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鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 そのために、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。 テーマに沿った個別物語の他に、いくつかのシリーズものをコツコツと書き続けさせてもらってます。 その主なシリーズものを紹介させてもらいます。  ☆❤☆❤☆ 新シリーズ 『ツイスミ不動産』 __ 2017.07.16よりスタートさせてもらいました。 カサリンとクワガタ野郎があなたが求める終の棲家を紹介いたします。  ☆❤☆❤☆ 『刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)』 __ 2017.05.21 ただ今、27話 __ 1話完結の2000文字推理小説です。この少ない文字数の中で、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)がいかに事件を解決していくか、その醍醐味を味わって頂ければ、光栄です。 これからも引き続き難しい事件に挑戦して参りますので、よろしくお願いします。  ☆❤☆❤☆ 『漢字一文字の旅』 __2017.04.04 ただ今、連載41__ 漢字にまつわるエッセイです。  ☆❤☆❤☆  『歴詩』 __歴史上の人物になりかわって、その波瀾万丈の生き様の思いを詩に綴らせてもらってます。 本作品については、フォト音(on)小説という形で、you tubeにもUPさせてもらってます。 詳細はこちらHPです。  ☆❤☆❤☆  http://ayukazeyuu.net/index.html  ☆❤☆❤☆                         よろしくお願いします。              

性別 男性
将来の夢 この世で最も面白い物語を見つけ出したい。
座右の銘 Do what you enjoy, enjoy what you do.

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美術館殺人事件 ──刑事:百目鬼 学(どうめき がく)──第25話

16/11/26 コンテスト(テーマ):第122回 時空モノガタリ文学賞 【 美術館 】 コメント:0件 鮎風 遊 閲覧数:898

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 時節は芸術の秋、美術館では欧州名画展が開催され、連日賑わっている。中でも大作『シシィ、レマン湖のほとりで』が人気を博し、その前で入場者が押し合いへし合いの状況だ。
 シシィはオーストリア皇后・エリザベートの愛称。1898年旅先で無政府主義者・ルケーニに刺殺された。人たちはこの絵からレマン湖に至るまでのその数奇な人生に思いを馳せるのだった。
 一方別館では画家の登竜門、新人コンクールで盛り上がってる。
 名画展ならびに逸材発掘展、この二つの展覧会を企画し、同時開催へと導いたのは美術界の女性リーダー・森姫美猫(もりひめ みねこ)。この名前からはまるでお伽の国のニャンニャンのような印象を受けるが、実のところは猫どころか拝金主義の雌狸(めだぬき)、これが風評だ。
 そして事件は起こった。シシィ暗殺の大作の前は血の海、その中で女性が狸の面を被って絶命していた。第一発見者は早朝見廻りの警備員。一報を受け、駆け付けた署員が身元確認すると、婦人は森姫美猫だった。

「それにしても不思議だわ。死亡推定時刻は昨夜の11時、閉館され誰もいないはずのシシィの絵の前で、なぜ美猫は刺されたのかしら?」
 急遽現場へと入った芹凛(せりりん)こと芹川凛子刑事が首を傾げる。その横で上司の百目鬼刑事は腕を組み、絵の中の凶徒を凝視し、「ラッキーだぜ、こんな傑作、独り占め出来てるんだからな」と呟く。これを耳にした芹凛は「ちょっと待ってくださいよ。鬼刑事なんだから、もっと捜査に身を入れてください」と恐い目で睨み付ける。
 すると百目鬼は「落ち着いて考えてみろ、誰しもこの名作をゆっくり味わってみたい。守銭奴の美猫はそこに目を付け、一儲けしようと目論んだのではないかな」と切り出した。
 芹凛はこの話しの意図が飲み込めない。それを知ってか、百目鬼はあとを諭すように続ける。
「狸の面には血痕がない、だけどそこに落ちてるパンダのマスクには血が付いてる。すなわち殺された後にお面は交換された、どうも犯人は、美猫を噂通りの強欲な雌狸に仕立て上げたかったようだ。そんな邪気がなぜ生まれたのか、そこに本事件の核心がありそうだな」と。
 芹凛はこの助言で思考回路が繋がり、捜査の道筋が見えてきた。
「さすが鬼デカ、勘所が違うわ。殺してまで恥をかかせたいという毒念、犯人がそこまで憎む美猫の悪行、それは何かを徹底的に調べましょう」と拳を強く握るのだった。

 1週間後、美猫の闇に興味を持ち、取材を重ねてきたメディアが報じた。
 美術館深夜ツアー、昼間の混雑を避け、少人数で名画鑑賞を満喫できる。森姫美猫は美術館と警備会社を抱き込み、こんな裏企画(入館料5万円)でせこく稼いでいた。
 もちろん違法。そのため参加者のプライバシーを擁護するため、互いの面が割れないようマスクを着けさせていた。
 その夜美猫は、きっと権力者がジョインしていたのだろう、自ら案内を買って出た。されどもシシィの絵の前で刺殺された。参加者はやっかいな事件に巻き込まれたくないと、仮面を被ったまま蜘蛛の子を散らすよう美術館から消え去った。このため防犯カメラの映像からは個人の特定は困難。
 さて美術館殺人事件、ドン・美猫はまさに金に執着する薄汚い雌狸だった。そして犯人の動機はその悪行に対しての正義感からなのか?

「あらまあ、上手に書いてくれてるわ」
 デスクで芹凛が記事を読み感心していると、百目鬼が「あのな、正義感だけで殺人事件は起こらんぞ。必ず個人的な憎悪が絡んでんだよ。ところで別館の新人展、『王妃マリー・アントワネットのギロチン処刑』の絵を見たろ、あれは逸品だと思うが、なぜ賞がもらえなかったのだ」と手にしていたコーヒーカップを芹凛に向けて突き出した。
 これは明らかに己の推理を述べろという催促だ。芹凛は背筋を伸ばし、ここぞと語り出す。
「シシィ暗殺の絵に引けを取らないあのギロチン絵、新人の作品です。雅号はミネット、その意味はフランス語で子猫ちゃん。彼女は幼少の頃両親と死別、その後慈善運動を売りにしていた美猫に引き取られる。しかしこれが食わせ物で、酷い虐待を受ける。中学時代に逃げ出し、その子猫を拾ったのが質朴剛健な前館長、そして彼女の才能を発掘し、画家に育て上げました。今回特賞候補となっていましたが、選考委員長の美猫は上納金百万円を要求。お金がなくて落選。この理不尽、怒りは尋常ではなかったと想像します」
 芹凛は唇を噛む。しかし百目鬼は容赦しない、「それで、犯人は?」と問い詰める。ここは女刑事の意地、「前館長と推理します」と言い切る。
 これに百目鬼は「手塩に掛け、ミネットを画家にした。だが雌狸が子猫の未来を摘む。これには怒り心頭、ギロチン絵を参考に…斬殺処刑を執行した。さっ、裏を取りに行くぞ!」と鬼の目を金属色に光らせたのだった。


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