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葵 ひとみさん

「フーコー「短編小説」傑作選8」にて、 「聖女の微笑み」が出版社採用で、出版経験があります。 第114回 時空モノガタリ文学賞 【 パピプペポ 】最終選考を頂きました。 第116回 時空モノガタリ文学賞 【 裏切り 】最終選考を頂きました。 心からありがとうございます。 感想、心からお待ちしています^▽^ Twitter @Aoy_Hitomi

性別 男性
将来の夢 毎日を明るく楽しく穏やかにおくります。
座右の銘 白鳥の湖、努力ゆえの優雅さ――。

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お好み焼きと和平君(かずひらくん)

16/10/11 コンテスト(テーマ):第120回 時空モノガタリ文学賞 【 平和 】 コメント:0件 葵 ひとみ 閲覧数:1147

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 箱庭和平(はこにわかずひら)君――

彼は父親からベトナム戦争が早く終結されて
「平和」になりますようにという願いを込められて、和平(かずひら)と名付けられた。
彼は梨がとても美味しいので有名な、埼玉県蓮田市に住んでいる。

彼の父親は内村鑑三氏を尊敬する敬虔な無教会派のプロテスタントの信者であり、
母親はカトリックのお嬢様短期大学を卒業しているアメイジング・グレースの大好きな
敬虔なカトリックの信者なのである。

そんな厳格な一神教のキリスト教徒の家庭に育ったので、
和平君は生まれてこのかた多神教の日本の神社に御参りすることを禁じられていて、
45歳を過ぎたいまでも「お好み焼き」を食べたことがないのだ……

それで、あのテキ屋のお好み焼きの味の何とも言えない醍醐味を知らないのである――

***

私、益子伊織(ましこいおり)は、岡山県倉敷市に住んでいて、和平君と同い年の45歳過ぎの独身男性である。
私の母はうちの家業のテイクアウトの倉敷餃子屋さんの創業者であり、その味覚の鋭さから、一代でそのテイクアウトの倉敷餃子屋さんは全国グルメ誌に2回掲載されるレベルまでになった。
様々なこだわりはあるのだが1番のきめては鹿児島の黒豚と沖縄の幻のアグー豚のそれぞれの豚肉の秘密の配合のブレンドにあると思う。
チェーン店化はせずに品質と味を最優先して細々と営業を毎日続けている――

そして、私の母は、京都育ちでテキ屋のお好み焼き屋さんのバイト経験もあり、
岡山県という関西と広島に挟まれている土地柄もあり、
美味しい関西風お好み焼きも広島風お好み焼きも両方つくれるのだ。

私は母屋から離れの部屋に住んでいるので、居心地がよいらしく色んな男友達が
ブラリと泊まりにやってくる。

その友達たちが口をそろえて言う、
「伊織ちゃんのお母さんのお好み焼きの味は最高だね」と……

***

和平君が次に埼玉県からうちへ泊まりに来ることになったのだが、

何故か私と和平君の話の流れで、日本に投下された原子力爆弾の話になった。
「もし、自分がアメリカ軍の軍人で原子力爆弾を落とす命令を受けたらどうするか?」と、
私は「軍法会議にかけられてもいいから多数の死傷者がでるから落とさない」とハッキリと答えた。
和平君は「自分が軍法会議にかけられるのはイヤだから躊躇なく落とす」
という意見だった――

***

私が口を滑らせなければ良かったのだが、母と私が餃子をつくっている合間の休息時間に、母がその原子力爆弾の話を聴いて、
和平君の発言が私の母の逆鱗に触れてしまい、

「お好み焼きはあなたがつくりなさい」と母は私にぶっきらぼうに言った。

和平君は、私が知る限り温厚な性格の母を激怒させたはじめての人間であり。

そして、和平君が私の部屋に泊まりに来ることも私の母のお好み焼きを味わうこともおそらく永遠になくなってしまったのである。


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