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宮瀬晶汰さん

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the love in the war

16/10/02 コンテスト(テーマ):第90回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 宮瀬晶汰 閲覧数:938

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 兵士として国のために働くことはとても名誉なことだと思うし、家族もそう思ってくれている。妻もだ。妻には俺が殉職したとしても悔やまないでくれと伝えてある。俺は大好きな国のために精一杯働いたのだからと。
 このご時勢、殉職なんて珍しくない。けど、だからこそ人の死を簡単に考えてはいけないと言う人もいる。それはそうだ。人の命を簡単に扱って言い訳が無い。
 でも俺はたとえ自分の命が仕事で失われたとしても、それは命を軽く扱われた結果だとは思っていない。誰かがやらなければならないのだ。誰かがやらなければ国の平和は訪れない。

 今日も朝早くに起きて、出勤をする。玄関で靴を履くと、妻が「気をつけてね」と言ってくる。背中越しに「ああ、それじゃ言ってくるよ」と言う。なんだか最近面と向かってこういうことを言うのが照れくさくなってきたのだ。けれども言わないわけには行かない。悔やまないでくれ、と妻に言ってしまった以上、あのときちゃんと挨拶をしていれば、なんてことになってはいけないのだ。

「愛してる」

 妻の目を見てそう言う。妻は嬉しそうに、そして少し恥ずかしそうに微笑んだ。

「今日の夜、もう一度その言葉を聞かせてね」

 その言葉に頷いてから、玄関の扉を開ける。さあ、今日も戦争だ。



 兵士の仕事にはいくつか種類がある。防衛関係、偵察関係、そして攻撃関係。基本的には一つの仕事をこなしていくのだが、たまに別の仕事をやらされるときも或る。それはへまをして捨て駒に使われたり、ということや、指揮官としての、または戦闘能力を買われてなど様々だ。
 戦闘部隊にいる身としては、この部隊の恐ろしさを知ってから、そういった才能を買われて配属された新人を見ると少し心が痛むこともある。

 その日はよく晴れていた。森の中を進んでいたときだった。突然、一番前を歩いていた兵士が、短い悲鳴を上げながら倒れこむ。それだけで部隊全員が何がおきたのか察知できた。全員が一斉に地面に伏せる。頭上を弾が飛ぶ。こちらも応戦するが、相手は数が多いようだ。まるで戦闘力が違う。

 仲間が次々に撃たれて行く。
 周りに硝煙と血の匂いが漂う。
 少しはなれたところで爆風。手榴弾が使われたようだ。
 気がつくと足から血が出ていた。どうやらいつのまにか撃たれたようだ。
 上を見上げる。
 木々の隙間から日の光がさして、心地よさそうだった。
 銃声。
 仰向けに寝転がる。
 妻の顔を思い出す。
 木漏れ日に愛した笑顔が浮かんでくる。
 頬に暖かいものが流れた。
 足跡が近づいてくる。周りのみんなはすでにやられてしまったらしい。
 空高く手を上げる。
 銃声がして腕から血があふれ出す。
 それでもひたすら手を伸ばし続ける。
 あの笑顔に届かせるため。

 見ると周りには数人の兵士が立ってこちらに銃を向けていた。
 ふっと少しだけ微笑む。

「すぐにそっちにいくよ」

 どうにかそれだけは口にすることが出来た。


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