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海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

性別 男性
将来の夢 プロ小説家になること!
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クロノスの鉄槌

16/09/12 コンテスト(テーマ):第118回 時空モノガタリ文学賞 【タイムスリップ 】 コメント:0件 海見みみみ 閲覧数:883

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「ついに完成したぞ!」
 私は念願だったタイムマシンの開発に成功した。これさえあれば過去でも未来でも自由に行き放題だ。
 しかし奇妙な話がある。実は私より先にタイムマシンを開発したという報告を何件か受けていたのだが、その開発者達がみなタイムマシンと共に行方不明になってしまったというのだ。
 おかげで後発である私の方が最初にタイムマシンを開発した事になった。本当に奇妙な話だ。
 それはともかく、ようやく私オリジナルのタイムマシンが完成した。その喜びと共に私はポケットからスマートフォンを取り出す。
「マナミ、マコ。ようやくお前達に報いる事ができそうだ」
 スマートフォンには家族の写真が映し出されていた。家族には今までたくさん迷惑をかけてきたと思う。これからはこのタイムマシンの特許と売り上げを元に、家族に少しでも楽させてあげる事ができれば。私は心の底からそう願っていた。
 タイムマシンに手を触れる。早速試運転をしてみよう。そう思った時の事だった。

「時間への干渉は我が許さぬ」

 突如として一人の人物が現れる。そこに出現したのは、一目見てただならぬ存在だと思わせる男だった。
「君は誰かね、研究室に入るためにはカギが必要なはずだが……」
「神にカギなど必要ない」
「神?」
 よく見ると男は体中に時計を身につけていた。時計は重力に逆らって男の周りに浮いている。まさか本当にこの男は神だと言うのか。
「我が名はクロノス。時を統べる神なり」
「そのクロノスとやらが何のようかね」
「最初に述べたはずだ。時間への干渉は我が許さぬと」
 そうクロノスが口にすると、突然周りの空間が真っ白になった。目の前にあるのは、握っていたスマートフォンとタイムマシンだけ。そこから先は果てしない白い空間が広がっている。
「ここはどこだ?」
「時の牢獄だ。貴様を逃さぬように用意したな」
 そう口にして、クロノスは喉を鳴らし笑う。
「時間への干渉をしようとしたお前への罰だ。そのタイムマシンで過去か未来、どちらかにタイムスリップしろ。ただし、タイムスリップは一度だけ。一度タイムスリップしたら、タイムマシンは我が破壊する」
「そんな、横暴だ!」
「殺さぬだけマシだと思え」
 そこでふと聞いていた話を思い出す。タイムマシン開発者の失踪事件、それらはすべてこのクロノスと名乗る男の手によるものだったのだ。
「お前が他のタイムマシン開発者を!」
「そうだ。彼らのその後は悲惨だったぞ。ある者は過去の世界で戦争に巻き込まれ戦死。またある者は未来の世界であまりにも違う価値観に苦しみ発狂した」
 そう言ってクロノスが笑う。こいつは確かに神かもしれない。だがその性根は間違いなく悪魔だ。私はクロノスをにらむ。
「私は絶対にタイムスリップしないといけないのか?」
「ああ、過去か未来好きな方を選びたまえ。どちらも選べないのなら、我がお前を殺すまでだ」
 クロノスが恐ろしい言葉を平然と吐く。クロノスは自身を『時を統べる神』と言った。これはタイムマシンという時の禁忌に手を出した私に対するクロノスの鉄槌なのだ。
 私は恐怖に震えながら、過去と未来、どちらに飛ぶべきか考える。
 過去に飛ぶのはありえない。現在の生活水準を知っている身としては、いまさら機械技術のない過去に飛ぶのはただの拷問だ。
 それなら未来に飛ぶのが得策か。その時ふと、スマートフォンに映る家族の写真を見る。家族を見捨てて孤独に未来で過ごすなんて、それこそ耐えられない。
 過去と未来、どちらにタイムスリップすべきか。私は真剣に悩んだ。
「聞きたい事がある。一度タイムスリップすれば後は見逃してくれるんだよな?」
「もちろん。タイムマシンは破壊するし、タイムスリップした先での安全は保証できないがな」
「つまりそれ以降は絶対に干渉しないと」
「約束しよう」
 クロノスの言葉を聞き、もう一度家族の写真を見る。こうなったらやるしかない。家族の事を胸に秘め、覚悟を決める。
 タイムマシンを起動し、私はタイムスリップした。

 現在からわずか『五分後』の未来へと。

 タイムスリップを終えると、クロノスが苦渋に満ちた表情で叫び声をあげた。
「貴様!」
「私は確かに約束を果たしたぞ」
 さらにクロノスの表情が歪む。こちらの予想通りだ。
「さあ、今度はそちらが約束を守る番だ。もうこれ以上私に干渉するな!」
「おのれ、おのれえ!」
 クロノスは怒りに満ちた叫び声をあげると、タイムマシンと一緒に消えてしまった。私はクロノスに勝利したのだ。タイムマシンを失ったが、そんな事はもうどうでもいい。

 私は家族に会いに行くため、研究所を飛び出し家路についた。


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