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にぽっくめいきんぐさん

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貞子の出る本屋

16/09/26 コンテスト(テーマ):第117回 時空モノガタリ文学賞 【 本屋 】 コメント:1件 にぽっくめいきんぐ 閲覧数:1104

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「貞子が出る」と噂の本屋がある。
 ホラー小説「リング」「らせん」「ループ」三部作に登場する、あの貞子だ。

 街の本屋はネット書店の攻勢にあって激減している。そのテコ入れと考えても、これはかなり刺激的だ。

 早速行ってみた。

 まずは平積みの雑誌を手に取る。
 表紙グラビアから、水着姿の貞子が這い出てきた。
 スレンダーボディを彩るは血の色をしたマイクロビキニ。
 二重の意味で刺激的。

 ベストセラー棚のハードカバーからは、芸人の格好をした貞子が、火花を散らしながら現れた。

 歴史小説から出てきた貞子は、邪馬台国の女王「卑弥呼」になっていた。

 株の運用本からは、オプション取引に失敗した貞子が。かなり悔しそうだ。

 絵本からデたのは、かわいくデフォルメされた貞子だったが、やることは「呪い」なので、子供には良くない。

 日本地図には、各地に「貞子スポット」が描かれていた。貞子ボールでご当地貞子をゲットする仕様のようだ。

 漫画「ドラえもん」の4次元ポケットから「キカカキ!」という金属音と共に貞子が取り出された(ひみつ貞子)。

 サッカー雑誌は、日本代表のフォワードが蹴り込んだ、まさにゴールを割らんとするサッカーボールから貞子がにゅるんと出てきた(ボールは友達ってか貞子)。

 凄まじかったのは国語辞書だった。

 語彙に応じた貞子が辞書のあちこちから出てきたのは、圧巻の一言に尽きる。
「夏風邪」という語彙から、貞子が、げほんげほんと咳き込みながら登場した時は、律儀だなと思わず唸った。

 アダルトコーナーは怖くて入れなかった。

 問題のオリジナル小説「リング」「らせん」「ループ」三部作はどうだろうか?

 ……売り切れだった。

 客は皆、考える事はみな同じらしい。平積みの「三部作コーナー」の棚は空になっていた。
 本棚から出てきても良いのに、とも思ったが、あくまで「本」からしか貞子は登場しないつもりらしい。

 ◆

 ちょうどその時、本屋入口の警報が、ビービーと鳴った。

 万引きだ!

 しかし、本に付けられたICタグと、入口のICタグセンサーとによるセキュリティは、それを見逃さない。各種の本の中から一斉に飛び出した、たくさんの貞子が、万引き犯に追いすがる。

 本屋のある2階の透明ショーウィンドウ越しに、外の道路へとエスカレーターを慌てて駆け下りる学生っぽい男と、それを追って殺到する貞子達が見えた。

 そのショーウィンドウには、自分も含めた客達がこぞって張り付いて、万引き犯逮捕の瞬間を目撃することになった。

 ◆

 貞子達が2階の本屋に戻って来た。

 アルバイト店員に万引き犯の男を引き渡すと、貞子達はそれぞれ、元の本へと戻っていく。

 主に「ミステリー」の棚へと向かう、警察のコスプレをした貞子が多く見られた。

 次いで、暖簾をくぐってアダルトコーナーに戻っていく、テカテカの、ちゃちいビニール生地で出来た「府警コスプレ」状態の貞子も散見された。

 さて、色々と堪能させてもらった。

 1冊だけ本を買って、帰ることにする。

 ただ、家で貞子に出られると、夜中とかに怖くて困る。

 探してみると、貞子が現れない本が1冊だけ、その本屋にあった。

 東京Dランドのガイド本だ。

 東京Dランドは、著作権法で強力に保護されているのだ。

 さすが、夢の国と言うべきである。


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このストーリーに関するコメント

19/02/02 雪野 降太

拝読しました。
二次創作、ということになるのでしょうか? 作者様は『リング』シリーズがお好きなのだと感じられる作品でした。
読ませていただいてありがとうございました。

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