1. トップページ
  2. 笑えない店

海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

性別 男性
将来の夢 プロ小説家になること!
座右の銘 焼肉定食!

投稿済みの作品

0

笑えない店

16/09/27 コンテスト(テーマ):第119回 時空モノガタリ文学賞 【 お笑い 】 コメント:0件 海見みみみ 閲覧数:1156

この作品を評価する

「決まった時間笑わなかったら、何でも願いの叶うお店って知ってる?」
 高校の昼休み。女友達の翼がそんな事を言い出した。
「胡散臭い話だな。時間以内に笑ったらどうなるんだ?」
「魂を抜かれるんだとか。あくまでウワサだけどね」
 そう語る翼の目は、どこか期待に満ちている。
「もしかしてその店に行ってみたいのか?」
「さすがリョウちん、話がわかる!」
 翼はノリノリで俺の背中を叩いた。
「放課後、そのお店に二人で行かない?」
「俺も行かなきゃダメか」
「ダメ。一人じゃ怖いもん」
 まったくとんだワガママぶりだ。
 こうして俺達は放課後『笑えない店』に行く事になった。

 放課後。
『笑えない店』は商店街の裏路地にあった。地下にその店はあるらしく、小さく『笑えない店』と書かれた看板が置かれている。
 この時点で俺は帰りたくて仕方なかった。こんな怪しすぎる店、入るのは絶対に嫌だ。
「リョウちん。早く入ろう」
 しかし翼が行きたがるので、仕方なく後に続く。
 店の中は薄暗く、お香の匂いがした。店の奥にテーブルがあり、そこに老婆が一人座っている。
「ようこそ『笑えない店』へ」
 老婆がニタリと笑う。その姿は実に不気味だ。
「ここはウワサ通りのお店なんですよね」
「左様でございます」
「それじゃあ……」
 翼が老婆に耳打ちする。話を聞き終えると、老婆はうしゃしゃと笑い声をあげた。
「もちろん叶えられますよ。この場合、三十分笑わなければ願いを叶えましょう」
「本当ですか! それじゃあお願いします」
 とんとん拍子で話が進み、翼は老婆の挑戦を受ける事になってしまった。
「大丈夫なのかよ。もし笑ったら、魂を抜かれるって」
「三十分くらい平気だって。リョウちんは外で待ってて」
 そのまま俺は押し出され、外で待つ事になってしまった。
 果たしてこんな店を信用して大丈夫なのだろうか。俺は心配しながら時を待った。

 外に出てから三十分経つかという頃。突然店から悲鳴が響いた。
 俺は慌てて店に飛び込む。店の中では翼が倒れていた。近づいてみると息をしていない。そう、翼は完全に死んでいた。
「残念です。あと一分耐えれば、願いも叶えられたのに」
「翼に何をした!」
 老婆に掴みかかる。すると老婆は再びうしゃしゃと笑い声をあげた。
「なに、この小瓶の中に魂を封印しただけです。大事なコレクションとして」
「ふざけるな、翼の魂を返せ!」
「何をおっしゃる。このゲームに参加すると言ったのは彼女の方です。私は何も悪い事をしてません」
 確かに老婆の言うことは正しい。だがここで翼を見捨てるわけにはいかない。
 俺は覚悟を決めた。
「……何時間必要だ」
「と、言いますと?」
「翼の魂を取り返すのに、何時間笑わなければいいのか聞いているんだ!」
 俺の言葉に対し、老婆が笑う。
「これは素晴らしい。では五時間笑わなければこの魂を解放しましょう」
 老婆と俺の間で交渉成立する。
「さあ、ゲームスタートです」
 老婆はそう口にすると、何やらリモコンを取り出した。同時に部屋いっぱいに映し出される映像。
 これはズルい。人気芸人の定番ネタから、タモリの四ヶ国語麻雀なんていうマイナーなネタまで、お笑い動画が盛り沢山じゃないか。
 様々な映像が出てきては、俺を笑わせようとする。どれも普段なら大笑いして観ている事だろう。だが今は笑うわけにはいかない。俺はある策を講じる事にした。

 それから数時間。このお笑い地獄になんとか俺は耐えてきた。そこに老婆が声をかけてくる。
「ところで、彼女。どんな願いをしてきたか気になりません?」
 俺は老婆を無視した。しかし老婆は話を続ける。
「あなたと結ばれたい、そう彼女は願ったのですよ」
 唐突にもたらされた事実。翼が、俺の事を? 俺の心に隙が生まれる。

 その瞬間、壁一面に老婆の変顔が映し出された。

 まさに不意打ちの最終兵器。これは笑わずにはいられない。だが、
「ほう、耐えましたか」
 俺はこのトラップにも笑わなかった。だが代償も大きい。口から血液がこぼれる。
「こっ、これは」
 老婆は驚いて腰を抜かした。なぜか。
 俺は笑わないために、噛み切らないギリギリの強さで舌を噛んで笑いを抑えていたのだ。
「さあ、五時間経ったぞ。翼の魂を返せ」
「かっ、返してやる。返してやるさ! こんな命知らずな客、もうこりごりだ!」
 そう老婆が口にすると、俺の意識は暗転した。

 目覚めるとそこは外だった。どうやら商店街のすぐ近くにいるようだ。
 口の中を確かめてみる。なぜか舌の傷も治っていた。
「うーん」
 俺の膝の上では翼が眠っていた。呼吸をしている。無事魂を取り戻したのだ。
「さて、起きたらなんて言ってやろうかな」
 俺は翼の頬を突きながらつぶやいた。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン