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くらげさん

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僕がサンタになった日

16/11/21 コンテスト(テーマ):第123回 時空モノガタリ文学賞 【 クリスマス 】 コメント:0件 くらげ 閲覧数:632

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「いつかあなたも、誰かのサンタクロースになるのよ」
 そう母が言ったのは、クリスマスの夜にトイレに行きたくなって目が覚めてプレゼントを置きに来た父と鉢合わせしてしまった次の日のことだった。
「どういう意味……?」
 サンタクロースがいなかったことと、父と母が自分を騙していたんだということに酷くショックを受けた僕は、翌朝渡されたプレゼントの包み紙を開けることなく泣きじゃくっていた。
「その時が来たら分かるわ。だから……もう、そんなに泣かないで。ほら、プレゼント開けてみなさい?」
 そう言われても引っ込みがつかない。子供の僕にだってプライドがあるんだ。
「あとで開けるよ!行ってきます!」
 そう言うと、ランドセルを背負うと僕はコートを羽織ることも忘れて学校へと駆けだした。

 朝から教室はクリスマスプレゼントに何を貰った、という話題で持ちきりだった。
「よー!健太はサンタクロース来たか!?」
 そう言って僕に声をかけたのはクラスで一番仲のいい徹だった。
「俺はマウンテンバイクを持ってきてくれたぜ!」
「……僕は」
 どう言っていいのか分からず思わず口ごもる。クラスの大半はサンタクロースを純粋に信じているのだろう。誰の口からもそんなもの本当はいないんだ、なんて言葉は聞こえてこない。
「どうしたんだよ、健太!あ、分かった!お前いい子じゃなかったから貰えなかったんだろ!」
「違うよ!僕のところにも来たよ!ただ……寝坊しちゃって、開けれなかっただけだよ」
「なーんだ、俺なんて6時に起きてプレゼント確認したぜ!」
 それはお前のお父さんかお母さんが置いたものだよ、そう言いたかったけど……何故か言えなかった。目の前でキラキラと目を輝かす友人に、僕が受けたショックを受けさせたくはなかった。

 自宅に帰って鍵を開ける。今日はお母さんはパートの日だから、家には誰もいない。いつものようにランドセルを勉強机の上に置くと……ベッドの頭元に置かれたプレゼントが目に入った。
「…………」
 そっとそれを手に取ると、破らないように包み紙を開けていく。気付いてしまえば、どうしていままで気付かなかったのかと笑えてくる。だって、この包装紙はいつも行く近所のおもちゃ屋さんのものだ。
「あ……」
 包み紙を開けると……そこには、ずっと欲しがっていたゲーム機が入っていた。友達はみんな持っていたけれど、僕は買ってもらえずにいたあのゲーム機。
「こんなの……お父さんとお母さんしか知らないじゃないか……」
 サンタさんの手紙には書けなかった。お父さんとお母さんがダメだって言うものをサンタさんにもらうのは、ルール違反な気がしたから。それなのに……。
「ありがとう……お父さん、お母さん」
 そう呟くと、僕は包み紙からひらりと落ちたメッセージカードをそっと拾い上げた。そこにはへったくそな文字で僕にでも読める英語が書かれていた。
―― MaryChristmas ――

「それで、どうしたの?」
「ん?」
「その後、ご両親とは仲直りできたの?」
 尋ねる彼女の声は、聞き取りにくいほど小さかった。
「どうだったかな……でも、親父と一緒にゲームで遊んだ記憶はあるから仲直りしたんじゃないかな」
「そこは曖昧なのね」
「だってもう20年も前の話だぜ?」
 俺は目の前のドアをそっと開けると……彼女に持たせていた箱を一つ受け取った。
「これ、どっち?」
「それが悠ちゃんのでこっちが鷹のだよ」
「りょうかいっと」
 俺は眠る子供たちの枕元にそっとプレゼントを並べる。20年前の俺とは違って二人とも目覚めることはなくすやすや眠っていた。
「任務完了っと」
 音をたてないように扉を閉めて、俺たちはリビングへと戻る。
「明日の朝、二人ともビックリするわね」
「喜んでくれるといいんだけど」
 そう言いながら、俺はソファーの後ろに隠したもう一つのプレゼントを取り出した。
「え……?」
「MaryChristmas」
「私、に……?」
「いつもありがとう。サンタじゃなくて俺から、だけど」
 笑う俺から、彼女は信じられないといった顔でプレゼントを受け取る。
「私何も用意してないのに……」
「いいんだよ、君はいつだって俺たちのために頑張ってくれてるんだから」
 微笑みかけると、彼女が俺に抱き付いてくる。その背中にそっと手を回すと、俺も彼女を抱きしめ返した。
 そんな俺の頭の中を20年前、母が言った言葉がよぎった。

「いつかあなたも、誰かのサンタクロースになるのよ」


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