俺が貴夫役やるから練習しようよ。この列車で──」
「え?」
「デートではないですけど、一緒にどこかへと向かっているじゃないですか」
「亮くん…(トクン)」

──『クリスマスの悲劇が生んだ希望』




 「向き」・「不向き」と書かれた二つの段ボール箱。

 プレゼントの仕分けをしていたサンタクロースは、読み終えると溜息をついてその本をそっと閉じるとともに目を伏せた──と思いきやカッと見開き、プロ野球選手のような俊敏な身のこなしで、「不向き」と書かれた段ボール箱へ思いっきり投げ入れたのだった──。


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