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つつい つつさん

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ピースメーカー

16/10/29 コンテスト(テーマ):第120回 時空モノガタリ文学賞 【 平和 】 コメント:0件 つつい つつ 閲覧数:708

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 ラズ兄ちゃん達の帰りを待つため、見晴らしのいい高台に座っていた。戦いに出かけて一週間、そろそろ戻る頃だった。
「ハウリー、まだみんな戻ってこない?」
 振り返ると、幼なじみのルーラムがいた。
「でも、毎日偉いね。みんなの帰りを待つなんて」
「僕はまだ、戦いに参加出来ないから」
 そう、僕はもうすぐ十四歳になる。だけど、右手の刀はペラペラのままで、紙一枚切れやしない。シェハン族の男は十三、四歳になると利き手の刀が硬質化し、その刀で敵であるバウラ族と戦っている。バウラ族は僕達と違い四足歩行の獣で、槍状になった尾を武器としている。そんなバウラ族との戦いはもう何十年も続いているが、いっこうに終わりは見えなかった。
「女の子より優しいハウリーも、そのうち戦いに行くのか。信じられないね」
 ルーラムが山の向こうを見ながらつぶやく。
「僕はいつ戦いに出られるかわからないよ。それに、僕なんかが戦いに出ても、すぐにやられちゃうよ」
「そんなことないよ。あのラズさんの弟なんだから、その気になったら誰にも負けないわよ」
 ルーラムはそう言ってくれるけど、自信はなかった。ラズ兄ちゃんは、青く透き通った刀を振りかざし、何体もの敵を倒してきた村の英雄であり、僕の自慢の兄だった。十一歳の頃から刀を振り回し戦ってきた兄に対し、いまだに硬質化しない僕はみんなに笑われていた。心が弱いから駄目なんだって、陰口叩く人もいた。そんな人達に対してラズ兄ちゃんとルーラムだけが僕を庇ってくれていた。
 十数人の村の男達が高台の向こうから歩いてくるのが見えた。ただ、いつもと違い重苦しい雰囲気が漂っていた。戦いの帰りとはいえ、いつもは僕を見つけるとラズ兄ちゃんが「ただいま」なんて手を振ってくれていたのに、ラズ兄ちゃんの姿が見えない。誰かがやられたのかもしれない。しばらくすると、みんなが戻ってきた。隊長のダングルさんの背には、生気のないラズ兄ちゃんが背負われていた。
「ラズさん、ラズさん!」
 ルーラムがラズ兄ちゃんに駆け寄った。だけど、ぼくは一歩も動けなかった。ラズ兄ちゃんの右手を見ると自慢の青い刀がポッキリと折られていたからだ。みんなが僕を励ます言葉を聞きながらも一言も話せないまま黙って村までついて行った。村に戻ると、ラズ兄ちゃんは、ザブール小屋に入れられることになった。僕は思わずダングルさんに詰め寄った。
「ザブール小屋なんてひどいよ。ラズ兄ちゃんが今までどんなに村の為に戦ってきたか知ってるだろ」
「これは決まりなんだ」そう言うとダングルさん達はラズ兄ちゃんを連れていこうとする。僕は必死にラズ兄ちゃんにしがみついた。
 ザブールと言うのは、刀を折られた男の呼称だ。シェハン族は刀を折られるとだんだん身体は萎み、弱体化し、自分のことや周りのこともわからなくなる。そして衰えながら死んでいく。だから、この村では、それまでの戦いに敬意を評しザブールを粗末な小屋で死ぬまで残飯を与え余生を送らせる。村によっては、刀を折られたその場で殺されるところもあるから、寛大なほうだった。だけど、僕は許せなかった。ずっと村のために戦い続けたラズ兄ちゃんをこんなあっさり見放すなんて、信じられなかった。
 僕は必死で抵抗した。看病したらラズ兄ちゃんは元に戻るかもしれないから、もうちょっと様子を見させてくれって懇願した。だけど、ダングルさん達は全く耳を貸さず、弱ったラズ兄ちゃんを連れていこうとする。
「やめろって言ってるだろ!」
 僕は思いきり右手を振り回し叫んだ。ダングルさんは少しよろけると、右肩から血を流しながら驚いた顔で僕を見ていた。周りの村人達も呆然としながら僕を見た。
「ハウリー、光ってる……」
 ルーラムが僕の右手を指さした。見ると、僕の右手は碧く輝き、少し硬くなっていた。怪我をしたダングルさんは、そんなこと気にもとめず嬉しそうに僕の背中を叩く。
「これで一人前だな、ハウリー」
 ラズ兄ちゃんのことで沈んでいた村の空気が一気に明るくなった。それから一週間程で僕の右腕は完全に硬質化した。

 初めての戦さに出て、村に戻るとみんなが笑顔で迎えてくれた。ルーラムが俺のところへ心配そうに来た。
「ハウリーどうだった。怖くなかった?」
 そう言うと、男達みんなが笑った。
「ルーラム、こいつは初めての戦いでバウラ族の奴らを五体も倒しやがった。怖がっているのはバウラ族のほうさ」
 ダングルさんがそう言うとルーラムが安心したように笑った。
「だから私が言ってたでしょ、ハウリーは凄いんだって」 そういうと、ルーラムは俺に抱きついた。

 戦いに出てる間にザブールが一匹死んだらしい。まあ、そんなことはどうでもいい。これからは俺がこの村のを守る。そして、奴らを皆殺しにして、この村に平和を取り戻してみせるんだ。


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