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この男

16/12/19 コンテスト(テーマ):第125回時空モノガタリ文学賞【優しさ】 コメント:0件 りんご◯ 閲覧数:827

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私は、どう足掻いても、この男の一番にはなれない。
そして、どう足掻いでも、この男を嫌いになれない。

呼び出されるのは、彼女と喧嘩した時。
彼女が旅行している時。
…彼女が他の男と会っている時。
この男の世界は、全て彼女を中心に回っているのだ。
「明日も来て」
「…ごめん、明日は…」
「何、男?」
「…ちが…」
「じゃあ、来て」
「…」
どんなに無茶苦茶な要求でも、聞こうとしてしまうのは、私にもこの男にとっても良くないことなのだろう。
「…じゃあ」
送ってもらったことなんて、一度もない。
玄関までですら。
「…」
誰も送ってくれない玄関で、履くのに時間がかかる靴なんて履きたくない。
私はいつしか、ほぼスリッパのような靴でこの男に会うようになった。
この男は、脱がせるのに時間がかかる服を嫌う。
私はいつしか、ペラペラのワンピース1枚でこの男に会うようになった。
私の世界は、全てこの男を中心に回っているのだ。

「けほっ、けほっ…」
「何、風邪?」
「…ちょっと…」
「うつすなよ」
こんな時まで呼び出す男。
最低だって思ってるのに。

目を覚ますと一人だった。
冷たい布団。
風邪のせいだろうか。
水でも飲もう、そう思った時。
ガチャ、と開いたドア。
手に握った箱と水。
「なんだ、起きたのか」
「…何、それ」
「…ん」
差し出された風邪薬。
不器用なこの男なりの優しさなのだろうか。
ああ、やっぱり私はこの男を嫌いになれない。


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