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W・アーム・スープレックスさん

性別 男性
将来の夢
座右の銘 作者はつねにぶっきらぼう

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奇妙な行動

16/10/09 コンテスト(テーマ):第91回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:635

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不思議なこともあるものです。
夜、八時過ぎになるときまって、開け放した押入れの中から、蛞蝓があらわれるのです。
新たに越してきた一軒家にすんでほぼ一か月がたち、梅雨がすぎたころあたりから、体長四センチほどの、黒ずんだ胴体をしたのが、ぬめぬめと畳をはっているのでした。
当然のように、家人が悲鳴をあげました。ゴキブリほどではないにしても、この種の軟体動物はとくに女性からは忌避される存在といえるでしょう。
私は勇気をふるいおこして、紙の切れ端で蛞蝓をつまみ、ベランダの窓を開けて庭に、ポイとすてました。これがゴキブリだったら、じぶんがこんなに残忍な性格だったのかと一驚するほど、なにがなんでも相手の息の根をとめずにはおかないところが、蛞蝓の場合は目にみえないところにやってしまえばそれで気がすみました。
はじめて出てきた日は、それですみました。何日かしてふたたび、やはりおなじ押入れからわずかにでたところに、おなじように蛞蝓が這っていたのです。色合い、サイズ、その身のくねらし方からそれが、同じ蛞蝓なのはどうやらまちがいなさそうです。あるいはよく似た蛞蝓同士がしめしあわせて、私の部屋にくりかえし出現している可能性もなくはありませんが、いくらなんでもそこまで暇な蛞蝓ばかりが私の家にあつまったりはしないと思うのです。
家人が、最初の日とおなじように悲鳴をあげました。私もまた、動画をリプレイするかのように、紙の切れはしを手にしてその蛞蝓をつまみあげ、窓から暗い庭にほうりすてました。
蛞蝓はそれから、今日にいたるまで十日ちかく、あらわれては、すてられ、またあらわれてはすてられを、飽きることなくくりかえすのでした。
もしかすると蛞蝓は、私につままれて捨てられることに、ある種の自虐的な喜びを知ってしまったのではないか。そんなことを本気で考えてしまうほど、蛞蝓の奇妙なそれは行動でした。
家人も最近では、その姿をみても以前ほどは気味わるがることなく、たまに天気のいい日など姿をみせなかったりすると、どうしたのかしらとその身を案じたりするのでした。


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