1. トップページ
  2. present for you

RNさん

頭の中の小さな世界を、表現し、残したい。 色んな人に読んでもらえたら嬉しいです。

性別 男性
将来の夢
座右の銘 塵も積もれば山となる。コツコツと。前向きに。

投稿済みの作品

0

present for you

16/12/18 コンテスト(テーマ):第123回 時空モノガタリ文学賞 【 クリスマス 】 コメント:0件 RN 閲覧数:791

この作品を評価する

 3年前の冬だった。僕が君と付き合い始めたのは。君と過ごす初めてのクリスマスには、ペアの腕時計をプレゼントした。次の年にはネックレスを。去年は君の左手薬指に指輪をはめた。横浜のみなとみらい。観覧車の中で。我ながらベタベタのプロポーズで今思い出すと笑ってしまう。でもあの時は緊張で胸が張り裂けそうだった。指輪をポケットから取り出して、「結婚して」って出した時、多分僕の手は震えてて、すごくかっこ悪かったと思う。君が涙を流し始めた時は正直戸惑った。え。どうしよう。ってなった。でも君が泣きながら、「はい」って返事をしてくれた時は、本当に嬉しくて思わず叫びだしそうになった。僕の一生で一番幸せな瞬間だった。あの時僕は誓ったんだ、絶対君を幸せにするって。

 サンタさんからのプレゼントかな。神様は僕らの事を祝福してくれて、子供を授かった。今年の2月に妊娠がわかった時は、すごい嬉しかった。君が笑顔で喜ぶ姿を見て、父親になる覚悟も生まれた。生まれてくる子供も元気に笑って生活できるようにする。家族が笑える未来を、僕は作っていくとそう決心した。
 
 今年の8月。僕たちの子供は生まれた。未熟児ですぐに保育器に入ってしまったけど、元気な女の子だった。可愛かった。愛くるしかった。輪郭は僕に似て、しゅっとしていて、まん丸な目と、少し高くて小さい鼻は君に似ている。笑った顔は君そっくりで、この笑顔を絶やしたくないと思った。だから名前は「笑美」にした。僕は親ばかを発揮して、毎晩仕事おわりに病院に来ては、笑美に話しかける。君の事、僕の事、すべてを一つ一つ話した。

 そして今日、12月24日。笑美が保育器から出れるようになった。ミルクも自力で飲んでくれる。元気にすくすく育っている。でも君は病院のベッドで今だに眠っている。

 3月の事だった。君が事故で意識不明の植物状態になったのは。絶望した。これから幸せな生活を君の子供と一緒に送れる、そう思った矢先だった。お腹の中の赤ちゃんの命は奇跡的に助かっていて、まるで、君が命を懸けて守ってくれたように思えた。そのまま、君の中で赤ちゃんをぎりぎりまで成長させて、帝王切開で無事に生まれた笑美。神秘的だった。感動した。奇跡だとしか思えなかった。君は本当によく頑張った。


 でも君は今も目覚めていない。


「奥様は本当によく頑張りました。今夜が峠でしょう」と医師が告げた。
様々な医療器具に繋がれ延命をしているが、君は苦しんでいるのかもしれない。無理をし過ぎた君の身体にガタが来ているらしい。

 病室で意識不明のまま静かに一人眠っている君。話しかけたら、眠そうに目を擦りながら、不機嫌そうな声で「なに〜?」と言ってきそうだ。
「今年のクリスマスプレゼントは何しようか?」と僕が君に問いかける。
君はきっとこう答えるだろう。「あなたがくれるものなら何でも。」と。眠そうに。笑みを浮かべながら。

 
 今の僕が、今の君にあげられるもの。


 ひとつは感謝の言葉。「僕と出会ってくれてありがとう。僕と結婚してくれてありがとう。笑美を産んでくれてありがとう。よく頑張ったね。大変だったよね。笑美は絶対幸せにするから。笑美の笑顔を守り続けるから」

 ひとつはお別れの言葉。「また会おう。それまでゆっくり、休んでて。おやすみ。」
僕は君にそう告げて、おでこにキスをする。


 そして、僕が君にあげられる最後のクリスマスプレゼント。


 それは君からすべてを奪う事。君が一人で苦しみながらこの世を去るというのであれば、僕がこの手で君の命を摘み取ろう。僕は誓ったんだ。あの日、そう、去年のクリスマス。君を幸せにするって。だからもう君を苦しませたくない。終わりにしよう。君からすべてを奪いとってしまうけど、自由というプレゼントを君にあげよう。そして君を苦しみから、人生から解放しよう。

 そしてゆっくりと一つ一つ君の体に繋がる管を僕は外した。波打っていた心電図の線は、直線へと代わり、ピ―――と甲高い音が病室中に鳴り響いた。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン