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鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 そのために、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。 テーマに沿った個別物語の他に、いくつかのシリーズものをコツコツと書き続けさせてもらってます。 その主なシリーズものを紹介させてもらいます。  ☆❤☆❤☆ 新シリーズ 『ツイスミ不動産』 __ 2017.07.16よりスタートさせてもらいました。 カサリンとクワガタ野郎があなたが求める終の棲家を紹介いたします。  ☆❤☆❤☆ 『刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)』 __ 2017.05.21 ただ今、27話 __ 1話完結の2000文字推理小説です。この少ない文字数の中で、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)がいかに事件を解決していくか、その醍醐味を味わって頂ければ、光栄です。 これからも引き続き難しい事件に挑戦して参りますので、よろしくお願いします。  ☆❤☆❤☆ 『漢字一文字の旅』 __2017.04.04 ただ今、連載41__ 漢字にまつわるエッセイです。  ☆❤☆❤☆  『歴詩』 __歴史上の人物になりかわって、その波瀾万丈の生き様の思いを詩に綴らせてもらってます。 本作品については、フォト音(on)小説という形で、you tubeにもUPさせてもらってます。 詳細はこちらHPです。  ☆❤☆❤☆  http://ayukazeyuu.net/index.html  ☆❤☆❤☆                         よろしくお願いします。              

性別 男性
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新エレ幹線 (遠距離恋愛)

12/10/27 コンテスト(テーマ):第十七回 時空モノガタリ文学賞【 エレベーター 】 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:2887

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「拓馬、どうするのよ?」
 佳奈が煮え切らない拓馬にせっついた。そして拓馬は、それにいよいよ結論を出すべきだと覚悟を決めた。
「僕は佳奈と一緒に暮らしたいんだ。だから、天上界から僕が住む地底都市に移って来て欲しいのだけど……、佳奈はどうしたいの?」
 反対にこんな言葉で訊かれた佳奈は下を俯いたままでいる。そしてしばらくの沈黙の後、決意を込めて口を開いた。
「そうだわね、拓馬は通い婚は嫌だろうし、私たち別々に暮らして行くなんて、結婚する意味ないわね。それに子孫を増やすように国から奨励もされているし……、私、今の宇宙船の仕事辞めて、拓馬が住む地底都市に嫁ぐことにするわ」
 これを聞いた拓馬は、胸に熱いものが込み上げてくる。
「佳奈、ありがとう。時々新エレ幹線に乗って、君の故郷の天上界に骨休みに行ってくれても良いからね」

 地底都市から宇宙船への新エレ幹線での移動、これは費用の掛かること。しかし、妻となる佳奈が拓馬の願いに従って決断してくれた。これに対してのせめてもの感謝の気持ちだ。佳奈はそんな拓馬の思いやりを感じたのか、優しく微笑んだ。
「嬉しいわ、拓馬。だけど人類がこんなことになっしまってるって、300年前の人たちは予想もできなかったでしょうね。昔の人から見れば、まるでSFの世界だわ」
「ああ、その通りだね。これが今の僕たちの宿命なんだよ。とにかく家族を作って、未来に向けて人類の血を繋いで行こう」
 拓馬はそう言い切った。そして佳奈の手をしっかりと握り締めた。

 こんな二人の会話と振る舞い、一体どういう事態になっているのだろうか?
 それは約300年前の西暦2020年まで遡らなければならない。
 ある日、衛星放送を通じて、センセ−ショナルに発表された。
 火星と木星の軌道の間にある小惑星帯、その中にデビルと言う惑星がある。2050年にそれは周回軌道を外し、地球に大接近する。そして隕石として落下するであろう。この衝突により地球はその灰で覆い尽くされ、かって恐竜も滅亡した氷河時代に突入する……と。
 このニュースは世界の人たちを震撼させた。しかし、まだ2050年までに30年の時間がある。人類は生き残りをかけて、二つの新天地を求めて移住することとした。

 その一つは地下へと潜り、地底都市を築くことだ。
 そこでは地熱エネルギーで発電し、温暖でかつ光ある世界を創出すること可能なはず。その上に地熱温泉付きだ。
 そしてもう一つは、地球の上空35,786Kmにいくつもの大型静止宇宙船を浮かべ、そこへの移住をするというもの。もちろん重力を得るために回転型で地表と同じ感覚で暮らせる。弱点はスペースが狭いことだ。しかし、毎日眺める風景は星たちが煌めく神秘な大宇宙。まことに美しい。

 地底都市か、それとも天上界の宇宙船か、どちらに移り住むか一人一人にその選択が迫られた。そして拓馬の祖先は地底都市を選び、佳奈の先祖は宇宙船を選択した。

 そして2050年、地球にやはり大きな隕石が落ちた。予測が的中したのだ。もちろん人類はこの極寒の地表では暮らせず、地底と天界に分断されてしまった。しかし不幸なことに、地上暮らしを断ち切れず居残った人たちは凍死してしまった。日本人で生き残ったのは1,000万人だけだった。その1,000万人も500万人ずつ天と地に分かれた。
 
 だがこの離間された二つの世界を結ぶエレベーターが開発された。
 ナノチューブで構成されたものであり、軽くて強い。それが地底都市から天上界の宇宙船へと垂直に何本も繋がった。
 その後エレベーターはますます進歩を遂げ、拓馬と佳奈が生きる2320年、より高速となった。
 かって日本には新幹線という電車が水平方向に走っていたらしい。その高速エレベーター、言葉を換えて言えば、かっての新幹線が垂直に走っているようなものだ。人々はそれを『新エレ幹線』と呼ぶようになった。

「じゃあ、佳奈、もう乗らないと」
「そうね、宇宙船に帰らないとね。またしばらく会えないけど……」
 佳奈が涙声で答えた。そんな佳奈を拓馬はぎゅっと抱き締めた。そして熱いキスを。
 これはこの遠距離恋愛のいつもの儀式だ。新エレ幹線の最後尾のドアの前で、二人は再会の約束をするかのように唇を合わせる。
 ドアーがシュワーという音とともに閉まった。窓の向こうの佳奈が口を開き、何かを言ってるようだ。拓馬にはそれが聞こえない。しかし、佳奈の口の動きでわかる。
「お・よ・め・に……い・く・か・ら」と。

 これに対し、拓馬は男の決意を込めて、ひと言ひと言しっかりと口を開く。
「き・み・を……し・あ・わ・せ・に……し・て・み・せ・ま・す.」

 佳奈が乗った新エレ幹線、その後すぐに軽快な音とともに……上へ上へと昇って行ったのだった。


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このストーリーに関するコメント

12/10/27 草愛やし美

鮎風 遊さん、拝読しました。

未来がこんな遠距離恋愛になるなんて……。
有り得るかもと思うと、ちょと複雑な気持ちになりますが、いつの時代も若者たちの愛は素晴らしいですね。個人的に過去からですが、エール送りたいです。

12/10/30 そらの珊瑚

鮎風さん、拝読しました。

最終新幹線がシンデレラ・エクスプレスと呼ばれ
別れを惜しむ遠距離恋愛の恋人たちが別れを惜しむ場として
登場したのはバブルの頃だったでしょうか。
バブルとは比べようもないほどのものがはじけてしまったあとの地球でも
やはり同じように人が愛し合っている風景はいいものですね。

12/10/31 泡沫恋歌

鮎風さん、拝読しました。

天上と地底とトンデモナイ遠距離恋愛になっちゃうんですね。
こんだけ生活空間がかけ離れていては、同じ文化を共有するのは
難しいと思います。

未来のロミオとジュリエットが幸せになりますように。

12/11/08 鮎風 遊

草藍さん

コメ、ありがとうございます。

いつの時代でもいっしょかな、愛する気持ちは。

12/11/08 鮎風 遊

そらの珊瑚さん

今も東京発新大阪行きの最終。

最後尾のプラットホームで、カップルが愛を確かめ合ってますよ。
なかなかいい風景ですわ。

12/11/08 鮎風 遊

泡沫恋歌さん

トンデモナイ遠距離ですね。

それだけに余計に熱いものが。
300年後もありますよ。

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