桜月 玖藍さん

桜月 玖藍 です。 おうづき くらんって読みます。 くーちゃんって読んでくれたら喜びます。 @monat0330 日常Twitterはこちら。 詩書きは @monatdear どちらもフォローしてくれると嬉しいです! エブリスタにもいます。同じ名前です。 プロフ画は ルピア 様より。 眠たがりのマイペース。 詩はよく書きます。即興が得意。 仲良くしてくれると嬉しい。 作品への感想待ってますm_ _m

性別 女性
将来の夢 壮大な夢としては「人と人、世界と世界の橋を繋ぐこと」
座右の銘 できれば、やる。

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厄日

16/12/14 コンテスト(テーマ):第123回 時空モノガタリ文学賞 【 クリスマス 】 コメント:0件 桜月 玖藍 閲覧数:738

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クリスマスが何だ、と思う。
私は日本生まれ、両親も生粋の日本人、私も生粋の日本人だ。
日本人特有なのか知らないけれど、日本人は宗教観というものがてんでない。
それでも一応、多くが仏教徒なはずの日本人は、
何故か全く関係のないクリスマスに騒ぐ。

別に悪いことだとは思わないけれど、私はクリスマスが嫌いだった。
無駄にうるさい近隣の子供たち。
クリスマスだからと飲みに誘ってくる同僚。
プレゼントをせがむ5つ下の妹。
クリスマスだから、というのは私たちにとって何の理由でもないのに。

私はうるさいことと面倒なことが嫌いだ。
仕事は淡々とこなし、人付き合いは必要以上にしたくない。
同僚と飲み騒ぎするくらいなら、1人、家で本を読むほうがマシだ。
大体、もうじきこの1年が終わるというのに、
どうしてわざわざ騒ぐのか。
静かに1年を終わらせようとは思わないのだろうか。

何故こんなにもクリスマスに対して恨みつらみを述べているかというと、
それは私の手の中にある携帯に原因があった。

しきりにかかってくる電話。
既に10件ほどのメールが溜まっている。
うんざりだ。面倒だからって場に流されなければよかった。
なんて今更後悔しても仕方がない。

『咲さんへ
クリスマスなのでちょっと奮発して美味しいご飯を食べに行きましょう。
僕、美味しいご飯屋さんを知っているんです。
ほら、春夏秋冬駅の真向かいに大きなビルがあるでしょう?
あそこの8Fに和食屋があって、是非咲さんと行きたいなって。
返事待ってます。 健介』

最初のメールを見て、はぁ、とため息をつく。
健介君とは同僚に無理矢理誘われた合コンで出会った。
帰り際とてもしつこく言われて、ついメールアドレスを教えてしまったのだった。
そこから携帯番号も教えてしまい、今に至る。
健介君自体は悪い人ではないけれど、
人付き合いがあまり好きではない私にとって、
彼の存在は面倒以外の何物でもない。
大体、春夏秋冬ひととせ駅は私の家から徒歩20分かかる微妙な遠さだ。
この冬に歩くのも寒くて面倒だし、だからといって電車やバスに乗るのもお金が勿体無い。
またため息をついて携帯の画面を切り替えた。

『おねえちゃんへ
ねえ!私へのクリスマスプレゼントは!?
まさか用意してないなんて言わないよね。
早く持って来てよね!! 唯』

健介君からのメールに混ざって、5つ下の妹、唯からもメールが来ていた。
クリスマスプレゼントの催促メールだ。
なんでこんなに偉そうなのか。
生まれた時はもう少し可愛かったのにな、と悪態をつく。
今時の女子大生はすぐに返事をしないともっと煩くなるので、
唯の家に後日持っていく旨だけを書いてメールを送った。


『咲さんへ
僕何か悪いことしましたか?ごめんなさい。
直接謝りたいので会いたい。 健介』

またメールが届いて、3度目のため息をついた。
仕方なく文字を打った。

『健介くんへ
返事遅くなってごめんなさい。
今日は忙しいので行けません。 佐久間 咲』

1分もしないうちに返事が来る。

『咲さんへ
どうしてですか。僕のこと嫌いになりましたか?
少しでもいいので会いたい。 健介』

どうやら健介くんは日本語が読めないようだ。
これだから人付き合いは面倒くさい。
彼氏彼女ならいざ知らず、私と健介くんはそんな関係ですらないというのに。

私は携帯の電源を切って、先程まで読んでいた本を開いた。
そこで玄関のチャイムが鳴る。

「はーい」

宅配を頼んだピザかな、と思い玄関のドアを開ける。

「来ちゃいました」

へらっと笑う男の子……健介くんが目の前にいて、唖然。
健介くんは私の家を知らないはずなのだ。

「どうして」

やっと絞りだせた声に、健介くんはへらへら笑ったまま続けた。

「咲さんのこと、大好きだから。家、調べて、来ちゃった」

諦めたように私はため息をついた。
本日何度目のため息かもはやわからない。

これだから人付き合いは嫌いなのだ。


私の家は家族以外誰も知らないはずなのに。
一人暮らしを始めて8年。
家を教えていない他人が、こうして訪ねてくるのはこれで8回目だ。

クリスマスは厄日だ。
私はクリスマスが何より嫌いだった。

来年こそは。

クリスマスも終わりにさしかかる夜、いつものように私は誓った。


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