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W・アーム・スープレックスさん

性別 男性
将来の夢
座右の銘 作者はつねにぶっきらぼう

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あとの祭り

12/10/08 コンテスト(テーマ):【 ファミレス 】 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:1821

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 ハロイはいつも、宇宙都市ショッピングモールのきらびやかに輝く通りをみると、古代惑星地球からながめた天の川を連想した。
「足もとに、星が流れているようだ」
「ひさしぶりにきたけど、いつきても、ここはにぎやかね」
 と恋人のエヒカは、行きかうたくさんの買い物客たちをながめた。
「なにせ、宇宙じゅうの星から集まってくるんだからね」
 ハロイのいうとおり、ここで商売を営む連中のほとんどが、宇宙の様々な惑星から集まってきたエイリアンたちだった。星はちがっても姿はおおむね、我々人間となにも変わったところはない。エイリアンときくとおどろおどろしい怪物を思い描いたのは、二人のはるか祖先の人間たちの、空想科学小説(映画)のなかの話にすぎない。
 ただ、かれらの商法には、いつもびっくりさせられることがあった。たとえばエヒカが寄りたいといったファッション関係の店などは、そのいい例だった。
「この服すてき。ほしいわ」
 彼女がお気に入りのプリーツのワンピースをレジまでもっていくと、
「ありがとうございます」とレジの女性は頭をさげて、エヒカに商品となぜかその代金を手わたした。
「あの、お金は、わたしが払うのでは?」
 当惑してエヒカがたずねると、相手はまさかといった顔で見返した。
「めっそうもございません。代金は全額、商品とともにお客さまにお渡しするものです」
 エヒカは複雑な気持ちで商品とその代金をうけとって店をでた。
「所変ればば品変るっていうけど、遠い星からやってきた連中のやることにはほんとに、めんくらっちゃうわ」
「得したんだから、素直に喜べばいいじゃないか。これが宇宙都市ショッピングモールだよ」
 ぼちぼちどこかで昼食をと考えていたハロイは、探したあげく通りの向こうにようやく、一軒のファミレスをみつけた。彼の美意識では到底うけいれかねないそのド派手な色彩や、左右不釣合いな造りから、あきらかにこれも、どこか彼方の星からきたエイリアン経営の店とおもわれた。
「こんどの店も、やっぱり代金は、向うがくれるのだろうか」
 そんな虫のいいことを考えながら彼女とならんでハロイが店に入るとまもなくして、
「ご注文は、なににいたしましょう?」
 まだテーブルにもつかないうちに、店員からメニューをわたされた。メニューをひろげたハロイは、『ヨサマンマのクリーム煮』という料理に目をとめた。
 ヨサマンマというのがなにかはわからなかったが、経営者のエイリアンの出身惑星にしかない、いわば郷土料理であるのはまちがいなかった。
「おいしそうよ、これにしましょう」
 エヒカも食指を動かされた様子だった。
 二人は『ヨサマンマのクリーム煮』を注文した。
 するといきなり、店員はおくから二丁の、どうみても猟銃と思える武器をもってきて、
「どうぞ、おとりください」と二人にそれをさしだした。
「これ、なににするんだい?」
 きょとんとしてハロイはたずねた。
「もちろん、ヨサマンマ猟に使うのですよ。すでにヨサマンマは猟場に放ってあります。猟場の入り口はそこですので、どうぞお入りください」
「ぼくたちは、食事にきたんだけど……」
「多くのお客様は、猟と食事がいっしょに楽しめると、ずいぶん評判ですがね」
「エヒカ、どうだ。やってみるかい?」
「やりましょ、やりましょ。わたしなんだか、興奮してきちゃった」
 すっかり乗り気のエヒカをみて、ハロイも、ようし、と気合をいれた。

 扉のむこうは、意外にひろい猟場だった。周囲を高い岩場にかこまれたなかに、木々や植物が鬱蒼と生い茂り、ちょっとしたジャングルをつくっている。
「どこにいるのかな、ヨサマンマは」
 ハロイもエヒカも、狩猟の喜びと空腹をみたすためにも、はやいとこヨサマンマがあらわれてくれるのを願った。鶏かもしくはウサギのような、とにかく小動物を思い描きながら二人が、足もとの草むらや石の影を注意して歩いていると、いきなりどこかからすさまじい咆哮がきこえた。
 みると、岩場の影からのっそりと、身の丈4、5メートルはゆうにあるかと思える、全身びっしりと鱗におおわれた巨大生物が出現した。
 そのみるからに凶暴そうな姿に、度胆をぬかれた二人は、おもいだしたように銃を乱射するも、巨体のわりには意外にすばやい動きのヨサマンマのまえに、弾丸はみな的をはずれた。
 ヨサマンマは、嗜虐的なよろこびに酔いしれるかのように舌なめずりすると、もういちど、こちらの心臓が縮あがるような叫び声をあげて威嚇した。
 恐怖のあまり、銃を投げ捨てて逃げだす二人に、たちまち追いついたヨサマンマは、二人を岩場のすみまでじわじわと追い詰めていった。
 猟と食事を楽しむのは、あいつのほうじゃないのかと、ハロイにそれがわかったときには、すでにあとの祭りだった。

 


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