蹴沢缶九郎さん

どうもはじめまして、蹴沢缶九郎と申します。暇つぶしに読んで頂ければ幸いです。「小説家になろう」でも同ニックネームで掌編小説を書いてます。http://mypage.syosetu.com/707565/ よろしくお願いします!!

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1LDKC

16/12/19 コンテスト(テーマ):第125回時空モノガタリ文学賞【優しさ】 コメント:0件 蹴沢缶九郎 閲覧数:562

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一人身の男が新しい部屋を探しに不動産屋へやって来た。男を迎え入れた担当者は、男の希望する物件の条件を聞き、一件の物件を紹介した。

「お客様の希望を満たす物件となりますと…、こちらの部屋などはいかがでしょう? 最近入ってきたばかりの優良物件です。駅から徒歩三分、近くにスーパーがあり、家賃は六万円と相場よりお安く、なにより新築アパートの1LDKCです」

「新築か…、良いね」

男は満更でもない様子で部屋の間取り図を見ていたが、そこでふと気になった疑問を担当者に聞いた。

「1LDKはわかるのだが、この『C』というのは何だい?」

「やはり気になりますか…。お教えしてもよろしいのですが、敢えて知らずに過ごす、そんな暮らしも一興と思います。あれは一体何なのか? と考える事に意味があり、そこに絶えず微妙な緊張感が生まれ、生活に張りが出るというものです。まあ、お客様がどうしてもと仰るのであればお教え致しますが…」

担当者の含みを持たせた言葉が引っ掛かりはしたが、新築で家賃も安く、自身の条件は満たしているのだ。変な事故物件を紹介されるよりはよっぽどいい。それに、不思議と担当者の言う事も一理あるような気がした。

「…よし、わかった」

男はその部屋に決めた。手続きや引っ越しを数日の内に済ませ、男の新たな部屋での新たな生活はスタートした。暮らす始めこそ『C』の存在が気になりはしたが、住んでみるとなんて事はない普通の部屋なのだ。

「答えを知らずに微妙な緊張感の中で過ごす暮らし」

あの担当者、上手い事を言ったものだ。ひょっとすると、『C』は不動産屋だかオーナーの遊び心という事もありえる。それならばそれでいいし、いざとなれば答えを不動産屋に聞けばいいのだ。

日々は過ぎていく…。忙しい暮らしの中で、男はいつしか『C』の存在を忘れていった。
ある日、仕事から帰った男の胸を急激な痛みが襲った。男は苦しみに胸を抑え、電話で助けを求めようとしたが、叶わずその場に倒れ動かなくなった。

男の生体反応が消えた事を感知した部屋は、住人に目立たぬようひっそりと、オーナーの優しさで備え付けられた長方形の箱を自働で出現させ、そこに男の遺体を収容した。

1LDKCの『C』は『COFFIN』、棺桶だったのだ。


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