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あずみの白馬さん

成人済 アイコンは天乃ゆうりさん作成(無断転載を禁じます) 自分なりの優しい世界観を出せるように頑張ります。 好きな作家は飯田雪子先生です。若輩者ですが、よろしくお願いします。 Twitter:@Hakuba_Azumino

性別 男性
将来の夢 旅立つときには、ひとりでも多くの人に見送られたい。
座右の銘 「これでいいのだ」

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先輩! 未練を晴らして下さい!

16/09/16 コンテスト(テーマ):第118回 時空モノガタリ文学賞 【タイムスリップ 】 コメント:2件 あずみの白馬 閲覧数:1776

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「優希先輩、好きです……」
 みはるは心の中で何度もその言葉をつぶやいた。けれど言いだすことはできず、卒業して東京の大学へ行く彼を心の中で見送った。
 想いを伝えられなかった寂しさからか、彼女は思わず新聞部の後輩二人にそのことを話してしまった。あんなことをするとは思いもよらず。

 ***

 一週間後の安曇野高校新聞部、部室には何やら怪しげな電子機器が取り付けられているリヤカーが一台置かれており、それを新入部員の高柳佳奈がいじっている。
 部長の西崎みはるは、あまりの違和感に絶句してしまった。
「これ、なに?」
「ふふ、タイムマシンです!」
「はああああ!?」
 あまりの非現実に驚きの声をあげたところに、もう一人の部員、白井康永が入って来た。
「こんにちは、って、これ何?」
「このリヤカーを時速二〇キロ以上で引っ張ると時間移動出来るのです! 今こそ未練を晴らしに行きましょう!」
「は、はい!?」
「ち、ちょっと!?」
 有無も言わさず二人はリヤカーに乗せられ、佳奈がリヤカーを引っ張ると、三人は、あっと言う間にその場から消えた。

 ***

 二〇一六年の卒業式も終わった学校。そこは名残を惜しむ生徒がわずかに残るだけになっており、新聞部の部室には、タイムスリップしてきた三人がいた。しかし……
「優希先輩が来る!」
 みはるが叫んだ。三人は一旦部室の外に出るとすれ違いに優希が入って来た。
「(やっぱり、かっこいいなぁ……)」
 懐かしい顔にみはるが釘付けになっていると、佳奈がささやいた。
「さあ、みはる先輩、今こそ未練を晴らして来てください!」
 続いて康永も、
「ここで想いを伝えてください……」
 みはるの背中を押した。しかし、
「ありがとう、だけどね……」
「「だけど!?」」
「優希先輩、東京の大学に彼女がいるの」
「まじで!?」
 佳奈が聞き返すと、みはるは黙ってうなづいた。
「高柳さん、せっかく連れて来てもらったのにごめんね。優希先輩が幸せならそれでいいの。もう一度会えただけで十分だから」
 いつもとは違う控えめな態度に康永が反論した。
「西崎先輩、あなたらしくないですよ。今ここで動かないとまた後悔し続けます!」
「そうですよ!」
 佳奈も同調する。その声が大き過ぎたのか、優希が三人に気づいてしまった。
「誰かいるのか?」
「しまった!」
 康永が思わず声をあげた。みはるが耐えかねて逃げ出そうとしたところを、佳奈が無理やり部室の中に押し込み、なりゆきで康永も入った。
「西崎、帰ったんじゃなかったのか?」
「あの、え、えと、忘れ物を……」
 優希の言葉にみはるは取り繕うとするが、佳奈が宣言するかのように言った。
「西崎さん、先輩に伝えたいことがあるそうです。時間を頂けませんか?」
「あ、ああ、いいけど」
「ち、ちょっとなんなのあなたたち!」
「せんぱ……、西崎さん! 頑張って下さい!」
 康永もみはるの背中を押して、佳奈と康永は部室から出て行った。

 部室はみはると優希の二人きりになってしまった。
「(ど、ど、どうしよう……)」
「西崎さん、それで話ってなに?」
「あ、あ、ええと……」
 みはるはドキドキが止まらない。でも、もう伝えるしかない。思い切って打ち明けた。
「わ、私、ゆ、優希先輩のこと、ず、ずっと、好きでした……」
 やっと伝えた告白。しかし優希の顔は曇って行った。
「ごめん、俺、春から東京だし、西崎さん……頼れる後輩以上の感情がわかなくて」
 いつも熱心に優希のことを手伝っていたみはる。そのことが思い出すと、彼も断るのが辛かった。
「そう、です、よね……、彼女としあわせでいて下さい!」
 みはるの頬を涙が伝う。優希はそれをハンカチでそっと拭いた。
「みはるさん、君に素敵な出会いがあることを願ってる」
「ありがとう……」
 二人は握手を交わし、校門まで一緒に歩き、みはるが優希を静かに見送った。

 その後ろをこっそり、康永と佳奈がつけていた。みはるは二人を見つけると、近づいて赤い顔を見せて泣きながら、深々と頭を下げた。

 ***

 二学期初頭の安曇野高校新聞部部室、新入部員の佳奈がみはるに原稿を見せている。
「みはる先輩! 私の小説いいでしょ。今度の新聞に載せてよ!」
「あ、あのね。優希先輩は架空の人だけど、私たちが実名な時点で載せられないわよ。ところで、あなた小説家志望なのになんでうちに来たの?」
 みはるは困りながら断った。この学校には文芸部もある。しかし佳奈は、
「だって、みはる先輩と康永くんに恩返ししたいから!」
 夏休み、みはると康永は佳奈を偶然助けたことがあった。
「そうなんだ……。ありがとう」
 その気持ちがうれしくて、みはるはまるで小説の中の自分のように顔を赤くして頭を下げたのだった。
 


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このストーリーに関するコメント

16/09/17 クナリ

この新聞部、もうなんでもできちゃうんだな!…と思ってたら、劇中作だったのですね(^^;)。
少しずつ繋がり、広がっていく世界観が楽しみです。

16/09/17 あずみの白馬

> クナリ さん
ありがとうございます。
短編連作は初めてで、難しい面もありますが、これからも世界観を広げられるように頑張ります!

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