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海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

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何があっても君を愛し続ける

16/09/12 コンテスト(テーマ):第118回 時空モノガタリ文学賞 【タイムスリップ 】 コメント:0件 海見みみみ 閲覧数:1461

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「私、五十歳年上の人と結婚させられるの」
 そうイトハから告げられた時、ジローは言葉を失いかけた。
「五十歳年上って、僕達より? それはノルンの決めた事なのか」
「そうなの。だからきっと逆らえない」
 イトハの瞳から涙がこぼれる。ジローは耐えきれず、イトハをギュッと抱きしめた。

 就職、結婚、進路、政治、裁判、その他もろもろの決めるのに煩わしい物事。それらを人類が『ノルン』と呼ばれる人工知能に一任するようになった遠くない未来。
 ノルンに判断を任せる事で、人類は自分の人生を楽に生きられるようになった。しかしその反面、自由に人生を生きたい人々にとって、ノルンは害悪になりつつある。

 真夜中の公園。そこでイトハとジローは密会していた。
「私、このままジローと一緒にいたい」
 震え声でイトハがつぶやく。
 ジローの心はノルンに対する怒りで熱く煮えたぎっていた。同時にジローはある覚悟をする。
「駆け落ちしよう」
「本気なの?」
「君のためなら」
 ウワサによれば、ノルンに反対する立場の人々が自治する都市があると言う。そこに行けばなんとかなるかもしれない。
 しかしノルンが下した判断に逆らい、捕まった人間は極刑に処される。この場合、イトハだけでなくジローも処刑されるだろう。
「僕は覚悟を決めた。イトハはどうだい?」
 イトハは何度か迷うように視線を泳がせた。だが数秒ほどでその視線はジローの瞳に向けられる。
「……わかった。私も覚悟を決める!」
「イトハ!」

「ソレハ認メラレマセンネエ」

 突如響いた第三者の声。
 ジロー達が振り返ると、周囲は機械の軍団、オートマタポリスによって囲まれていた。
「そんな、なんでこんなに早く?」
 対応の早さに驚くジロー。対してオートマタポリスを介して人工知能『ノルン』が告げる。
「アナタ達ノめんたる状態ハ私ガ常ニ観察シテイマス。アナタ方ガ私ノ判断ニ背ク事ハ遥カ前ニ予想デキテイマシタ」
「クソッ!」
 ジローがイトハを連れて逃げようと走り出す。オートマタポリスに突進すると、何台かが倒れ、その隙に二人はなんとか脱出しようとした。
 しかしオートマタポリスも甘くない。残ったオートマタポリスが即座に電気銃を放つ。電気銃により体が痺れさせられ、イトハとジローは動けなくなってしまった。そこを他のオートマタポリス達が確保する。こうなってしまっては、もう逃げられない。
 続いてノルンが再び話し始めた。
「コレヨリ裁判ヲ始メマス。被告人、小々波イトハ、及ビニ大洗ジロー。両者ヲ極刑トシマス」
「待ってくれ!」
 そこにジローは待ったをかけた。
「イトハは僕にそそのかされて駆け落ちしようとしたんだ。むしろイトハは被害者だ。極刑は僕だけが受ける!」
「ソウデスネ」
 そうつぶやくと、ノルンは考え込む。
「……イイデショウ。何モ多ク人ヲ咎メル必要ハアリマセン。大洗ジロー、アナタノミヲ極刑ニ処シマス」
「ジロー!」
 イトハの悲痛な叫び。それにジローは笑顔で答えた。
「安心してイトハ。僕は何があっても君を愛し続ける。絶対だ」
 ジローの力強い言葉。対してノルンは冷酷に判決を告げる。
「タダ殺スヨリ、アナタハ小々波イトハと別々ノ時間ニ生カサレル方ガ辛イデショウ。アナタニハ時空間流刑ヲ受ケテモライマス」
「そんな!」
 イトハは堪らず声を上げた。時空間流刑とは、対象をランダムにタイムスリップさせる刑の事だ。極刑の中でも特に厳しいとされている。
「ソレデハ処刑、時空間流刑ヲ行イマス」
 ジローに向けオートマタポリスが銃を向ける。銃を発射するとそこから時空間トンネルが発生し、ジローはその中に吸い込まれていった。
「ジロー! 私もあなたを絶対愛しているから! だから!」
「ありがとう、イト……」
 ジローの言葉が途中で途切れ、その体が時空間トンネルに消える。完全にジローが消えた事を確認すると、イトハはその場に泣き崩れた。

 翌日。イトハは泣き止むと覚悟を決め、ノルンの決めた結婚相手に会いに行った。決められた相手と結婚はするけども、心はジローに捧げたままだ。そう強くイトハは決意する。
 結婚相手の住む屋敷は広く豪華な造りだった。余程の金持ちなのだろう。
「サア、彼ガ結婚相手デス」
 ノルンの声と共に現れた老年の男性。最初イトハは男性に対して何とも思わなかった。せいぜい優しい顔をしたおじいさんだなと感じたくらいだ。
 だがその笑顔をよく見るうちにイトハは目を見開く。

「約束通り、何があっても君を愛し続けてきた。久しぶりだね、イトハ。僕らの愛の勝利だ」

 老年の男性の言葉を聞き、イトハは涙を流すと男性に抱きつく。
 老年の男性、五十歳年上になったジローはイトハを優しく包み込んだ。


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