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葵 ひとみさん

「フーコー「短編小説」傑作選8」にて、 「聖女の微笑み」が出版社採用で、出版経験があります。 第114回 時空モノガタリ文学賞 【 パピプペポ 】最終選考を頂きました。 第116回 時空モノガタリ文学賞 【 裏切り 】最終選考を頂きました。 心からありがとうございます。 感想、心からお待ちしています^▽^ Twitter @Aoy_Hitomi

性別 男性
将来の夢 毎日を明るく楽しく穏やかにおくります。
座右の銘 白鳥の湖、努力ゆえの優雅さ――。

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ネパールの優しさ

16/12/19 コンテスト(テーマ):第125回時空モノガタリ文学賞【優しさ】 コメント:0件 葵 ひとみ 閲覧数:601

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「……それで、御話のつづきなんですけど」とその若い女性は再び饒舌に喋りはじめた。

「とにかく素晴らしい才能のある方なんだけど、ものすごく変わった方なんです」

「なるほど」

「倉敷美術工芸繊維大学に半年ほど通ったんですけど、大学で講義を受けるカリグラフィーなどをはじめ全てにどうにも納得がいかなくて、そこを中退して、船員としてスリランカ行きの貨物船にのりこんだそうなんです。ロザリオだけを握りしめて……」

「うん」

「……でも貨物船がインドについた時に、たまたま飲んだバング・ラッシーで赤痢に罹患して、船に乗れなくなったそうなんです。そしてツンドラのホスピタルに3ヶ月ほど入院していたらしいんですけど、彼はインドに取り残されてしまったそうなんです」

「それは大変だ」

「……でも焦たって仕方ない……ってわけで、彼はツンドラに腰を据えて、生活のために
ツンドラのホテル・クンブメーラのレストランでシタールと横笛とパーカッションのアンサンブルの生演奏にのってヴォーカルをはじめたそうなんです。
彼はすごく歌がうまいそうですから。あの唄は一聴の価値はあるそうなんです」

「才能あるんだ」

「そうこうするうちに、あるギリシャの海運王の億万長者が彼を見いだして、
自分は貴族客船をもっていて世界中をまたにかけて旅行しているんだが、
そこのレストラン・ロートシルトの歌手にならないか?って話を持ちかけらたれそうなんです」

「とってもおいしい話じゃないか」

「ところが本当はそうでもなくて、そのギリシャの海運王とは名ばかりで貴族という名目で、貴族客船はノーチェックだったそうですから大量の覚醒剤をフランスのマルセーユから大陸に麻薬を運ぶ密輸業者だったそうなんです、本当にとんだ食わせ者です。
彼はここから一刻も早く逃げ出さねばと思ったらしいんですが。
……でも、それがわかったのはキプロス島まで約7q……おまけに貪欲な鮫もうじゃうじゃいる」

「絶体絶命だね」

「……でも、彼は水泳だけがスポーツで得意だったそうですから、パスポートと身銭をビニールに包み込んで夜中に海に飛び込んでキプロス島の海岸まで泳いじゃったそうなんです」

「強靱なサヴァイバル能力だね」

「それから、彼はシリアに渡航してイラク、ペルシャ……いえ今のイラン、パキスタン、再びインドを鉄道で乗り換えながらネパールに辿りついたそうなんです、何度も異教徒という理不尽な理由で殺されかけながらも……」

「素晴らしい」

「5年、彼はネパールのカトマンドゥの貧困な娼婦宿で彼女たちと寝起きを伴にしていたそうです。
その間にたまたまチャパティの商店で好々爺そのものの仏教指導者とも
偶然に邂逅して親好を深めたとも噂を耳にしました。

そして、日本に帰国したそうなんです。

……でも、彼は日本にうまく馴染めなかったそうなんです。日本の画壇ってすごく保守的なので、異端を凄まじく嫌うのです。

そんな理由で彼は日本の何処かの山葵が自生しているような清流のとても美しい名も知らぬ山奥にひっこんじゃったそうなんです。
今は呼吸法でもあるサンスクリット語でヨガやそこから派生した宗教や思想を伴わない、
骨盤エクササイズの先生もしながら、
ホーリー・バジルなどを家庭菜園などで育てていて、
気の趣くままに趣味で絵画を描いているそうなんです。
そして、彼は東京へは年に2回ぐらいしか上京しないそうなんです。
だから、名前がでないんだと思います。

そんなに素晴らしい才能をお持ちの方に是非、御会いしてみたいんです。

……とにかく特別な人なんです。」

「君にとっても特別な方なんじゃないのかい」

「いえ、御会いしたこともないですから……」

「その人、うにクレソンを嗜みながら日本酒の上善水如の熱燗をチビリチビリと飲んで、上機嫌になると「ロザーナ」を歌いはじめるでしょう?」

「どうしてわかるんですか!?」



「その奇特な方が貴女の目の前にいるからですよ……」


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