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草愛やし美さん

時空文学コンテスト開催100回、おめでとうございます。思えば、初めて私が、こちらに投稿したのは2012年5月のこと、もう4年近く経ったのですね。時空モノガタリさまが、創作の場を与えてくださったお陰で楽しい時間を過ごすことができました。感謝の気持ちでいっぱいです。 また、拙い私の作品を読んでくださった方々に感謝しております。 やし美というのは本名です、母がつけてくれた名前、生まれた時にラジオから流れていた、島崎藤村作詞の「椰子の実」にちなんで……大好きな名前です。ツイッター:草藍やし美、https://twitter.com/cocosouai 

性別 女性
将来の夢 いっぱい食べて飲んでも痩せているっての、いいだろうなあ〜〜
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憧れのコンビニバイトに採用決定!

12/10/05 コンテスト(テーマ):【 コンビニ 】 コメント:11件 草愛やし美 閲覧数:2003

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「怖い、怖いよ〜」
 他の人にとっては何てことない夜道だろうが、私にとっては凄く怖いものだ。何時からだろう、こんな極端な怖がりになったのは……。たぶん、暗がりで凄く嫌な思いしたからかな? 極度の暗がり恐怖症の私は、暗いというだけで恐怖にかられてしまう。こんな恐怖症なのに、私のいる町は田んぼや畑ばかりで、田舎そのもの。農業主体の町だから仕方ないが、夜は底無しに暗い。街灯はあってもところどころしかない。
「一応町だけど、村って言ったほうが似合いそう。バスや電車に乗れば1時間もすれば都会に行けるというのに……でも、私は動けない」
「真由!」
「ひいぃぃ、幽霊! ぎゃああ」
「俺だよ、達輝だよ。まったくお前も幽霊だろう。暗がりが怖い幽霊だなんて、どういうことだ。相変わらず、その癖、直らないんだな、やれやれ、いい加減、霊ってことを自覚しろよ」
「ごめん、達輝。だって怖いものはしようがないよ」
「お前はもう死んでいる!」
「それって古い」
「いいんだ、俺は好きなの、幼い頃、流行っていたからな。それより暗がりに慣れるしかないぞ」
「でもね、ここは夜はどこもかしこも暗いんだから、怖がりの幽霊にとっては恐怖よ。あぁ、都会に行きたい」
「無理無理、お前と俺は地縛霊、動けないって決まってるんだよ」
「それよりこの田舎町に今度、コンビニができるそうなんだよ。素敵! あの煌々と輝く店、憧れのコンビニ。高校生なら、誰しも一度はバイト経験があるという、憩いの場所コンビニ、24時間営業だから、そこは絶対明るい」
「何言ってんだ、俺らは幽霊。明るいところには出ないの。暗がりってのが定番、お決まりは墓場に、廃病院、廃工場、あるいは……」
「廃墟、廃人、はいはいもういいよ。そのコンビニで、オープニングスタッフのバイト募集してるんだ、知ってる?」
「バイト、それがどうした」
「一緒に応募しない」
「何言ってんだ、地縛霊なんか誰が雇ってくれるつーんだ」
「私、生前、コンビニバイトしたかったんだ。ほんとだよ、憧れだったの。でも、当時は都会しかコンビニはなかった」
「コンビニは幾らなんでも無理だよ。客商売だろ、怖がって客が来ねぇじゃんか。幽霊の中にはお化け屋敷や墓場守で働いている奴もいるけど、この世の人にはあまり知られてない。第一知られたらヤバイだろう、霊が働いているってのは。この世の人々には、霊の世界のことは秘密だからな」
「達輝、私ね、地縛霊になってもう15年になるんだ。長いよ、15年って。でも、いつまで経っても私はここから動けないままなんだ。成仏ってどうしてできないのかな?」
「たぶん心残りがあるからだろうな。真由のことは俺にはわからないけど、俺は母親が心配で逝けないんだ。俺、母一人子一人で……、やめたやめた、こんな湿っぽい話は駄目だ」
「私、なぜ死んだのか記憶ないんだ。霊になって10年間、ずっと寂しかった。時の流れが止まってしまったような世界で、もがき続けてきた。地縛霊ってことも理解できてなくて、暗がりが怖くて怖くて……。でも5年前、達輝がここに来てくれてから随分楽になったんだ。霊だって、少しくらい楽しいことがあってもいいんだよね。私、霊の世界でも願いは通じるのかもしれないって思えるようになった。生きている時、私きっと、友達いなかったんだと思う。学校のこと考えると今でも胸が苦しくなるんだ、なんでかな? でもね、こんな侘しい霊の世界で達輝に会えたことで私、少し変われたと思う、ありがとう」
「真由、ありがとう、照れるな。よし、コンビニバイト挑戦してみるか」
「うんうん、達輝、頑張ろうよ」

      ☆  ☆

「どうしてここでバイトしたいんですか?」
「一度はやりたかったんですが、叶わないまま死んでしまいました……」
「オーナーさん、どうか彼女を雇ってやってください。深夜勤務ならまかせてください。もう死んでますので、強盗なんか来たってへっちゃらです。万引きには姿を消して近づき観察できます。これほどお得な人材はありません。俺はいいけど、どうか彼女だけでも雇ってやってください、お願いします」
「わかった、二人とも採用だ。報酬は店内のスイーツや、おでんでいいんだね」
「えっ、ほんとですか、採用だ、やったー真由」
「達輝のお陰だよありがとう」
「いや、こんな地縛霊の俺らを雇ってくれるオーナーの斉藤さんのお陰だよ」
「ありがとうございます、斉藤さん」

   ☆    ☆
 
 オーナーの斉藤さんは心の中で呟いていた。
「ありがとうを言いたいのは私の方だ。君たちのお陰で、幼くして逝かせてしまったうちの子も、霊の世界で楽しくやっているかもしれないと思えるよ。きっと、今頃あの子もどこかでバイトしているのかも……」
 天井を仰いだ斉藤さんの目が潤んでいるのを二人は知らなかった。


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このストーリーに関するコメント

12/10/05 鮎風 遊

霊とコンビニ、面白い取り合わせですね。
本当にこんなのあるかも。

深夜のコンビニ、一度店員さんに尋ねたくなりました。

12/10/05 ドーナツ

毎回、ユニークな発想、楽しませてもらってます。
「お前はもう死んでいる」 懐かしいセリフ。
最近、毎日、このビデオ見てますよ。

斉藤さん、いい人ですね。
霊界が就職難になったら、いっぱいアルバイト来るかもね。

怖いというより、そうなったらこの店、大はやりね。

12/10/06 泡沫恋歌

草藍さん、拝読しました。

幽霊が深夜のコンビニでバイトするなんてユニークな発想ですね。
きっと、幽霊さんも毎日、何もすることもなく彷徨っているのは
退屈でしょうから、良いアルバイトだと思います(笑)

怖いというよりも楽しんで読ませて頂きました。
ありがとうございます。

12/10/09 そらの珊瑚

草藍さん、拝読しました。

こんな風に幽霊さんたちと普通に付き合えたら楽しいかも。
報酬はおはぎやお団子かな?

しんみりとしたオチも良かったです。

12/10/16 くまちゃん

怖がりの幽霊さんはユニークです。
続コンビニバイトの話が待たれます。
万引きが多い現在 幽霊さんに取り締まって欲しいです。(犯罪撲滅)

12/10/31 草愛やし美

鮎風遊さん、ありがとうございます。

霊も、若者なら、コンビニ好きかもしれません。深夜巡回を頼んでいるコンビニがどこかにあったりして……。(苦笑)

12/10/31 草愛やし美

ドーナツさん「お前はもう死んでいる」かなり古くなりましたね。ビデオ見ていられるんですか、このシリーズは結構最後まで見ると長いでしょうね。そういえば、ラストまで私、見たかしら? なんて考えてしまいました。

お店は安い労働力で、万引きなどが、なくなるなら、絶対雇うと思いますね。

12/10/31 草愛やし美

泡沫恋歌さん、アルバイトでこういった店員さんがいれば、防犯に役立つと思います。セコ○なんていらないかも(苦笑)

コメントありがとうございました。

12/10/31 草愛やし美

そらの珊瑚さん、オチわかってくださって嬉しいです、ありがとうございます。

私自身はとても怖がりで、霊と話すなんてとても無理ですけれど、もしかして、スイーツをぱくつく可愛い霊なら、怖くないかもしれませんね。

12/10/31 草愛やし美

くまちゃん、お立ち寄りくださって、嬉しいコメントをありがとうございます。

万引きなどの犯罪に困っているコンビニはとても多いです。コンビニ店員さんが暴漢に、襲われるニュースなど見聞きしますと、幽霊さんに対処していただければと思います。

12/11/23 kotonoha

報酬はおでんやスイーツでいいって面白いですね。
万引きの犯人を捕まえるのには便利でいいですね。

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