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泡沫恋歌さん

泡沫恋歌(うたかた れんか)と申します。

性別 女性
将来の夢 いろいろ有りますが、声優ソムリエになりたいかも。
座右の銘 楽しんで創作をすること。

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女道化師クローネ

16/10/24 コンテスト(テーマ):第119回 時空モノガタリ文学賞 【 お笑い 】 コメント:8件 泡沫恋歌 閲覧数:918

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 マルシア国の王女フローラは、九歳のお誕生日に父王から珍しい贈り物を貰った。それは宝石ではなく、ドレスやペットでもない、小さな女の子の道化師だった。
 その少女は顔に滑稽な化粧を施し、道化の衣装を着て、どこから見て一人前の道化師だ。名前はクローネという、この子の父親も道化師だったが、戦火に巻き込まれて命を落とし、少女は孤児になった。
 そして、フローラ姫も母親を病気で亡くしてから、毎日々泣いてばかりだった。悲しむ姫のために、遊び相手になればと道化師の少女を連れてきたのだ。
 フローラ姫も道化の少女も同じ九歳、ふたりはすぐに仲良しなった。
 クローネは父から受け継いだ道化師の芸で、歌ったり、踊ったり、ひょうきんな格好をして、フローラ姫をいつも笑わせていた。あんなに元気がなかった姫が日に日に明るくなって父王も安堵した。寂しがり屋の姫のため、クローネも同じ寝室で休むことを許されて、まるで姉妹のようにして一緒に育っていった。

 シェイクスピアのリア王にも描かれているように、道化というのは王の側近中の側近である。常に王に傍らに居て行動を共にする、王の悩み事の相談相手であったり、時には君主に苦言を呈するのは、道化師だけの役目なのだ。

 クローネが姫の元に仕えて八年の歳月が経った。大きくなっても二人は仲良しだった。
 この頃、姫は道化の真似をして、よく侍女たちを笑わせていた。背格好も髪の色も瞳の色まで同じな二人、道化の格好をすれば、姫とクローネどっちがどっちか見分けがつかないほどそっくりだった。
 しかもクローネは人前では絶対に素顔を見せない。彼女の素顔を知っているのは、おそらくフローラ姫だけであろう。

 平和だったマルシア国に、突然、ゴルダン国の軍隊が攻め込んできた。
 ゴルダン国の王は戦いが好きで、周辺国を次々と侵略して、財宝と美しい女たちを奪っていく、凶悪な君主である。
 実はクローネの父親は敗戦国の王に仕えていた道化師で、ゴルダン王が召しかかえるというのを断って、主君と共に処刑されたのだ。
 再び、憎きゴルダン王がクローネが仕えるマルシア国を侵略しようとする。平和だった、この国の軍隊は弱く、瞬く間に、城下は焼き払われ、多くの民衆が虐殺された。フローラ姫の父王は敵に殺されてしまい、とうとう落城してしまった。
 捕虜となったフローラ姫を、ひと目見て気に入ったゴルダン王は我が後宮に入るよう命令する。だが警備の隙を突いてフローラ姫は城から逃げ出し、クローネの姿も消えてしまった。
 三日後、姫は追手に捕まり命令に背いた罰として火あぶりの刑を言い渡される。
 広場に薪が高く積み上げられて、中央の柱に姫が縛られていた。捕まる時に抵抗したせいか、顔はどす黒く腫れあがり髪も乱れていた。あれが美しいフローラ姫かと思うほど悲惨な姿であった。
 やがて薪に火が付けられて、じりじりと姫の体が焼かれていく――。

 豚の王様 ゴルダン王よ
 おまえの腹は毒蟲だらけ
 笑えば口から這い出してくる
 地獄に堕ちろ 地獄に堕ちろ
 魔女がイヒヒッと笑いだす

 フローラ姫は息絶えるまで、そんな不気味な歌をうたい続けた。
 まるで呪詛のようだと皆は耳を塞いだ。

 姿を消していた女道化師クローネは、ある国の城主に拾われていた。
 この国はザビーナという女王が治める国で、彼女は男よりも女が好きな同性愛者、側近たちは皆女兵士たちだった。美しき女道化師クローネは、女王のお気に入り、いつも傍らにはべらせていた。
 ザビーナを女王だからと侮るなかれ、彼女は戦術の天才で、今まで幾度も戦いに勝ち抜いてきた名君なのある。
 クローネは女王に進言した。
 あのおぞましき暴君ゴルダンを我が国が滅ぼしましょうと――元より、けだものゴルダンが大嫌いなザビーネ女王は、その言葉に出兵のチャンスを窺うようになった。ついに好機到来、ゴルダン国が洪水で国土の半分が水に浸かった時に、ザビーネ女王は大軍で攻め入って、ゴルダン王の首を打ち取った。
 戦勝の宴で、女道化師クローネは憎きゴルダン王の生首を、手毬のように投げたり振り回して狂喜乱舞して歌った。

 豚の王様 ゴルダン王よ
 おまえの頭に毒蛇がいる
 笑えば口から這い出してくる
 地獄に堕ちろ 地獄に堕ちろ
 悪魔がギャハハと笑ってた

 鬼気迫る、その歌は皆の耳から離れなかった。
 宴の後、クローネの姿が見えなくなった。翌朝、井戸に身を投げて死んでいるのが見つかった。水に浸かった死体は化粧がとれて美しい乙女に顔になっていた。
 復讐を遂げてもう思い残すことが無くなったのだろうか。だが、火あぶりになったのがフローラなのか、井戸に身を投げたのがクローネなのかは謎のままだ。
 ――もしも、女道化師クローネを二人で演じていたとしたら笑えない話である。


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このストーリーに関するコメント

16/10/24 泡沫恋歌

画像は楽天から検索してお借りしました。


中世の王様たちは、自分専用の楽団やコック、絵師などを雇っていた。
そして自分専用のお笑い芸人である『道化師』まで所有していたようなのです。

さすが、王侯貴族はリッチだね♪٩(๑❛ᴗ❛๑)۶

16/10/24 泡沫恋歌

画像は楽天から検索してお借りしました。


中世の王様たちは、自分専用の楽団やコック、絵師などを雇っていた。
そして自分専用のお笑い芸人である『道化師』まで所有していたようなのです。

さすが、王侯貴族はリッチだね♪٩(๑❛ᴗ❛๑)۶

16/11/01 冬垣ひなた

泡沫恋歌さん、拝読しました。

道化師の存在は、王侯貴族には重要だったのですね。笑いは人を癒します。姫とクローネは心から結ばれていたのでしょうね。壮絶な復讐劇の真相は明かされないままですが、道化師クローネの姿をあれこれ想像しました。どんな真実であっても悲しいです、彼女たちの冥福をお祈りします。

16/11/02 泡沫恋歌

冬垣ひなた 様、コメントありがとうございます。

この物語の国はもちろん架空の国ですが、一応中世のヨーロッパをイメージして書きました。

昔、シェイクスピアのリア王を読んだ時、道化の分際で王様に対して言いたい放題だなあという感想でした。
案外、道化師というのは王様にとってブレーンみたいな存在かもしれませんね。

フローラとクローネのふたりは一心同体だったのでしょうか。

16/11/08 そらの珊瑚

泡沫恋歌さん、拝読しました。

悲しいお話でしたが、二人の復讐(?)が果たせたようで良かったです。
少女の頃、同じような境遇がふたりを結び付け、姉妹のようになったのでしょう。
「お笑い」というテーマだけど、それに相対するような悲しみを描いていたところが新鮮に感じました。


16/11/24 泡沫恋歌

海月漂 様、コメントありがとうございます。

ちょっと百合系のお話です。

フローラもクローネもお互いを必要としあって、ついにはひとつの人格として、
同化し合っていると思うのです。
先に火あぶりで死んだのがどちらであっても結果は同じになると思う。

16/11/24 泡沫恋歌

そらの珊瑚 様、コメントありがとうございます。

今回のテーマがお笑いということで、ほとんどの方がコメディアンや漫才師のことを
書かれるのではないかと思って、ピエロを書いてみようかと思いました。

いろいろストーリーを練ってるうちに、なぜが悲しいお話になってしまった。
ピエロって哀愁が漂ってるよね。

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