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あずみの白馬さん

成人済 アイコンは天乃ゆうりさん作成(無断転載を禁じます) 自分なりの優しい世界観を出せるように頑張ります。 好きな作家は飯田雪子先生です。若輩者ですが、よろしくお願いします。 Twitter:@Hakuba_Azumino

性別 男性
将来の夢 旅立つときには、ひとりでも多くの人に見送られたい。
座右の銘 「これでいいのだ」

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今年も嫁と!

16/12/05 コンテスト(テーマ):第123回 時空モノガタリ文学賞 【 クリスマス 】 コメント:2件 あずみの白馬 閲覧数:826

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 クリスマスイブの夜、俺は仕事から帰って来て着替えると、早速買ってきたクリスマスグッズを取り出す。
 ケーキにシャンパン、フライドチキン、用意してくれた料理、そしてプレゼントがはいった箱をテーブルの上に並べる。パソコンのディスプレイを向かい側に設置。その画面にサンタコスの俺の嫁を映し出す。ケーキの上にキャンドルを立て、火を灯したらパーティー準備完了!

 これを撮影してSNSに投稿すると、今年も瞬く間に増えていくRTといいぜがたまらない。コメントも返ってきた。
「これを待ってたんです。今年もありがとう!」
「嫁との夜は最高ですね! メリークリスマス!」
 この一体感がたまらない。これを始めてもう5年。止める気なんて全く無い。俺の嫁はお前だけだ!

 SNSがひと段落ついたら、心の中で嫁との会話を楽しむ。これが俺の聖夜の過ごし方だ。



 ***



「パパ、そろそろいい?」
 15分ぐらい経った頃、突然、高校生になった娘が部屋に入ってきた。邪魔しないで欲しかった俺はムッとして答える。
「おいおい、まだパーティー中だぞ。もう少し嫁と二人で過ごさせてくれてもいいだろう?」」
 だが娘は引かない。
「そろそろ私も入れてよ。私もママと一緒に過ごしたいんだから」
 その一言が、俺を現実の世界に引き戻す。

 妻はかつて有名なコスプレイヤーだった。それをさんざん口説いて結婚し、娘も出来た。
 クリスマスはいつも妻と過ごし、その様子をSNSにあげるのが楽しみだった。
 しかし……、5年前のある日、妻は重い病気に倒れ、息を引き取ってしまった。

 その年のクリスマス、何を思ったのか俺は、ネットでよく見る「二次元嫁とのクリスマスパーティー」を真似た写真をSNSに流した。
 それが妻のファンをはじめとしたメンバーから拡散され、思いの外好評だったので、毎年の恒例行事になったのだ。

「それにしても、パパも飽きないわね」
「そういうお前も、毎年一緒に準備してくれるよな」
「まあ、ね。私もママと一緒にクリスマス過ごしたいし」

 娘はこう言ってくれているけど、いつか、恋人と過ごす日が来るんだろうなと思うと少し複雑だが、今は素直に喜ぼうと思う。

「そうだな。ありがとう」
「ところで、パパ?」
「どうした?」
「どうして毎年、ママの写真をSNSに流したりするの?」
「それはな、ママにもっと長生きして欲しいからだよ」

 なんとなく始めたこの儀式も、自分の心の中で、いつの間にか意味がついていた。

「え? だって、ママはもう……」
 娘の疑問に俺は胸を張って答える。
「人は、肉体が歩みを止めた時に一回目、そして生きていたことを知っている人がみんな死んだ時に、二回目の死が訪れるんだ」
「そういうものなの?」
「そう。だから、一人でも多くの人の心の中に、ママが生きていて欲しいんだ」

 外は雪が降り始めていた。俺と娘がいつまでこうして一緒にいるのかわからない。けれど、今年もママと三人で、メリークリスマス!





【謝辞】

 主人公のセリフの一部は、南蔵院第二十三世住職、林覚乗さんの講演「心豊かに生きる」より引用させていただきました。御礼申し上げます。


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このストーリーに関するコメント

16/12/07 葵 ひとみ

あずみの白馬さま、

拝読させて頂きました。
あずみの白馬さまらしい、
パパのママに対する深い真摯な愛情を感じずにはいられませんでした。
素晴らしい掌編を心からありがとうございます。

16/12/07 あずみの白馬

> 葵 ひとみ さま
ありがとうございます。

>パパのママに対する深い真摯な愛情を感じずにはいられませんでした。

死がふたりを分かつとも……、そんな思いで書きました。
素晴らしいとの評価、ひじょうにうれしいです。ありがとうございます。

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