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はっぱさん

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わたあめの記憶

16/09/21 コンテスト(テーマ):第118回 時空モノガタリ文学賞 【タイムスリップ 】 コメント:0件 はっぱ 閲覧数:593

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「お祭りなんて何年ぶりだろー」
「そうだねー…」
とある夏の日、わたしは高校の友達と夏祭りにきていた。
自分でいうのもなんだが、わたしはなかなかのお嬢様である。箱入りまではいかないけど、それなりに大きな豪邸で、それなりにお金があって、それなりに英才教育というものを受けてきた。そのため、こういうお祭りなどには全く縁がなく育ってきたのである。そんな私でも昔に1回だけ小さなお祭りに花火をみにいった記憶がある。その時のことはほとんど覚えていないけど、唯一覚えているのが、空に舞う大きな花火にまけないくらいに大きくてふわふわなわたあめだった。なぜわたあめがこんなに記憶に残っているのかはわからないけど、そのときまで甘いお菓子といったら、食べるのがもったいなくなるような綺麗でかわいいケーキが普通だったわたしには、とても衝撃的なものだったと思う。
「なにから食べよっかー?」
「うーんそうだなあ…」
と、屋台をぶらぶら見ていたら、ふと目に止まったものがあった。
「わたあめ…」
「わたあめ!なんか懐かしいかも!食べよっか!」
気づかないうちに声に出ていたのか、それを聞いた友達は普通に賛成してくれて、わたあめの屋台に向かった。いろんな袋にはいって、いろんな色をしているわたあめをみたら、なんだか懐かしい気持ちになった。適当に選んで、お会計を頼むと自分と同じくらいか、少し年上くらいの男の人がいた。
「これ…ください」
そういってふくろを渡すとにこっと微笑んでお会計をしてくれた。その笑顔を見た瞬間に心がなんだかふわっと暖かくなった気がした。
買ったわたあめを友達と食べながら、お祭りをまわっていると、急に眠気が襲ってきた。
そこからの記憶はほとんどない。
気がついて目が覚めると、わたしは公園にいた。はっとして、友達を探そうと立ち上がると、
「…身体が軽い…?」
不思議に思い、下を向いてみると、そう、身体が小さくなり小学4年生くらいまで戻っていた。幸いなことに記憶はちゃんとあり、身体と時間だけが戻ってしまったみたいだった。
とりあえず、どこかへ行こうと思い、歩き出すと、ヒューーーンッドカーーンッと花火の音が聞こえてきた。その音を頼りに音の鳴るほうへ向かって歩いた。10分もしないうちに夏祭りの屋台通りにたどり着き、人混みをよけながら歩いた。すると、なんだか見覚えのあるお店があった。
「あ、わたあめ…」
そう、ついさっき高校生のわたしがわたあめを買ったお店である。お金もないしなあと思い、素通りしようとすると
「あれ!?いない!?」
そんな声が聞こえたので少し耳を傾けてみると、どうやら小学生くらいの息子さんがいなくなっちゃったらしい。どうせわかんないやと思って歩いていると、川の近くのベンチのところにわたあめをもった男の子がいた。少し泣いていたため
「どうしたの?」
隣に座って声をかけてみた。すると
「お店に帰れなくなった」
と、男の子は言った。もしや、と思い
「もしかしてわたあめのお店?」
と、聞くとこくっと頷いた。
「じゃあ、一緒にお店に戻ろう!」
ちょっと明るめに言ったら男の子はさっきの泣き顔とはうってかわり、ふわっと笑って
「ありがとう!」
そういってベンチからおりてわたしと一緒に歩き出した。
お店はそう遠くなかったため、すぐについた。男の子がベンチにいたと伝えると
「ほんとに、ありがとうございます!!」
と、お店の人たちはとても喜んでいた。そんな姿を見て良いことをしたなあと自分も嬉しくなっていると、ふわっと口の中に甘いものがはいってきた。
「お礼にあげる!!美味しいでしょ??」
さっきの男の子がまた、ふわっと笑ってわたあめをくれた。その笑顔をみて、わたしは気づいた。高校生のわたしがみたさっきの男の子だ、と。
「ありがとう、美味しい!」
そう伝えると、また急に眠気が襲ってきた。
「おーーい花火始まっちゃうよ!おーい!」
友達に起こされて、目を開けるとベンチでわたしは寝ていたらしい。
「もう!急に20分だけ寝かせてーとかいって寝ちゃうんだから!びっくりした!」
そう言われて、わたしは、そんなに時間が経っていないことに気付き、
「ちょっとわたあめのところに行ってくる」
そう一言言って、わたあめのお店に向かった。
「あの…」
と、声をかけるとその男の人はさっきみたいに昔と変わらない笑顔で
「やっと気づいてくれたんだね、あの時はありがとう!」
そう私に言った。この言葉と笑顔をみて、わたしは気づいた。
わたしのわたあめの記憶は、味や形とかじゃなく、この人と出会うために残してあった記憶だということ。
「また来年もきてね」
そう言って彼はわたあめのようにふわっと優しく微笑んだ。


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