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冬垣ひなたさん

時空モノガタリで活動を始め、お陰さまで4年目に入りました。今まで以上に良い作品が書けるよう頑張りたいと思いますので、これからもよろしくお願いします。エブリスタでも活動中。ツイッター:@fuyugaki_hinata プロフィール画像:糸白澪子さま作

性別 女性
将来の夢 いつまでも小説が書けるように、健康でいたいです。
座右の銘 雄弁は銀、沈黙は金

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ヒミツの八夜子さん

16/09/11 コンテスト(テーマ):第116回 時空モノガタリ文学賞 【 裏切り 】 コメント:5件 冬垣ひなた 閲覧数:1776

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「素敵な彼氏と東京Dランドで1泊したいな……」
 何でもない昼下がりの学生食堂で、八夜子(ややこ)さんがため息をつく。
「あの。僕は素敵じゃないけれども彼氏じゃないですか、八夜子さん」
 磨いて光り輝き過ぎたダイヤモンド、それが八夜子さんに対する大学の仲間内の評価だった。
 怜悧な眼差し、透き通る肌、触れたくなる艶やかな黒髪、魅惑的な唇、穏やかな物腰、スタイリッシュな立ち姿……そこいらの飢えたオスには近づきがたいオーラを放っている。
 だがそれが災いしたのか、彼女の恋人は皆去っていった。
 僕のように平平凡凡とした男が八夜子さんとお付き合いできたのは、彼女がフラれる度に慰め続け、癒し系をアピールした結果、まさかの棚からぼた餅であった。
「拓也くんはいい人だね。気配りも上手だし」
 彼女は見た目通り芯の強い、それでいて控えめな女の子で、別れた男たちがどこを気に入らなかったのか、僕には分からない。
「私、拓也くんとなら上手くやっていける気がする」
 嫉妬の視線なんてどうでもいい。付き合い始めて一か月、僕の毎日は舞い上がる蝶のようだった。


 そんな僕が、彼女を尾行しているのは何故かって?
 まあ聞き給え。
 彼女のスマホを偶然チラ見したとき、たくさんの男の名前が目に入ったんだ。
 それだけでない、彼女の電話はしょっちゅう鳴り続ける。僕の前でもだ。気になるだろう?
 あ、ほら。彼女がお洒落なカフェに入って行った。
 窓際の男が手を振っている。
 いや、彼女ほどの美人だ、男友達の1人や2人は当たり前だろう。イケメンなのは気にくわないが。
 裏切ったなんて責めるほど、僕は器の小さい男じゃ……。
 カランカラン。ドアベルが響き、店に入った新たなイケメンが、八夜子さんたちと同じテーブルに座る。植え込みで蚊に刺される僕の気持ちを知りもしないで、とても楽しそうだ。
 ……う、裏切られたなんか思ってないんだからな!イマドキの女子大生は保険に、3人同時進行で付き合うなんて普通だし!
 そこに、今しがた店内に入ったイケメンの団体が合流した。
 イケメン達に囲まれた八夜子さんは、僕にも見せたことがない輝いた顔で談笑している。
 八夜子さん……! 悔しい!僕の居ないところで、笑っている君が可愛くて!
 僕の拳は恋の乱気流で震えている。
 とうとう堪えきれず、僕は店内に飛び込んだ!
「拓也君!」
「八夜子さん、どうして……!」
 僕は渾身の怒りをぶつけた。
「どうして、こんな楽しい会に呼んでくれないんだよ!」
 唖然とする八夜子さんを庇い、イケメン達は厳しい眼光の集中砲火を僕に浴びせる。

「「「お前か!俺たちの八夜子に手を出したのは!」」」

「やめて」
 八夜子さんが慌てたようにイケメン達を制し、僕に謝った。
「ごめんね」
 そういった彼女の目に真珠の涙が浮かんだ。
「みんな、私の兄なの」


 ……八夜子さんから話を聞いた。彼女の家は大家族だけど、女の子は八夜子さん1人だから、7人の兄が極度のシスコンになり、それが原因で前の彼氏たちが去って行った事。
 ど、どうしよう?
 眉間に皺を寄せスクラムを組むイケメン達を前に、僕の心は回れ右をしそうになった。
 いや、実際くるりと背を向けた。
 猛ダッシュで店から駆けだした僕の姿を、イケメン達は罵った。

「「「なんだ、今回も大した奴じゃなかったな!」」」

 夢を裏切られた八夜子さんは、とても悲しそうな顔をしていたことだろう。
 窓の外は、折しも通り雨。
 ぼんやりと、恋のエンドロールが流れる……。


 カランカラン。
「お、お待たせ。八夜子さん!」
 カサブランカ、ガーベラ、薔薇……心地よい香りが風に乗って流れる。
 帰った僕は、誰の愛にも負けない大きな花束を抱えていた。
 こんな事がサマになる男じゃないのは承知の上。
 僕は、八夜子さんに頭を下げた。
「8番目でいいです、あなたのそばに居させて下さい!」
 これしきの試練、負けない!


 
「拓也君……!」
 花束を差し出した僕に八夜子さんは感極まって抱き着き、イケメン達から思いがけず拍手が沸き起こる。

「「「お前、気に入った」」」
「「「八夜子を裏切ったら承知しないからな!」」」

 僕は有頂天になった。裏切るもんか。こんなにいい彼女は二度と見つからない、夢の東京Dランドご宿泊のためなら、僕はどんなことだってする。
 頬を赤らめた八夜子さんは、僕の目をじっと見つめる。
「良かった。拓也君なら『まだ』大丈夫よね?」
「はい?」
 八夜子さんは僕の頬にキスをして、遠慮がちに言った。
「……あと、弟が3人いるの」
 そりゃあないです、八夜子さん……!
 僕は目の前が真っ暗になり、愛しの八夜子さんを抱いたままその場にへたり込んだのだった。  


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このストーリーに関するコメント

16/09/11 冬垣ひなた

≪補足説明≫
・こちらの画像は写真ACからお借りしたものを加工しました。

16/09/15 泡沫恋歌

冬垣ひなた 様、拝読しました。

なんだかアニメ風の楽しいお話でした。
大家族だったら、これから親戚付き合いが大変そうだね(๑´・ᴗ・`๑)

16/09/15 そらの珊瑚

冬垣ひなたさん、拝読しました。

まだまだ大変なことが待ち構えていそうですが
なんだかこの恋を応援したくなっちゃいました。
肩の力を抜いて読めて楽しかったです。

16/09/18 冬垣ひなた

泡沫恋歌さん、コメントありがとうございます。

大家族の話というのを一度書いてみたかったので、思い切り風呂敷を広げてみました。拓也君これからが大変だと思いますが、頑張ってもらいたいですね。


そらの珊瑚さん、コメントありがとうございます。

惚れあう二人ならどんな困難も乗り越えていけるはず……ラブコメって王道のハッピーエンドに向かう所が楽しいですね。こういうほのぼのとした話はこれからも描いていけたらと思います。


海月漂さん、コメントありがとうございます。

確かに!そこは計算していなかったです!今までは発想と文章力が足りず、ライトなものは書く前にボツにしてきました。海月さんをはじめ色んな方々に触発され、やっとの思いで書き上げた次第です。
ご期待通り弟さんもシスコンです、でもこの二人ならきっと大丈夫と思います!

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