1. トップページ
  2. 平和という都合の良い言葉の裏側にあるものは

しーたさん

小説を書いています。よろしくお願いします。

性別 男性
将来の夢
座右の銘

投稿済みの作品

0

平和という都合の良い言葉の裏側にあるものは

16/10/16 コンテスト(テーマ):第120回 時空モノガタリ文学賞 【 平和 】 コメント:2件 しーた 閲覧数:649

この作品を評価する

ーーもう、戦争は始まってる。
 そのメールの一行目には、そう書かれていた。
ーーついに奴らが攻め込んで来たんだ。地球の場所を特定されたみたいで、円板型の機体を操作して、一直線に地球に向かってきてる。世間に隠し通すのも限界だと思ったので、この手紙を君に送る。
 知らぬ間に汗でじんわりと湿ってきていた手のひらを服で拭きつつ、続きに目をやる。
ーー世間に奴らのことを発表して欲しい。今の君にはそれだけの力と情報があるはずだ。こうなってしまったら、もう私たちだけじゃどうしようもない。奴らを宇宙の彼方へ追い返すほどの戦力は、もう残っていない。
 自然と心臓の鼓動が早くなって、それを動悸として耳に感じた。深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。
ーー多くの仲間が死んだ。君が比較的良く知っているサクマもエナも、この前の戦いで殉職した。私たちが、文字通り命を懸けて守ってきた平和は近いうちに崩れ去る。だからせめて、その為の心の準備はしておいて欲しい。
ーー幸運を祈る。
 そこでメールは終わっている。
 私は居ても立っても居られなくなって、彼女の携帯に電話を掛けた。携帯を耳に押し当てて、彼女が出るのを待つ。
 四回、五回とコール音だけが鳴り、諦めかけていたところでコール音が途切れた。
「もしモし」
「ユリ! よかった、無事だったんだね!」
「……」
「ユリ、大丈夫?」
「あア、ウん。なンデもナいよ。」
「さっきのメールの話だけれど、発表はしようと思う。今までも私は隠すことに疑問を感じていたところもあるし、緊急事態になったときに、知識があるのとないのとじゃ大違いだと思うから」
「わカっタ」
「ていうかユリ、知らない間に大分カタコトになってない? この前会った時もそんな感じだったっけ?」
「キのせイだよ。……ゴめン、もウ切らナきゃ」
「待ってユリ、切る前に一つだけ質問に答えて! この前食べに行った、日本一美味しいって自称してたカツ丼屋さんで私が何を頼んだか! 覚えてる!?」
「……」
 そこで電話が切られた。
 偶然切れただけなのだと思いたくて、不安な心と震える指先を力で抑えつけてもう一度かけ直してみると、今度はすぐに通話は繋がった。
「ねえ、ユリ! さっきの質問なn」
 携帯が床に落ちた。
 画面には、通話中の三文字が光っている。



 彼女たちが守ってきたハリボテの平和が、音を立てて崩れ落ちていく瞬間だった。









.


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

16/10/21 三風党

すみません、難解で落ちがわからなかったです。

16/10/21 しーた

>主査さん
読んでくださってありがとうございます。
落ちを簡単に説明しますね。
今まで、ユリとその仲間たちは宇宙人と戦っていました。今回、ついに地球の場所が宇宙人に発見されてしまうところから物語は始まります。主人公が電話をした時、ユリはすでに宇宙人たちに操られてしまっていたために記憶を無くし、カタコトになってしまいました。主人公は違和感を感じて電話をかけ直しますが、すでにすぐ近くまで宇宙人が迫ってきていて、通話終了のボタンを押す間もなくやられてしまうということです。この後、地球は文字通り征服され、ユリたちが守ってきた形だけの平和は崩れ去るのです。

ログイン