1. トップページ
  2. 刹那桜花

▷てとさん

性別
将来の夢
座右の銘

投稿済みの作品

0

刹那桜花

16/11/27 コンテスト(テーマ):第122回 時空モノガタリ文学賞 【 美術館 】 コメント:0件 ▷てと 閲覧数:524

この作品を評価する

クソつまらなくなった。この世界に存在する全てのものに腹が立ち、死にたいわけではないが生きていくのが面倒だった。あれだけ好きだったサッカーが今となっては邪魔で仕方ない。ただ理由はそれだけでないことに自分が1番分かっている。両親ともに厳しい自分の家はタバコ、飲酒はもちろん、門限までも厳しかった。周りがぐれはじめてきても自分は一切波に乗れなかった。そんな自分が情けなくて家で暴れることも多々あった。丁度妹も反抗期であっため母親が毎日頭を抱えている様子を見て今となっては支えてあげることはできなかったのだろうかっと考えたりもする。
あの日も朝学校をサボり時間を潰していた時だった。傍からみたらもう充分おちるところまでおちたと思われていたに違いないが、実際真面目で冷静な自分が必ず学校には顔を出すことを促していた。そのため学校に行く度に放課後呼び出され説教をくらってはまた1人で夜中まで時間を潰した。けどあの日は違うかった。学校に入ってすぐ首根っこを捕まれ投げ飛ばされた。急な出来事で思考回路が完全に停止した。恐る恐る見上げると美術の先生が立っていた。学年主任まで務めるクレイジージジイが立っていた。60代くらいと見積もった俺はその時代は体罰が普通なのだろうと自己解決した。そうでもしないと今にも泣きだしそうだったからだ。「なにやってるんや。毎日毎日アホちゃうか。」「は?お前に関係あるんか。」勢い反抗したもののあまりの威圧感に冷や汗が止まらなかった。「あるわ。生徒やろうが。こんなもんしててもなんにも変わらへんわ。」「だから、関係ないだろ」どうせ言いたいことだけ言って授業に戻されるのは分かっていたため、立ち上がって教室にて向かおうとした。「どこいくねん、こっちこいて。」そういわれ半ば強引に連れていかれた。なにやら怪しい部屋の前で手を離され中へ押し込まれた。「いいやろ、ここ。なに飲む?お茶、紅茶、コーヒー。」中はあったかくて生活感漂う部屋が存在していた。咄嗟にコーヒーと答えてしまい少し後悔した。「ここ入って来たら自由や。一応俺も教師やからなあ。まあ話や。」さっきとは人が変わったように微笑みかけてきたじじいに少し心を許してしまった俺はとんでもなく馬鹿だ。それからは毎日じじいのところに通った。本当に毎日毎日、授業がない時以外は相手をしてくれた。「先生はさ、なんで俺のこと知ってたんですか?」「ああ、ほら、こっから外見てみ。」そういうと窓を一斉に開けた。「見えるねんで〜、君のことはずっと見てた。頑張ってたやん誰よりも。」そこからは涙が止まらなかった。ただただ自分を認めてくれていた人がいた、それに自分の存在意義を感じ今までの孤独感が嘘のように消えた。
それからは美術のテストは全力で頑張った。先生が自分のことを変えてくれた唯一の恩返しだと思い込んでいた。それから、冬の雪は溶け、春休みになった。この時俺は少しかじっていた美術の実力を誇っていて、と同時に確かめたかった。その一心で電車に乗り込み街の美術館に足を運んだ。

最初のチケット買う時、正直少し躊躇った。勢いで来たものの馬鹿らしくなったのだ。でもせっかくここまで来たんだしという気持ちが勝ち中へ入った。中にはたくさんの絵があった。それはもう教科書の何十倍も。よくわからないがじっとその絵画たちを見つめ細部まで心を通わせた。美術館のカフェでコーヒーを頼みすぐさま先生にメールを送った。「いま美術館にいます。なんかすごいです。教科書のやつありましたよ。なんか感動しました。」その返事は翌朝の学校へ向かう途中にきた。「言い忘れたけど今年の春で終わります。いままでありがとう。そして、美術館にまで行ってくれたんやね、君はすごい。」

あれから5年が過ぎ、今その美術館の前に立っている。自分は美術とはかけ離れた職につきこれからに胸を膨らませている。あれは自分にとってのなんだったのか今はよくわからない。だからあれから一度だって美術館に行ったことはないし、先生とも連絡をとっていない。けれどあの時の感動は今も忘れられないのだ。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン