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海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

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平和の宝石

16/10/13 コンテスト(テーマ):第120回 時空モノガタリ文学賞 【 平和 】 コメント:0件 海見みみみ 閲覧数:1241

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 深夜の博物館。警備員の男女三人組は集まると話し合いをした。これからこの博物館から宝石を盗み出す。そのための作戦会議だ。
 作戦は既に決まっており、宝石を盗み出すのはとても簡単な事だった。セキュリティは警備員である彼らが握っている。それに目的の宝石は他より警備が薄く、盗むのが楽だった。
 宝石を盗み出し、三人は車に飛び乗ると逃避行を始める。
「楽な仕事だったな!」
 すきっ歯の男が車を運転しながら高笑いをあげた。
「これで私達も大金持ちね!」
 キツネ目の女は宝石を抱えると、うっとりとため息をつく。
「なあ」
 そこに坊主頭の男が声をかけてきた。
「どうした? 今更ビビって自首しようなんて言うんじゃないだろうな」
「違う。俺達って三人組だよな」
「そうだけど。それがどうかしたの?」
「だったら」

「なんで車に四人、人が乗っているんだ?」

 坊主頭の言葉を聞き、残り二人が慌てて振り返る。
 そこには確かに四人目の乗客がいた。坊や。どこからどうみてもただの子どもだった。
「なんでガキが乗っているんだ?」
「……その宝石、返してもらえませんか?」
 坊やは虫がささやくような小さな声でそうつぶやいた。
「はあ?」
「……その『平和の宝石』はあそこに置かれていないと世界平和を守れないんです」
「なに言ってるの、このガキ」
「頭おかしいんじゃねーか」
 三人組は相手が坊やと見ると、不気味ではあるが余裕を取り戻し、笑い出した。それから三人が考えた事は一つ。『この坊やをどう処分するか』だ。
「……返してもらえないと困るんです」
「なんでだよ」
 すきっ歯が坊やに問いかける。
「……だって」

「……あなた達、死にますよ?」

 坊やが発した言葉にその場の空気が凍りつく。
「死ぬって、どういう事だよ」
「舐めた事言ってんじゃないわよ、ガキ!」
 キツネ目が坊やの首元を掴む、その時、すきっ歯が声をあげた。
「きっ、効かない!」
「? 何がだ」
「ブレーキが効かねえ!」
 すきっ歯の言葉に、残り二人の顔が青ざめる。
 車が加速していく。ブレーキの効かない車でこの速度は致命的だった。
「飛び出すぞ!」
 坊主頭が声をあげ、キツネ目と二人、車のドアを開け外に脱出する。しかし、
「シートベルトが外れねえ!」
 すきっ歯だけは脱出が一歩遅れた。そのまま車が暴走し、壁に激突する。すきっ歯は即死だった。
「そんな、こんな事って」
「……だから、平和の宝石を返してください」
 そこには坊やの姿があった。残された二人は恐怖し、同時に憤怒した。
「これは貴様のせいか!」
 通常では考えられない事。しかしこの時坊主頭は頭が混線し、気づけば坊やの首を掴んでいた。
「……あなた達が宝石を返してくれれば良いんです」
「今更返せるかよ。ふざけやがって!」
 激怒する坊主頭。

 そこに大破したすきっ歯の車を避けようとしたトラックが迫る。

「危なっ!」
 最後まで言い終わる前に、坊主頭はトラックに轢かれてしまった。人肉ミンチが一つ出来上がりだ。
 キツネ目は狼狽した。今自分の手元には坊やの言う平和の宝石が握られている。宝石を返さなければ、自分まで死ぬんじゃないかと恐怖した。
「……返してもらえませんかね。お願いします」
 キツネ目が振り返ると、そこには一緒に轢かれて死んだと思っていた坊やの姿があった。
「あ、あんた一体何者なの?」
「……それは僕にもわかりません。お願いします。平和の宝石を返してください」
「わかった、返す! 返すよ!」
 キツネ目は宝石を坊やに返そうとした。
 だがここでキツネ目に欲が出る。このまま逃げ切れば宝石は独り占めだ。だったらこの難局を乗り越えてみせる!
 キツネ目は握りこぶし程ある平和の宝石で坊やの頭を殴った。坊やが昏倒する。
「今更返せるかよ、トンマが!」
 キツネ目はそう叫び声をあげ、宝石を天に掲げた。
「これは私一人の物だ!」
 キツネ目が高笑いする。しかし彼女は気づいていなかった。自分の背後に、先ほど坊主頭を轢き殺したトラック運転手がいることを。
 運転手が背後からキツネ目の首を絞める。
「な、何よア、ンタ」
「人を轢いちまった。俺には家族がいるんだよ。目撃者はアンタだけ。だから」
「そんな、他にもそ、こにいる坊やが」
「坊や? そんなヤツはいないんだよ、クソが!」
 首の骨が折れる音。
 こうして平和の宝石を盗んだ三人組は、全員死亡した。

 坊やは平和の宝石を手に持つと、博物館へと向かっていた。平和の宝石を守る存在である坊や。だが坊やには思うところがあった。
「……平和を守るために人を殺すって、なんか矛盾してるな。でも平和のためなら仕方ないよね」
 そうつぶやくと、坊やは夜道を駆けて行った。


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