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長月五郎さん

執筆歴だけは長いが、それだけ。

性別 男性
将来の夢 葬式は散骨を希望。
座右の銘 雨にも負けず……中略……そういう人に私はなりたい。

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超魔術

16/10/10 コンテスト(テーマ):第119回 時空モノガタリ文学賞 【 お笑い 】 コメント:0件 長月五郎 閲覧数:552

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 えー、お笑いを一席申し上げます。 
 一昔前ですと、手品と申しまして、持っていたステッキが一瞬で花束に変わる、何も入っていない帽子からウサギが出てくる、まあそれだけで観客はオオッとどよめいたものでございますが、最近のマジックは空中を歩いて見せたり、手がガラスを突き抜けてしまったり、あるいは未来予測をして、それがピタリと当たってしまったりと、このマジシャンは本当に超能力者とか宇宙人じゃないのか、と思ってしまうほどの不思議なマジックを見せてくれて、そのうちに「これから地球を消して見せます。ワンツースリー!」なんていう人も出て来るんじゃないかと、それはもう恐ろしい限りでございます……。

「パパ、ママ、超魔術のテレビ始まるよ。」
「おおそうかタカシ、番組も楽しみだけど、今日のゲストは月ちゃんだから、見逃せないよな。」
「おまけに生放送だぜ、パパ。月ちゃーん、早く会いたいよう。」
「あらなあに、その月ちゃんて?」
「なんだお前知らないのか、美少女コンテストでぶっちぎりで優勝した後、人気急上昇中の月丘夢見ちゃんだよ。つややかな黒く長い髪、鈴を転がすようなかわいい声。男だったら一目でとりこになっちゃうよ。ああ、月ちゃーん、早くその顔を見せて。月ちゃーん。」
「何が、月ちゃーん、よ。高校生のタカシならともかく、いい年かっぱらったあなたまで。それに、ビール飲んだ後はいつも、腹が苦しいとか暑いとか言ってズボン脱いでパンツ姿で。あなたに今必要なのは、月ちゃんじゃなくてダイエットでしょ。あら、番組始まったのね。さっそくゲスト紹介。……この子が月ちゃんね。まあかわいい」
 テレビでは超魔術が始まったようでございます。術者はミスター・オメガと名乗る若手マジシャン。いきなり手をさっと振ると、花束が現れて月ちゃんにプレゼントするところからマジックが始まりました。その凄いこと、ゲストや司会者が心に思っていることを、ドンピシャ当てる。七色のトランプがオメガが手を振るだけで乱舞し、最後にはオメガの背後でオーラのように虹の形を作る、など、など、スタジオ内はどよめきの連続でございます。
 そのうちに、最後のマジックとなりました。スタジオ内に、真ん中がくり抜いて穴が開いてある中身空っぽの箱が用意されて、ここから人間を出すというのでございます。それも、今このテレビを見ている視聴者の家から空間を越えて引っ張って来る、と言うのです。それも、インチキでないことを証明するために、ダーツでその家を選ぶというのですから、前代未聞でございます。
「へえ、ダーツで選ぶといって日本地図が用意されたよ。月ちゃんの熱心なファンの念を感じるから、その人を呼び出すんだと。地図を回転させてオメガがダーツをして……、おや、この県が当たったみたい。次に県を拡大させた地図でもう一度ダーツ。おい、この町だよ。地図が拡大されて大きくなってくけど、どこかで見たような……えっ! ダーツが刺さった所ここの家だよ!」
「ええっ! あら本当だわ」
「すげえや、でも、これからどうなるの? あ、オメガが箱に向かってクイックイッと指曲げてる。そこから出て来いと言ってるみたい。うわっ!」
 驚くのも無理はありません。なんと、テレビ画面から手首が出てきて指を曲げて呼んでいるではありませんか。
「あれパパどうしたの? 突然立ち上がって」
「いや、なんだかわからないけど、足が勝手に動いて……」
「あらっ、あなた、あなたのテレビに触った手が中に吸い込まれてくわ」
「ぎゃっ、吸い込まれる、吸い込まれる。みんな、止めてくれえ! 俺は今、パンツ姿だ。このままで月ちゃんの前になど出られない。」
 こうなったら、オメガの魔力との力比べでございます。ママとタカシ君が一生懸命パパの体を引っ張ります。
「うんしょうんしょ」
「よいしょよいしょ」
 さあ、この引っ張り合い、どちらが勝利するでしょうか?
 そのうちに、ビリビリビリッ。パンツが破れてしまいました。
「あら、やっぱり百均のパンツはダメねえ」
「何言ってんだよママ、ああっ、ママが力を抜いちゃったからパパが吸い込まれちゃった!」
 テレビスタジオでは、パパが出て来たので歓声が起きましたが、パンツをはいてないのがわかって一転悲鳴が沸き起こりパニック状態。スタッフがタオルを持ってきてパパに渡したのでどうにか続行となりました。ゲストの月ちゃんとパパが並びます。
「私もどんな方が来るかはわからなかったのですが、どうやら美女と野獣の組み合わせになったようですねえ」
 少し毒舌があるオメガの言葉に、パパは下半身を指さして、
「いえ、そう言うよりは『月とスッポンポン』」
 おあとがよろしいようで……。 
              (了)


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