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泡沫恋歌さん

泡沫恋歌(うたかた れんか)と申します。

性別 女性
将来の夢 いろいろ有りますが、声優ソムリエになりたいかも。
座右の銘 楽しんで創作をすること。

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タイムレンジ

16/10/10 コンテスト(テーマ):第118回 時空モノガタリ文学賞 【タイムスリップ 】 コメント:6件 泡沫恋歌 閲覧数:987

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「ついにタイムマシンが完成したぞ!」

 H・G・ウェルズの古典的SF小説の時代から、言い続けられたそのベタな台詞を、今、口にする科学者がいる。
 彼は大和工科大学、工学部物理学研究室の室長、Dr.山田その人である。
 天才的頭脳をもつ科学者だといわれるが、いったいどんな研究をしているのか、その詳細は明らかではない――。
 Dr.山田研究室、このラボには博士と助手の佐藤しかいない。二人は大学に内緒でなにやら怪し気な研究をやっているらしい。

「佐藤君、完成したよ。これがタイムマシンだ」
 テーブルの上でパッと見、電子レンジにしか見えない器械のことらしい。
「本当にこれがタイムマシンなんですか? ただの電子レンジにしか見えないけど……」
 助手の佐藤が疑わしい気に、Dr.山田に訊ねた。
「正真正銘のタイムマシンだ! 疑うんだったら、実験してみせよう」
 そういうとDr.山田は手にアボカドをひとつ持っている。
「佐藤君、このアボカドを触ってみたまえ」
 Dr.山田に渡されたアボカドを手に持って触ってみる。
「どうだい触った感じは?」
「硬くてまだ食べ頃じゃない」
 アボカドをタイムレンジに入れて、旧式のレバーを捻る。するとオレンジ色の光がチカチカ点滅して、小さな稲妻が走った。その後、中のアボカドが消えてしまった。
「あ、あれ? アボカドどこにいったんですか」
「よし、もうそろそろ戻ってくる頃だ」
 Dr.山田の声と同時にタイムレンジがチンと鳴った。中には先ほどのアボカドが入っている。それを取り出して、再び佐藤に渡す。
「もう一度調べてくれたまえ」
 アボカドを触った瞬間、佐藤は叫んだ。「博士、柔らかくなってます。熟して食べ頃になってる」それは指で皮が剥けるほどだった。
「そのアボカドは五日後の世界にいって還ってきたんだ」
「まさか! それが本当だとしたら凄い」
「もっと他の物で実験してみようか」
 そういうとDr.山田は佐藤のデスクの上に飾っている、サボテンの鉢を手に取った。
「あっ! 何をする気ですか? それは僕の大事なステラだ」
「ステラ? 君はサボテンに名前を付けてるの」
「別にいいでしょう。僕のサボテンなんだから……」
「よく見ると小さな蕾がついてるね。これをタイムレンジに入れよう」
「やめてください!」
 佐藤の制止を振り切って、サボテンをタイムレンジの中に入れてDr.山田はレバーを捻った。
「今度は七日後の世界へ転送した」
 戻ってきたサボテンは一瞬にして蕾が開花していた。
「どうだい。きれいな花が咲いただろう」
「本当だ。ビックリしました博士、まさにミニ・タイムマシンですね」
「タイムレンジさえあれば、メロンも食べ頃だし、ぬか漬けだって即食べられる。まさに夢のマシンだよ」
「それしか使い道がないんですか?」
「実用化に向けてこのタイムレンジを量産したい。テレビでCM流したりして、キャッチコピーは『チンするだけで時間旅行が叶います!』佐藤君どうかね、素敵なコピーだと思わないか」
 と、上機嫌のDr.山田だった。
「……で、これ開発するのにいくらかかったんですか? 実用化したら値段とかどうすんの?」
「これ作るのに二十年かかったし、かなり研究費を注ぎこんだ。お値段は一台五千万円くらいでどうだろう」
 その金額を聞いて、助手の佐藤がズッコケた。
「あのね! 食べ頃アボカドのために一台五千万円も払う人がいますかっ!」

 テーブルの上の電子レンジを挟んで、Dr.山田と助手が対峙していた。
「役に立たない物しか発明できない。ぽんこつ博士!」
「佐藤君、いくら何でも言い過ぎだろう」
「違うんですか?」
「一部当ってるかも……」
「そんなことだから、Dr.山田研究室はみんなからゴミとか屑とか穀潰しとか言われるんです。助手の僕まで博士のせいで白い目で見られてます。ダメ科学者だとちゃんと自覚してますか」
 完膚なきまでのDr.山田への口撃だった。
「佐藤君よ、私の作ったタイムマシンがそれだけだと思ってるのかい?」
「はぁ? どういう意味ですか」
 ぶはははっと、Dr.山田がまるでラスボスのように笑った。
「実はこの研究室全体がタイムマシンになっているんだ」
「ええぇ―――!?」
「佐藤君、君は昨日の佐藤君なのだ」
 研究室のドアが開いて、今日の佐藤が現れた。そして机の抽斗から明日の佐藤が飛び出した。
「な、な、なんですか!?」
 三人の佐藤が顔を合わせて慌てふためいている。
「実は研究室型タイムマシンは昨日完成して、佐藤君で実験してたのだ」
「なんですってぇ〜」
「これでわたしが天才科学者だと分かっただろう」
「ぽんこつ博士めぇ、許さん!」
 Dr.山田は三人の佐藤から蹴りを入れられて、目から火花を飛ばしてタイムスリップしたという。


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このストーリーに関するコメント

16/10/10 泡沫恋歌

アボカドの食べ頃ってなかなか分かりにくいし、タイムレンジがあれば便利だと、
思うけれど・・・一台五千万円はいくらなんでも高すぎる(笑)


そういうくだらないタイムマシンのお話でした。

16/10/25 泡沫恋歌

海月漂 様、コメントありがとうございます。

Dr.山田と佐藤君による、おバカな発明話です。
ボケとツッコミの漫才コンビみたいな、この二人のコンビは自分の中で
キャラが完成してるので書いてて楽しめる。

たぶん、Dr.山田なら未来にいっても逞しく生きていると思います(笑)

16/11/01 冬垣ひなた

泡沫恋歌さん、拝読しました。

Dr.山田と佐藤君のお話、楽しかったです。夢のようなお話が、一台5千万円で叶う!ハリウッドのセレブやアラブの石油王なら買ってくれるかもしれませんね。タイムスリップしたDr.山田、過去でも未来でも奇妙な研究を続けていそうな気がします。

16/11/02 泡沫恋歌

冬垣ひなた 様、コメントありがとうございます。

一台5千万円で食べ頃のアボカドにしたい人って、アラブの石油王でもちょっと難しいかも。
まったく社会性のないDr.山田と佐藤君のぽんこつコンビですから、現代に居ても未来に行っても・・・
あんまり生活環境が変わらなそうです。

16/11/08 そらの珊瑚

泡沫恋歌さん、拝読しました。

いつもの二人の掛け合いが楽しかったです。

チンしてあったかくなっただけのアボカドなんじゃない?(笑)と
山田博士にツッコミながら読ませていただきました。

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