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むねすけさん

ブログで創作をやっていましたが、誰にも相手にしてもらえないため、こちらに辿り着きました。 面白い物語、少しほっとしてもらえるようなお話を書きたいと思っています。

性別 男性
将来の夢 作家になりたいですが、 それが無理でも、何かの原案家とか、 自分の考えた物語が世に出ること。
座右の銘 我思う、故に我在り。

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ゆめみず、発注「平和」

16/11/07 コンテスト(テーマ):第120回 時空モノガタリ文学賞 【 平和 】 コメント:0件 むねすけ 閲覧数:659

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 泡の個数は一定で、プールの水面をプクプクと。
 監視役のサエコはデッキチェアに水着で時折タップを踏む真似。
 プールの中では夢水の潜夫、ヒイチとミズキが夢を誘発中。
 五分に一度、ムクーーっと上がってきては「ぷあああああああ」っと壊れた金管楽器のような音で息を継いでまた潜っていく。
 監視役にこれといった資格も能力も必要ないが、一つ挙げるなら、このホラー極まりない声にビビらないハートを持っているかどうかで。
 
 夢水は夢見ずのために高価な値段で売られる。誘発的仮死状態の脳みそに事前に叩きこんでおいた脚本と映像を想起することで、人間の肉体を夢見の模に組む。プールの水はただの水だが、水は記憶する媒体であり、ましてや人の見る夢なんて水にとっては初見の衝撃なのでクッキリと網膜に焼き付いてしまうはず。
 
「平和?」
「うーん」
「次の発注、そんだけなわけ?」

 夢水の工房第三班、サエコ班。納品を終えて次の夢水作成へ、お昼の食堂で軽い打ち合わせの最中。
 潜水艦ではないけれど、決まった曜日にカレーが出される。しかし潜夫にはカレー嫌いが多いので特別にハヤシライスが用意されていて、ミズキとヒイチはそれを喰ってる。
 サエコはカレー、脚本係のモリもカレー、映像係のモミジもカレー。
「なんでカレーなんか嫌えるのか、まったく」
 新米のモリがぼやくも、「普通じゃないから、こんな仕事できるんでしょうが」の、サエコの一言で話は撃墜、広がりはしない。

「まぁ、広すぎてぼんやりですけど、要は暴力的でなく、ほのぼのしてればいいんでしょ、簡単じゃないですか」   
 ハヤシライスの奥に赤ワインを見つけて奥歯を噛みしめ、ミズキが言う。
「広すぎて困るのは俺らじゃないしな」
 ヒイチは赤ワインには気づいていない。砂時計が落ち切る前に食事を終えることしか彼の頭にはない。
「しっかし、平和な夢ってそれだけの発注かぁ、頭大丈夫なんですかね、その人」
 モミジは一人、口が悪い。
「そんなもん、アニメ映画で十分じゃないよ」
 ぼやきながらコップの水をあおる。今日のカレーは少し辛い、料理長のクズハさんが妊娠中で味覚が鈍感になっているせいだ。
「まぁ、結局はモリちゃんのさじ加減になるんだけどね」
「はぁ」
「じゃぁ、任せたから」砂時計が引っくり返されるのを待つだけの無用ものになった瞬間、ヒイチはガラリとスプーンを皿に転がして立ちあがる。
「ちょっと、まだ終わってない、一応食事とミーティング、座れよ」
「やだ」
「あんたねぇ、最近あんたの水の評判落ちてんのよ、あまりにも筋が通り過ぎてるって、シャッフルの手抜いてるんでしょう?」
「なんだよ」
「一班のアサカとチチクリアイにかまけられたんじゃねぇ、全体責任でお給金に響くんだから」   
「誰が、なにに、なにけてるって?」
「ふふふ」
「お前は笑ってるんじゃないよ」
「いいのよ、ミズキの水は評判いいんだから、笑ってていい」
「だから、平和な脚本をモリに作ってもらって、そいつをモミジが映像にする、俺とミズキは脚本映像頭にたたっこんで、潜る、あんたはそれを監視する、そんでいいんでしょ」
 
 高価な夢水にまで、ただの平和を求めるつまらない客のせいで、ヒイチのチチクリアイの時間は削れていく。
 一班潜夫のアサカは部屋で一人、砂時計を引っくり返して待ってます。
「平和ってなんだろう」と、脚本担当新米のモリはちょっと憂鬱。 
  
 
   


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